現地時間19日、ラグビーW杯イングランド大会2日目が行われ、予選プールBの日本代表(世界ランキング13位)は、南アフリカ代表(同3位)と対戦した。試合は日本が8分にFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)のPGで先制するなど、優勝候補の南アフリカ相手に10−12の接戦で折り返す。後半は点の取り合い。突き放しにかかる南アフリカに対し、日本は五郎丸のトライやPGで食らいついた。すると終了間際にカーン・ヘスケス(宗像サニックス)のトライが生まれ、劇的大逆転。日本は34−32で、24年ぶりのW杯勝利を挙げた。次節は23日にスコットランド代表(世界ランキング10位)と対戦する。
 ダビデとゴリアテの戦い――。小さき者が大きな相手を倒す。エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が描いたシナリオ通り、勇敢な日本の選手たちが南アフリカの巨兵を打ち崩した。W杯最多タイの2度の優勝を誇る強豪国を相手に、過去1勝しか挙げていない日本が歴史的な勝利を挙げた。

 立ち上がりから日本は低いタックルを次々と突き刺し、南アフリカのミスを誘う。7分にゴール正面31メートルの位置でファウルを得ると、ショット(PGを狙うキック)を選択。ゴールを狙うのはもちろん五郎丸だ。いつものルーティンで助走をとり、難なくPGを決めた。日本が先制に成功した。

 18分に逆転を許した日本に、南アフリカが一気に畳みかけてきた。ここでは低いタックル、人数をかけたディフェンスで猛攻を凌ぎ、耐えた。すると30分に試合をひっくり返す。左サイド深い位置でのラインアウトから人数を割いたドライビングモールで前進。最後はキャプテンのFLリーチ・マイケル(東芝)がトライを奪った。五郎丸のコンバージョンも決まり、10−7と再び3点をリードした。

 だが、南アフリカにお返しとばかりにラインアウトからのドライビングモールでトライを決められる。再び逆転を許し、前半は10−12で終えた。それでも優勝候補相手にわずか2点のビハインド。日本の選手たちにとっても大きな手応えを掴んだ前半だったに違いない。

 後半に入ると、シーソーゲームは激化する。開始早々、日本が五郎丸のPGで13−12と再逆転すると、直後に南アフリカはトライとコンバージョンを決め、点差を6に突き放す。それでも日本は9分、13分と五郎丸のPGで追いついた。

 W杯7度の出場で8割を超える勝率を誇る南アフリカも意地を見せる。SHとSOのハーフバック陣を代えるなど、攻撃の手を変えてきた。さらにピッチに入ったSHフーリー・デュプレアはサントリーサンゴリアスで5年プレーしている日本をよく知る選手。22分、そのデュプレアのパスから、HOアドリアン・ストラウス(ブルズ)に中央をぶち抜かれると、そのままトライを奪われた。コンバージョンも決められ、この試合最大の7点差が開いた。

 苦境に追い込まれた日本。しかし、心はまだ折れていない。球出しの早いSH日和佐篤(サントリー)を投入し、より速いテンポでの攻撃で逆襲を仕掛けた。そして29分、左サイドのラインアウトから日和佐が右に展開。CTB立川理道(リコー)からSO小野晃征(サントリー)、WTB松島幸太朗(サントリー)と短くつなぐと、松島がラインを斜めに切り裂く。相手ディフェンスを引き付けたところで、外から走りこんだ五郎丸にパスを送る。フリーでボールを受けた五郎丸はそのままインゴールへ滑り込んだ。日本は流れるようなパスワークで再び同点に追いついた。

 33分、日本はゴール手前で反則を犯してしまう。南アフリカは堅実にショットを選ぶ。ブライトンコミュニティスタジアムに詰めかけた観客からは、ブーイング起こった。判官贔屓な面もあったかもしれないが、強豪国の消極的な選択に映ったのかもしれない。南アフリカはPGを確実に決め、この試合6度目のリードを奪った。

 3点のビハインドを追う日本は、スタジアムに響く「ジャパン」コールを背に攻め立てる。観衆を味方につけた日本は、敵陣に入って試合を展開すると、終了間際に13人のスクラムでゴール前へと押し込む。ここで南アフリカがたまらず反則を犯した。

 時計は80分を過ぎ、プレーが切れればノーサイドの笛が鳴る。だが、日本はここでショットではなく、スクラムを選択。引き分けで良しとせず、狙うのは勝利のみという決断だった。直前のプレーで南アフリカ側に1人シンビン(一時退場)が出ていたこと、そして何より自分たちのスクラムに絶対の自信を持っていたことで賭けに出たのだろう。

 そして賭けは吉と出た。組んだスクラムからじわりじわりとゴールへにじり寄る。最後は右サイドから左に大きく展開。日和佐、立川、アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)が繋いだパスを、ヘスケスが掴んだ。ヘスケスはタックルを受けながらも、インゴール左へ飛び込んだ。34−32――。土壇場での大逆転劇で、1995年イングランド大会のジンバブエ代表戦以来の白星を掴み取った。

 奇跡のようなジャイアントキリングを起こしてみせた日本だが、決して偶然の産物ではない。キャプテンのリーチが「このために4年間、やってきました」と語れば、バイスキャプテンのFO堀江翔太(パナソニック)は「この4年間、これにすべてをかけてきた」と準備の賜物だと胸を張った。

 名将エディーHCのもと、貫いたジャパンウェイで世界を驚かせた。強化したスクラムは巨漢揃いの南アフリカ相手にも通用した。速いパスワークとアジリティを生かした攻撃と、低いタックルと粘り強い守備。そのすべてが噛み合って歴史的大金星を手にした。指揮官は「今日はスタートに過ぎない。我々の目標は準々決勝進出」と気を引き締めた。エディージャパンの集大成に掲げるベスト8。それが大言壮語ではないことを23人の勇者たちが証明してみせた。

(文/杉浦泰介)

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