
高い身体能力を武器に相手FWをはね返し、ピンチを未然に摘んでいく。横浜F・マリノスの栗原勇蔵は新生日本代表にとって欠くことのできないピースになりつつある。2010シーズン終盤は肉離れで戦線を離脱したものの、来年の代表戦で彼が奮闘する姿を私達は目にすることになるだろう。代表守備陣のキーマンに当HP編集長・二宮清純が直撃インタビュー。ザックジャパンの最終ラインの番人に、プロで味わった厳しさやアルゼンチン戦完封劇の裏側を訊いた。
二宮: 栗原選手は日本代表監督がアルベルト・ザッケローニになって2試合で先発出場しています。ザックの指導はいかがですか?
栗原: 最初ということもあったかもしれませんが、ミーティングを頻繁に行っていますし、ディフェンスに関しても細かい指示がありました。でも試合などのプレー中は、そこまで細かくは言わないんです。全てが終わってから「ここはこうしたほうがいい」とか、トレーニングが始まる前に「こうしろ」とか言ってくれます。プレーの最中にガーガー言われてしまうとやりづらいこともあるので、そういう意味ではやりやすいです。
二宮: 栗原選手といえば、ジュニアユースから育ってきた生粋のマリノス選手です。先輩の松田(直樹)選手や中澤(佑二)選手から影響を受けている部分は?
栗原: 普段から特別意識しているわけではありませんが、常に日本のトップクラスというか、1番か2番ぐらいの人たちが隣にいたのでとても参考になりました。ただ、それによって試合に出られない時期も長かったから「どちらがいいのかな」と悩むこともありました。
二宮: 確かに、しばらく出られなかった時期もありますね。
栗原: 1年目はほとんど出ていないですし、2年目も誰かが怪我した時や累積警告になったらたまに使ってもらうくらいでしたね。
二宮: 元々マリノスはディフェンスが強いクラブです。そういった遺伝子というものを感じますか?
栗原: 実は、僕はディフェンダーになったのが遅かったんですよ。ユースの途中、高校1年からセンターバックをやり始めたので、昔からディフェンスを意識して見ていたわけではないんです。ユースの入った時は右サイドハーフでした。そこからボランチをやったり、サイドバックをやってみたりして、いつの間にかセンターバックが居場所になっていました。身長が大きかったことも原因かもしれません。
二宮: きっと当たりの強さにも期待がかけられたのでしょう。もともと前でプレーしていた選手が後ろにいくと、最初は抵抗感があるといいますね。
栗原: いや、センターバックを初めてやった時は、「これは楽だな」と感じましたね(笑)。フォワードは無限に動けるじゃないですか。というより、マークを外すために動かなければならない。その点、センターバックはそこまで動かないというか、相手の動きに合わせればいいんだ、と。まぁ最初なので、その時は何もわかっていなかったですね。
二宮: いつから「これは大変なポジションだ」と考えが変わりましたか?
栗原: やはりプロに入って、素晴らしい選手と対戦してからですね。ゴールを取られてしまえば周りから批判されますし、無失点で抑えても手柄は全部ボンバー(中澤)とかマツさん(松田)に持っていかれるし(笑)。これはキツイなと感じましたし、評価されるにはやはり一番にならないといけないポジションだなと思いました。
二宮: 南アフリカW杯の直前に栗原選手は日本代表に選ばれています。4月のセルビア戦でした。先発した試合で前半だけで2失点を喫し、途中で代えられてしまいました。
栗原: 岡田(武史)監督から最後にチャンスをもらえて、自分の力を出せれば、W杯に行ける可能性もあった。でも、それをモノにできなかったということは、自分の力がなかったのかなと思います。ただ、その点については難しいというか、運もありますから。この前のアルゼンチン戦と韓国戦も、セルビアとの試合から半年も経っていないですし。その間に自分がそんなに成長したわけでもないですから、やはり巡り合わせとか、そういうものがなかったのかなと。
二宮: 南アW杯後に監督が代わってすぐに代表に呼ばれています。次のブラジルW杯は「オレが中心になってやる」という気持ちはありますか?
栗原: そのくらいの気持ちでやらなければダメですね。本当に若い選手が頑張わないといけない。ボンバーとかだって、もう結構歳だし。ただ、闘莉王に関しては実際、歳はそんなに変わらないんですけどね。アイツはサバ読んでるのかなって、いつも思うんですけど(笑)。
二宮: アハハ。ザックジャパンはアルゼンチンに勝って、アウェーで韓国と引き分けました。非常にいい出だしだと思います。
栗原: 守備陣、特にセンターバックに関しては、求められるものが意外に多くないんです。シンプルなことを注意していればいい。ボランチや前の選手が相手をうまく追い込んでくれるので、自分は目の前の相手に負けなければ、やられることは少ないですね。自分のプレースタイルにも合っているように思います。
二宮: 具体的にザックから栗原選手に注文はありましたか?
栗原: この間の2戦では、「ラインを仕切ってくれ」とは言われました。でも試合になれば、誰がということではなくて、みんなでやることですから。
二宮: アルゼンチンには(リオネル・)メッシや(カルロス・)テベス、(ゴンサロ・)イグアインなど錚々たるメンバーがいました。
栗原: いつもテレビで観ている選手がいっぱい出ていましたからね。守る方としては、3軍と言われたセルビアを相手にするよりずっと気もちが楽でした。仮にやられてしまってもOKだったし、抑えればそれこそ……。(センターバックを組んでいた)今ちゃん(今野泰幸)と試合前に、「今日、無失点で抑えたら、オレたちは英雄だぞ」って話していたんですよ。まぁ、結果的に無失点で抑えたのに、別に英雄にはなってないですけど(笑)。でも、ゼロに抑えて、自分の中では大きな自信になったし楽しかったですね。
<20日発売の『ビッグコミックオリジナル』(小学館2011年1月5日号)に栗原選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>