パ・リーグ勢の圧勝で交流戦が幕を閉じ、18日からは各リーグでの公式戦が再開する。交流戦3連覇は逃したものの、福岡ソフトバンクは13勝10敗1分で12球団中3位タイ。リーグ首位の埼玉西武とは1.5ゲーム差で、これから夏場に向けて熾烈なトップ争いを繰り広げそうだ。そんな若鷹軍団を牽引するのが、トップバッターの川宗則。昨季は打率.259と不振に陥ったが、今季はここまでリーグ6位の打率.336、同4位の21盗塁と輝きを取り戻している。球界きっての元気印に当HP編集長・二宮清純がインタビューを試みた。
二宮: 昨年よりもパワーがついた印象がありますが、いかがですか?
川: いや、パワー自体は全然ついてないんですけど、振るイメージが今年の2010年型は悪くないので。

二宮: 2010年型とは具体的に、どんな打法に変化したのでしょう?
川: 気持ちだけです(笑)。特に変わりはないんですけど、毎年2008年型とか2009年型とか、そう言っておく。王(貞治)さんに言われたんです。「200何年型の自分を造らないといけない。毎年、新しくピッチャーも研究してくるし、同じようではダメだ」と。

二宮: 昨年は打率.259と低迷しました。その原因は?
川: まぁ、打つのがヘタクソだったからですね(笑)。体は絶好調だし、気持ちも凄く充実していた年でもありましたからね。自分ではまだまだ未熟だなと思いました。バッティングは本当に水物で、生き物だから思うようにいかないことが多いです。自分ではイメージが良くても、ダルビッシュ(有)に160キロくらい投げられたら打てないですよね。何と表現したらいいのかわからないくらい微妙な感覚なんですけど、その部分で去年はたくさん失敗をしましたから、少しイメージを変えて、2010年型で行こうとやっています。

二宮: チームも昨季はレギュラーシーズン終盤で東北楽天に抜かれ、クライマックスシリーズでも第1ステージで連敗してしまいました。やはり楽天の勢いを感じましたか?
川: 感じなかったですよ。そういうことは僕にはわからない。監督じゃないから(笑)。僕自身としてはクライマックスで10割打てなかった。それが悔しかったですね。

二宮: なるほど、チームの勝敗の前に自分のやるべきことができなかったと?
川: そうですね。チームについては監督が考えることでしょう。何より何千円も高いチケットを買って試合を見に来てくれるファンがいて、僕にも少なからず応援してくれる人がいる。「川ガンバレ!」とか「もっと打てよ!」と言ってくれる人たちは僕以上に悔しい思いをしているはずです。そういう人に元気になってもらわないといけない。だから、いいプレーをしたいし、もし悪いプレーをしても胸を張って正々堂々としていたい。目の前にある打球をさばく。目の前にいるピッチャーと勝負する。自分のベストパフォーマンスを見せる。僕が考えているのはそれだけですね。

二宮: でも、川さんはお世辞抜きに“お金のとれる”プレーを見せてくれる。バッティングはもちろん、守備がいいし、足もある。だからファンも多いんだと思いますよ。
川: 本当ですか? 一生懸命やってて、まだまだヘタクソですけどね。まだ弱冠11年目なんですけど、野球が最近、本当に難しくなって楽しくなってきた。今一番ヤバイかもしれません。

二宮: 自分に何が足りないか客観視できるようになったということでしょうか?
川: 足りないものがもっと分からなくなってきたんです(笑)。「分かった」と自分が若い時に思っていたことが、実は分かっていなかった。野球は奥が深いですね。仕事でも何でもそうかもしれないですけど。野球は辞められないですね、本当に。

二宮: パ・リーグにはいいピッチャーがたくさんいますね。ダルビッシュ、田中将大、岩隈久志、涌井秀章、岸孝之……。一番、対戦していておもしろいピッチャーは誰ですか?
川: 僕はどのピッチャーが相手でもやりがいがありますね。せっかく僕のために投げてくれるピッチャーがいる。これはありがたいですよ。だからマウンドのピッチャーに感謝しています。「あなたがいるから野球が始まるんだよ」「あなたのおかげで僕はヒットを打てるんです」と(笑)。

二宮: 2010年バージョンで、これからもたくさんファンを魅了してくれそうですね。
川: 目標としては毎試合、お立ち台に立つことを狙っています。とにかくアグレッシブに行きたいですよ。やっぱり人生1回しかないんだから、いろんなことにチャレンジして、もっともっと上手になりたい。実は「王さんの年間55本のホームラン記録を必ず抜く」って心に決めているんですよ。

二宮: 川さんが55本を抜く!?
川: そうです。「56本打ちたい。打つんや」という気持ちでやっています。それでも年間4本くらいが限界なので、それが悔しい。王さんにはライバル心をいつもメラメラさせているんですよ。「クッソー、この人が55本も打って、何でオレが同じ人間なのに打てないのかな? 絶対打てるはずなのにな」と。王さんにも秘訣を聞いたことがありますよ。

二宮: 王さんは何と言ってましたか?
川: 「ボールを止めて打てばいい」と。

二宮: ボールを止める?
川: 「止めるんだよ、始動を早くして」と言っていました。試しに一本足打法もやってみたんですけど、ちょっと合わなかったから諦めました。

二宮: 昨年までソフトバンクでヘッドコーチを務めていた森脇浩司さんによると、「王さんとイチローはタイミングの取り方が一緒」だそうです。ピッチャーが投球に入って前足を着地した瞬間、自分の前足を着地するんだと。
川: その感覚がすごいですよね。だからこそ負けたくない。僕は打率10割で、かつホームラン56本を目指しています。さすがに王さんもこれは達成できていない(笑)。

二宮: イチローでもできないでしょうね。
川: そうですね。だからやってみたい、いや、やるんです。

<6月20日発売の小学館『ビッグコミックオリジナル』(2010年7月5日号)に川選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>