23日、南アフリカワールドカップグループリーグC最終節がポートエリザベスで行われ、スロベニア(FIFAランキング25位)とイングランド(同8位)が対戦した。これまでの2戦とは見違えるパス回しをみせるイングランドは前半23分にFWジャーメイン・デフォー(トッテナム)のシュートで先制する。その後もイングランドが圧倒的にボールを保持しながら攻撃を組み立て、対するスロベニアはカウンターを狙う。イングランドが何度か決定機を作るもこのままスコアが動くことはなく、1対0で試合終了。他会場のアメリカ−アルジェリア戦で後半ロスタイムにアメリカが勝ち越したため、スロベニアは目前にあった決勝トーナメント進出を逃がした。
前節首位のスロベニア、悲劇のグループリーグ敗退(ポートエリザベス)
スロベニア 0−1 イングランド【得点】
[イ] ジャーメイン・デフォー(23分)
全64試合詳細レポートと豪華執筆陣によるコラムはこちら 第2節を終えスロベニアが勝ち点4で首位に立ったグループC。4試合中3試合が引き分けとなり、最下位のアルジェリアにもグループ突破の可能性が残る大混戦となった。このグループが混戦となった最大の要因はイングランドにある。初戦のアメリカ戦ではGKの信じられないようなミスから失点し、アルジェリア戦ではパスがなかなか繋がらずスコアレスドロー。ファビオ・カペッロ監督をして「私が就任する前の悪い代表に戻ってしまった」と言わしめる低調な戦いぶりだった。さらにチーム内ミーティングの内容をDFジョン・テリー(チェルシー)がマスコミに漏らしたことが発覚。グループAで最下位に沈んだフランス同様、ピッチ外で騒動の火種はくすぶっていた。
最終節では第2節の先発から外れたMFジェームズ・ミルナー(アストンビラ)とデフォーを起用したカペッロ監督。これまでポストプレーを得意とするFWエミール・ヘスキー(アストンビラ)が先発してきたが、スピード豊かなデフォーを使い攻撃陣の活性化を図った。勝たないことには決勝トーナメントへの道が開けないイングランドにとって、この試合は言わば、決勝トーナメント0.5回戦の様相を呈していた。
対するスロベニアは堅守速攻型のチームだ。アルジェリアからこのグループ唯一の白星を奪っており、今日の試合も引き分け、もしくは1点差負けでも他会場の結果次第でグループ突破が叶う。まずは失点しないこと。これがスロベニアのゲームプランとなった。
試合は立ち上がりからイングランドが攻勢をかける。これまでの2戦ではあまり繋がらなかったパスが面白いように通るようになってきた。右サイドで起用されたミルナーも積極的にサイドから攻撃を仕掛けていく。18分には右サイドからのコーナーキックをMFスティーブン・ジェラード(リバプール)がゴール前にあげ、最後はテリーが飛び込む。ヘディングは枠をとらえきれないが、シュートチャンスを作るイングランドがしっかりと試合をコントロールする。
すると23分、右サイドでMFガレス・バリー(マンチェスター・シティ)からのボールを受けたミルナーがライン際でゴール前へ絶妙のクロスをあげる。そこへあわせていったのはデフォーだ。完璧なボールに対し、デフォーはジャンプしながら右足アウトで軽く当てていくだけでよかった。シュートは好セーブをみせていたGKサミーム・ハンダノビッチ(ウディネーゼ)の手をはじきゴールへと吸い込まれていく。攻め込んだイングランドが早い時間に先制点を奪い、彼らにとって理想的な展開となった。一方のスロベニアは決勝トーナメント進出を確実なものにするためにどうしても防ぎたかった失点を喫してしまった。
さらにイングランドの猛攻は続く。得点から3分後、右サイドからジェラードがクロスをいれるとゴール前に走りこんだデフォーの寸前でGKが必死のクリア。そのボールを拾ったMFフランク・ランパード(チェルシー)ががら空きのゴールへシュートを放つも、これを浮かしてしまい追加点ならず。30分には縦パスに反応したデフォーがシュートを放つと、これをハンダノビッチが好セーブ。そのクリアボールを拾ったジェラードがゴール前へ待つFWウェイン・ルーニー(マンチェスター・ユナイテッド)へヘッドで繋ぐ。ルーニーはDF2人を引きつけながら再びジェラードへ意表を突くラストパス。PA内で完全にフリーになっていたジェラードがインステップでシュートをゴール右隅へ。しかしこれも、ハンダノビッチが驚異的な反応をみせゴールを許さない。イングランドはチャンスを作るものの、スロベニア守護神の高い壁を前に得点を積み重ねるには至らなかった。
このまま前半を1対0で折り返すこととなったが、アメリカ−アルジェリア戦は前半を終えスコアレスドロー。このままのスコアで残り45分が経過すると、1位イングランド、2位スロベニアとなり、両国とも決勝トーナメントへ進出する計算が成り立っていた。
後半に入ってもイングランドペースで試合は進む。12分には右からのコーナーキックをファーサイドで待ち構えていたテリーが強烈なヘディングを放つ。ここもGKがしっかりと反応してシュートを止める。さらにその1分後、中盤のランパードから絶妙のタイミングでルーニーへ縦パスが入る。ルーニーは左足でボールをトラップすると、そのまま右足でシュートを放つ。シュートはポストに弾かれ、ここも2点目のシーンとはならない。ただ、このシュートもハンダノビッチが指先でわずかながら触っており、そこで微妙にコースが変わっていた。もちろん彼が触っていなければ、ルーニーのW杯初ゴールとなっていたはずだ。
今日のイングランドはグラウンダーのボールでパスを繋ぎ、サイドから効果的なクロスを入れる場面が目立った。今大会ではなかった大きな展開をみせ、本来のイングランドの姿を取り戻したかのように見える。あとは主力であるルーニー、ランパード、ジェラードにゴールが生まれれば自然と上昇気流に乗るはずだ。
イングランドの攻撃を1点で耐えてきたスロベニアに最大のチャンスが訪れたのは22分。左サイドの浅い位置からMFアンドラス・キルム(ヴィスラ・クラクフ)がゴール前へ縦パスを供給する。これを途中出場のズドラコ・デディッチ(ボーフム)がポストプレーで足元へ落とすとFWミリボイェ・ノバコビッチ(ケルン)が反転しすばやくシュート。一旦はDFに防がれるものの、デディッチがこぼれ球に反応しゴールを狙う。ここも必死のディフェンスが入り弾き返され、最後に詰めたのはMFヴァルテル・ビルサ(オセール)。これはゴールの枠をとらえることができなかったが、可能性を感じるシュートが3発続いた。2本目のシュートをブロックにいったテリーは、グラウンダーのシュートへダイビングヘッドでブロックを試みる気合を見せる。試合前には一騒動起こしたDFは、試合に集中しプレーでチームを引っ張っていく。
その後はイングランドが余裕を持ちながらボールを保持し、スコアが動くことなく1対0のまま試合終了。イングランドが決勝トーナメント進出を決めた。しかし、ここで悲劇が待っていた。この試合のホイッスルの瞬間、他会場ではアメリカが値千金の勝ち越しゴールを奪っていた。スロベニアはその瞬間に決勝トーナメント進出が手の中からするりと抜けてしまった。
また、アメリカが1対0で勝利したため、イングランドは総得点差で2位通過となり、決勝トーナメント1回戦はグループD1位と対戦することとなった。ここはおそらくドイツが入ってくるだろう。前節では退場者を出しセルビアに敗れたドイツだが、高いパフォーマンスは出場32カ国の中でも上位に入る。決勝トーナメント1回戦で早くも見応えのある試合が展開されそうだ。
勝ち残ったイングランドは、ルーニーやジェラードといった得点を決めるべき者にゴールがほしい。グループリーグ突破という最低限の結果を出し、今がチームの底ならばあとは上昇していくのみ。グループCの2位は中3日で次戦に臨むことができる。追いつめられた最終節の戦いからうまく体も心もリセットして、決勝トーナメント初戦に臨みたい。
(大山暁生)
【スロベニア】GK
S・ハンダノビッチ
DF
シュレル
チェサル
ブレコ
ヨキッチ
MF
コレン
ラドサフリェビッチ
キルム
→マタフツ(78分)
ビルサ
FW
リュビアンキッチ
→デディッチ(62分)
ノバコビッチ
【イングランド】GK
ジェームズ
DF
テリー
アップソン
G・ジョンソン
A・コール
MF
バリー
ランパード
ジェラード
ミルナー
FW
ルーニー
→J・コール(72分)
デフォー
→へスキー(85分)