2012年ロンドンパラリンピックに25歳で初出場した車いすテニス日本代表の眞田卓選手。本格的にパラリンピックを目指してから、約1年で、その切符を手にした逸材である。2014年にはインチョンアジアパラ競技大会では、決勝で世界ナンバー1プレーヤーの国枝慎吾選手に敗れたものの、銀メダルを獲得した。8月28日現在、国際テニス連盟(ITF)世界ランキングは8位と、日本人2番手につけている。日本の車いすテニス界をリードする眞田選手に日の丸を背負う思いを訊いた。
二宮:テニスをやっていた下地もあるのでしょうが、眞田選手のショットはパワフルで、プレーはものすごく豪快な印象です。理想の選手像は?

眞田:私は座右の銘に「現状打破」を掲げてやっています。“昨日より、今日。今日より明日”。今の自分よりも、明日の自分は勝っていないといけないんです。

伊藤:なるほど。「現状打破」。とてもいい言葉ですね。

眞田:ロンドンパラリンピックの後に肩の治療をした時も、手術をしても治らない可能性がありましたし、前よりプレーの質が落ちる可能性もゼロではなかったんです。でも、何もせずに不安を抱えてやり続けるよりも、肩を手術することで、「現状を打破しよう」と挑戦しました。

二宮:とはいえ、肩を手術するのは、簡単じゃないとお聞きします。そうした場合にパフォーマンスが落ちるリスクも当然あるわけですよね。しかし、不安であれば、敢えて一歩前に出ようと。手術をし、自分に対する勝負をしようと思ったと。チャレンジングな考え方ですね。

眞田:もしかしたら、そのまま安静にしたり、経過を見ながらプレーをしていても良くなったかもしれない。でも1年以上も肩の痛みが続いていたこともありますし、手術をしたらもっと良くなるかもしれなかった。肩の手術をして良くなるか、悪くなるかわからなかったですが、次の日はベッドの上でとても気持ちが良かったんです。

二宮:要するに自分に対する勝負をしたんだと。もうこの決断に対して後悔はないというような晴れがましさがあったんでしょうね。

眞田:世界を転戦していても、自分より身体が大きい選手、パワーのある選手はたくさんいます。言い訳を挙げれば、勝てない理由なんて100もあるんです。しかし、そんなことを考えていたら何もできない。だったら前に進もうと。逃げ道は作りたくなかったんです。

伊藤:病院のベッドの上から、<四年間の超大作ドラマ、今スタートです>とブログに書かれていましたよね。

眞田:はい。肩の手術をきっかけに、リオデジャネイロパラリンピックまでの物語が始まるんじゃないかと思い、本当に清々しい気持ちだったので、そう書いたんです(笑)。

伊藤:文章からもその気持ちが伝わってきました。そこから復帰するまでも、決して楽な道のりではなかったはずです。

眞田:そうですね。ただリハビリは大変でしたが、気持ちが前向きでいられたので、1カ月でコートに戻ることができました。手術に対しての痛みは全然ない。今は手術をやってよかったと思います。

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