24日、世界選手権男子日本代表選考会を兼ねた東京マラソン2013が、東京都庁前から東京ビッグサイトまでの42.195キロで行われ、デニス・キメット(ケニア)が2時間6分50秒の大会新記録で優勝した。日本人最高位は、前田和浩(九電工)が自己最高の2時間8分0秒でゴールし、4位に入った。注目を集めた初マラソンの佐藤悠基(日清食品グループ)は2時間16分31秒で31位だった。
(写真:表彰台を独占したケニア勢<左からM・キピエゴ、キメット、B・キピエゴ>)
「ケニア選手の強さ、世界レベルを痛感した」

 そう日本陸上連盟の宗猛中長距離・マラソン部長の言葉がすべてだった。ケニア勢が上位6人中5人を占めた。勝ったキメットは2度目のマラソンで初優勝。昨年のベルリンで初マラソン世界最高の2時間4分16秒を叩き出した実力をいかんなく発揮した。

 序盤は向かい風にペースメーカーが苦しめられ、予想外のスローペースで展開した。今回のレースはキメットを含め、自己ベスト2時間4分台を持つ選手4人を揃えるなど、高速レースが予想された。しかし、フタを開けてみれば、入りの5キロは15分13秒、10キロは30分15秒と、1キロ3分台の遅いピッチで刻んだ。

 先頭集団はペースメーカーが離れる30キロ付近で、一気にペースアップ。キメットが1キロ2分50秒前後のペースで引っ張ると、30人近くいた集団は崩れはじめる。キメットにマイケル・キピエゴ、バーナード・キピエゴらケニア勢が先頭集団を形成した。

 34キロ過ぎで、キメットはスパートをかけて、同胞で形成していた集団から抜け出す。「35キロからいけると確信した」と話した通り、ライバルたちを突き放した。終盤の昨年覇者のM・キピエゴの追撃も振り切った。42.195キロを振り返り、「気持ちよく走れた」と大会記録を更新する2時間6分50秒で優勝した。今後については「代表になれれば、世界選手権(モスクワ)に出たい。もしくはベルリンで世界記録を狙いたい」と、29歳は抱負を語った。

 日本人では前田和浩が意地を見せ4位入賞を果たした。30キロで先頭集団から離されるが、自身もペースを上げ粘りの走り。30キロからの5キロは14分39秒と、第2集団についていった。

 さらに終盤の粘りで7位から1人、2人とアフリカ勢を抜き去り、最後の直線では「ゴールが見えたので、(世界選手権の)代表になりたいという思いで走った」と、世界歴代7位タイの記録を持つジェームズ・クワンバイ(ケニア)をかわした。2時間8分0秒の自己ベストをマークした。世界選手権の派遣標準記録には、あと1秒届かず代表内定とはならなかった。
(写真:昨年に続き自己ベストをマークした前田)

 ただ、ここまでの選考レースでトップだった大分別府毎日マラソンでの川内優輝(埼玉県庁)の記録(2時間8分15秒)を上回ったため、代表入りへ大きく前進した。日本陸連の尾県貢専務理事も「冷静に前を見ながら素晴らしいレースをした」と、高い評価をつけた。前田も「タイム自体は7分台を出せず、残念だったが、この風の中で自己ベストはうれしい」と喜んだ。 

 一方、佐藤悠基にとっては、ほろ苦いマラソンデビューとなった。30キロまでは先頭集団にいたが、ケニア勢がスパートをかけると、ついていけなかった。35キロ過ぎると脱水症気味になり、「やばいぐらいキツかった」とペースは一気に落ちた。結果は2時間16分31秒で31位。「初めてレース後に気持ちの整理がつかなかった」と佐藤は語った。

 それでもリオデジャネイロ五輪に向けて「このきつさを味わえたのが収穫かな。次につなげたい」と前を向いた。宗部長も「初マラソンは失敗して、ちょうどいい」と、今後の奮起に期待を寄せた。

 女子はアベル・ケベデ(エチオピア)が2時間25分34秒で優勝。尾崎好美(第一生命)が5位に入り、初マラソンで引退レースとなった吉川美香(パナソニック)は7位に入賞した。日本人最高位の尾崎は今大会で第一線から退くことを表明しており、「それまでパッとしなかったのに、マラソンで輝ける場所を見つけた。苦しいことも多かったですけど、楽しかった」と競技人生を振り返った。
(写真:表彰式で笑顔を見せたラストランの尾崎<左>と吉川)

 車いすの部では、女子の土田和歌子(サノフィ)が6連覇を達成した。タイムは自己ベストに及ばなかったが、「前半は風がきつくて、スピードが乗らなかった。ただ、後半粘れたのは良かった。今のベストは尽くせたかな」と内容を評価した。

 男子は副島正純(シーズ・アスリート)が2年ぶり5度目の優勝を果たした。副島は「第1回や最初は獲っておきたい」と、ワールド・マラソン・メジャーズ(WMM)となったはじめの東京マラソンで王者になったことを喜んだ。しかし「海外の選手がいないのは、いまひとつ盛り上がれなかった」と胸の内を明かした。真のメジャー大会へと進化を遂げるためには、こういった課題もクリアしたい。
(写真:車いすの部は男女合わせて26人が参加した)

 男子マラソン上位の成績は以下のとおり。

1位 デニス・キメット(ケニア) 2時間6分50秒
2位 マイケル・キピエゴ(ケニア) 2時間6分58秒
3位 バーナード・キピエゴ(ケニア) 2時間7分53秒
4位 前田和浩(九電工) 2時間8分0秒
5位 ジェームズ・クワンバイ(ケニア) 2時間8分2秒
6位 ギルバート・キルワ(ケニア)2時間8分17秒
7位 フェイサ・ベケレ(エチオピア) 2時間9分5秒
8位 ディノ・セフィル(エチオピア) 2時間9分13秒
9位 松宮隆行(コニカミルノタ) 2時間9分14秒
10位 ジョナサン・マイヨ(ケニア) 2時間10秒18秒
(写真:期待された今井は自己記録更新も11位に終わった)

(杉浦泰介)