第3回WBCは8日、2次ラウンドで日本代表が台湾代表に延長戦の末、4−3で勝利し、決勝ラウンド進出に王手をかけた。日本は3回と5回に1点ずつを失う苦しい展開。8回に同点に追いつくが、その裏に再び勝ち越しを許す。だが最終回に井端弘和のタイムリーで試合を振り出しに戻すと、延長10回に中田翔の犠飛で勝ち越した。日本は10日、決勝ラウンド進出をかけてオランダ代表と対戦する。

◇1組
 2番・井端、同点打含む猛打賞(東京ドーム)
日本代表        4 = 000000021 1
台湾代表        3 = 001010010 0(延長10回) 
(日)能見−攝津−田中−山口−沢村−○牧田−S杉内
(台)王建民−潘威倫−郭泓志−王鏡銘−●陳鴻文−林イー豪−陽耀勲
 敗戦まで、あとひとり、あと1球のところまで追い詰められた。8回に2点差を追いつきながら、直後に1点を勝ち越された。残す攻撃は1イニングしかなかった。窮地を救ったのは1次ラウンドから貴重な働きをみせているベテランだった。

 2−3の9回、2死1塁。打席に入ったのは38歳の井端弘和だ。ここまで8打数5安打と打撃は好調。1次ラウンドのブラジル戦では8回に代打で登場して同点打を放っている。

「打つか打たないか。それしか考えていなかった」
 初球は一塁走者の鳥谷敬が二塁へ盗塁するのを待ってストライク。カウント1−1から外角のボールを空振りし、追い込まれる。
「引っ張りに行っていた。反対方向へ打たないと」
 冷静に自己分析し、バッティングを修正した。

 腹をくくって打てるボールを待った。カウント2−2からの5球目、内角の難しいボールをヒジをたたんではじき返した。
「右打ちを意識していたので、インコースのボールだったが、うまく壁ができた」
 打球はショートの頭を越え、左中間で弾む。二塁走者が三塁を蹴り、同点のホームを駆け抜けた。その瞬間、東京ドームの満員の観客が総立ちになった。

「日本中のファンの皆さんが井端さまさまと思っているだろうが、私は、その何倍も思っています」
 山本浩二監督はヒーローに最大級の賛辞を送った。その殊勲者は「鳥谷の走塁があったから打てた」とチームメイトを持ち上げる。

 鳥谷の好走塁がなければ、井端の同点打も生まれなかった。アウトになればゲームセットの場面。ベンチは「イチかバチか」で、盗塁のサインを出した。梨田昌孝野手総合コーチがのキャッチャーのスローイングタイムを計り、この日は初回から2つの盗塁をしかけるなど、積極的に動いていた。
「相手もいい送球したけど、鳥谷が思い切ってスタートを切ってくれた」
 梨田コーチは陰のヒーローを称えた。

 接戦になれば、投手力では日本のほうが上だ。9回はアンダースローの牧田和久がマウンドへ上がる。先頭打者の出塁を許したが、陽岱鋼の送りバントが小フライになると、勢いよくダッシュ。ケガをも恐れないダイビングキャッチで掴み取る。なおも台湾が犠打で送って2死二塁とサヨナラのピンチを迎えるも、彭政閔を敬遠した後、林智勝は高めのつり球で計算通り、空振り三振に切ってとった。

 そして延長10回、途中からマスクをかぶっていた相川亮二がきれいなセンター前ヒットで出塁。続く糸井嘉男も四球を選び、坂本勇人が送って1死二、三塁とチャンスを広げる。ここで打席に入ったのは、中田翔だ。ここまでは4打数無安打。打席に入る前、キャプテンの阿部慎之助から声をかけられた。
「打たなきゃと思うな。おいしいところが来たと思え」
 これで気持ちが楽になった。カウント1−1から巨人に所属する林イー豪のストレートをたたくと打球は高々とレフト後方へ。犠牲フライには十分な当たりで日本が1点を勝ち越す。その裏は杉内俊哉が走者を出しながらも最後の打者をダブルプレーで締めた。

 4時間30分を越えるゲームを振り返ると、決して手放しで喜べない点もある。序盤、中盤のチャンスでなかなか1本が出ない打線。7回の好機で不調の長野久義を代打に起用した采配。8回、押せ押せの展開に糸井にバントで送らせようとした作戦(結果失敗)。6、7回と完璧だったといえ、田中将大を同点になってからも続投させた決断……。「負けたら何を言われたら分からなかった」と指揮官も口にするほどだった。だが、選手たちはプレーでカバーし、勝負を諦めなかった。

 勝利の瞬間、ベンチからは一斉に選手が飛び出し、マウンドで輪をつくった。試合を重ねるにつれ、チームの一体感も増している。
「野手の皆さんに助けられた。今度は助ける側にまわりたい」
 一時は痛恨の失点を喫した田中は、次なる戦いを見据えた。10日に対戦するオランダは破壊力があり、キューバを破って勢いに乗っている。この日の粘りをいいきっかけとして、先発が予想される前田健太が試合をつくって競り勝ちたい。

(石田洋之)