「ドキドキするなぁ!」
 いよいよ注目のダブルメインイベントの『桜庭和志vs中邑真輔』が始まろうとしていた。「テキトーに頑張ります」という桜庭選手ならではの気合が、プロレスのリングでも爆発するのか注目していた。

 その昔、彼は僕と同じUインターに所属し、デビューしただけに、プロレス経験はあるが新日本とは大きくスタイルが違う。

「あの年齢(43歳)から新日でプロレスをやっていくには厳しいような気がする」
 昨年10月、桜庭選手が新日本プロレスへ本格参戦が決まった時の正直な感想だ。

 現在の新日本は、格闘プロレスを完全に払拭し、プロレスの王道を追求している。だが、桜庭選手は総合格闘技で輝かしい実績を残しているだけに、プロレスファンもおそらく既存のスタイルを求めないだろう。

 となれば、ロープへ走るといったプロレス特有のムーブはしない方向になる。それでは新日本で戦っていくのは難しいのではと思ったのだ。

 僕もかつて全日本プロレスに移った時、プロレスのスタイルで随分と苦悩した過去を持つ。格闘スタイルにこだわると、試合の幅が狭くなり、外国人選手などと闘っていくのは厳しくなる。そこでプロレスのムーブを必死にマスターしようと頑張ったのだが、馴染もうとすればするほど自分の色がなくなり、存在感や商品価値が下がっていった。

 彼の場合、僕とは比較にならないほどの実績があるだけにカラーは完全にできあがっている。総合格闘技の選手と周囲から見られている状況の中で、果たして、どのように自らの試合をデザインしていくのか?! 真価が問われる一戦が、この東京ドーム大会の中邑戦なのであった。

 待望のゴングが鳴り、立ち上がりは静かなレスリングから始まった。2万9千人の観客は、2人の一挙手一投足を息をのみ、見入っていた。

 ドームの広い空間に地味なレスリングの攻防は伝わりにくいはずだが、この2人だとそうならないから不思議だ。おそらく観客も試合の見方を格闘技寄りのチャンネルに切り替えていたのかもしれない。

 中邑選手もまた桜庭選手と同じ土俵に上がった経験がある。彼がヤングライオンと呼ばれていた頃、日本は空前の総合格闘技ブームであった。新日本もそれを無視することができず、何人もの選手を総合格闘技の舞台へ送り出していた。

 そのひとりが中邑選手だったのだ。青学大でレスリング部にいた彼は、在学中から総合格闘技のジムへ通っていたという。それだけに柔術の動きもできる数少ないレスラーなのだ。

 僕が新日本にいた頃、合同練習中に彼とスパーリングをしたことがあるが、ガードポジションからの攻撃がとてもうまかったのをよく覚えている。彼の下からの三角絞めに思わずタップしたほどだ。新日本の道場で関節を極められたのは、後にも先にも彼だけである。

 後輩に関節技を極められるなんて、僕にとっては遠くキングダムの時代まで遡る。その相手が実は桜庭選手だった。キングダムでは、後に総合格闘技で活躍した後輩が数名いたが、その中でもやはり彼は別格だった。

 メキメキと実力をつけていき、スゴイ勢いで強くなっていった。スパーリングをして、彼の関節技から逃れるのは至難の業であった。これは桜庭選手がPRIDEでブレイクする少し前の話だが、すでにかなりの実力を備えていたのである。

 そんなサブミッションマスターである2人のスリリングなレスリングに、ドームの観客はグイグイ引き込まれていた。

 すると静かな展開が一転、桜庭選手の放つ掌底のラッシュから、突如激しい乱打戦となった。一瞬、PRIDEでのヴァンダレイ・シウバ戦を彷彿させるようなケンカ腰の攻防に、観客はどっと沸いた。

「試合になると桜庭は、本当に負けん気が強いよな」
 僕も思わず苦笑いをしながら試合に興奮した。その後、桜庭お得意のフットスタンプや、ヒザ蹴りをジャストタイミングで決めるなど大きな見せ場に盛り上がりはピークを迎えたのだった。

 だが、体格で勝る中邑選手は、ここから脅威の粘りで持ち直した。あの“クネクネ”と評される独特の動きから完全に中邑ワールドへ観客を誘っていった。

 こうなっては中邑選手のペースである。最後は渾身のボマイェ(フィニッシュ・ホールド)で勝負があった。

 残念ながら桜庭選手は負けてしまったが、その内容と存在感は一番だった。間違いなく、この日のベストバウトと言っていいだろう。

 この試合を観て、総合だのプロレスだのとスタイルうんぬんを語っていた自分が恥ずかしくなった。ファイターはどんな状況であってもやるかやられるかしかない。闘いにつべこべと講釈をつけるのは本来情けないことなのだ。

 僕は、自分の失敗をスタイルのせいにしただけなのである。むしろ桜庭選手のように相手が自らの土俵に乗ってきてくれるように闘うべきであった。

 もちろん、彼のプロレスの旅はまだ始まったばかりだ。この先の展開をもう少し見届けなければ答えを出すのは早いのかもしれない。

 だが、この日の試合を見る限り、心配はなさそうだ。何よりもセコンドに付いていたオーナーである『ブシロード』の木谷高明会長の満足そうな顔が、それを雄弁に物語っていた。

 新日本は、永田裕志選手をはじめアマチュアレスリングの猛者も数多くいる。これから桜庭が加わることで、新日本プロレスがどんな化学反応を起こしていくのか見ものである。

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