まさに日本が世界を驚かせた。
 ドイツで開催されている女子ワールドカップ、日本は9日の準々決勝でホスト国・ドイツと対戦。延長戦も含めた120分間の激闘を制し、初のベスト4に進出した。13日(日本時間14日未明)の準決勝ではスウェーデンと対戦する。目標とするメダルまでは、あと1勝。そして、その先へ――。期待がますます膨らむなでしこジャパンの戦いを展望したい。
 それにしても準々決勝のドイツ戦はすばらしい試合だった。完全アウェーの環境の中、なでしこたちは浮き足立つことなく、自分たちの色を存分に出した。ゲルマンの血を引く彼女たちとの体格差は一目瞭然ながら、日本は組織的な守備で相手の出足を封じた。それでも突破してきたドイツの攻撃陣を、イエローカードも辞さない激しいコンタクトではねかえした。

 すると、ドイツでプレーしているFW永里優季(ポツダム)を中心に相手陣内に攻め入る時間も増えてきた。いつしか大会3連覇を目指した女王たちへのホームの大声援は、負けられない重圧に変わったのか。相手の攻撃は単調なものになっていった。

 後半もドイツの攻撃に我慢しながら、それでも日本はチャンスをつくっていく。攻守の要、澤穂希(INAC神戸レオネッサ)を中心にパスをつなぎ、正確なキックが武器の宮間あや(岡山湯郷)が相手ゴールを脅かす。徐々に試合は消耗戦の様相を呈していったが、なでしこたちの集中力は切れなかった。

 両チームスコアレスのまま、延長戦に突入。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んだ日本に千載一遇のチャンスが訪れたのは、延長後半3分だった。途中出場のFW丸山桂里奈(千葉)が残った体力を振り絞って、右の空いたスペースへ動き出す。それを経験豊富な澤は見逃さなかった。岩渕真奈(日テレベレーザ)からのボールを受けたベテランは狙いすましたスルーパス。それはきれいに丸山のもとに収まった。後は迷わず右足を振り抜くだけだった。

 日本サッカー界、未踏の領域へと導く弾道が光を帯びてゴールネットに突き刺さる。丸山は永里に代わり、後半開始から投入された選手。最終的にはこの交代が吉と出た。その後、高さを生かしてパワープレーに転じたドイツの猛攻をしのぎにしのぎ、なでしこジャパンが大金星を手にした。

 メダルと決勝進出をかけて激突するのはスウェーデン。FIFAランキングは日本の1つ下の5位だ。過去7戦して1勝もできなかったドイツとは異なり、この北欧の国には2勝4敗2分の成績を残している。しかも、今年に限っていえば3月には2−1で勝利。W杯直前の練習試合でも1−1で引き分けた。

 ただし日本同様、スウェーデンにも勢いがある。今大会はグループリーグで同ランク1位の米国を2−1で破り、決勝トーナメントもオーストラリアに3−1と快勝した。ドイツと120分間の熱戦を演じた日本とは疲労度も異なる。

 スウェーデン最大の武器は高さだ。身長179センチのエースストライカー、ロッタ・シェリンなど長身選手が揃い、メンバーの平均身長では約10センチも上回る。ロングボールを多用してくることが予想され、DF陣は要注意だ。ムダなセットプレーも極力避けたい。

 日本は上空を制圧されるのはやむを得ないだろう。その分、地上戦で突破口を開きたい。ドイツ戦同様、しっかりとプレスをかけて高い位置でボールを奪い、パスをつないで相手陣内に攻め入りたいところだ。丸山の活躍に代表されるように、今のなでしこジャパンには誰がピッチに出ても力を発揮できそうな雰囲気がある。前半を無失点でしのぎ、スピードのある岩渕らサブのメンバーがゴールをもぎ取る。そんな展開になれば、決勝の舞台が見えてくるはずだ。

 なでしこジャパンの戦いぶりは「女子サッカーのバルサ」などと、世界中で絶賛されている。準々決勝の地、ヴォルフスブルクで咲いた花を、準決勝のフランクフルトのピッチでも大きく開かせたい。