
23日、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会は、2020夏季オリンピック・パラリンピックの開催地が決定する9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会に向けた出陣式を都内で行った。招致委員会会長を務める猪瀬直樹都知事は「新しい成長を目標として、希望をつくる」と意気込みを語った。猪瀬知事をはじめ出陣式には安倍晋三内閣総理大臣など各界の著名人約800人が駆けつけた。また式に先立って行なわれた会見では、IOC総会に出席するプレゼンターとしてフェンシングのメダリストの太田雄貴、陸上競技のパラリンピアンである佐藤真海ら7名のメンバーを発表した。
結審の場となるアルゼンチン・ブエノスアイレスでのIOC総会。ライバルのイスタンブール、マドリードとの三つ巴戦の決着まで残すところあと15日と迫っている。「勝負の時が来た。緊張感が高まってきた」と招致委員会の竹田恒和理事長が語れば、猪瀬知事は「結束力、集中力が増してきていると実感しております」と述べた。
IOC総会のプレゼンターに選ばれた太田は「(選ばれて)心から誇りに思う。オリンピックと同様、自分の人生をかけて、その舞台に立ちたい」とアスリート代表としての抱負を語った。もうひとりアスリートから選ばれたのは、昨夏のロンドン大会まで3大会連続でパラリンピックに出場している佐藤。「一言一言に気持ちを乗せたいと思います。日本代表として表現していきたい」。佐藤は宮城県気仙沼市出身。五輪招致によって震災復興を願っている。「自分の育ててもらった場所ですし、(震災には)すごく大きなショックを受けました」と、一時はスポーツどころではないという思いもあった。しかし、母校の後輩たちと交流を通して、“もう一度頑張ろう”と奮い立ったという。「子供たちに背中を押してもらって、ロンドンパラリンピックに立てた。8万人の観客の中でプレーし、一生忘れられない思い出ができました。そういう素晴らしいパラリンピックを日本でも開催してもらいたい」と、感謝の気持ちを招致活動のモチベーションにしている。

この日、行なわれた出陣式では竹田理事長は「皆さんの期待を胸に最後の舞台に立ってまいります。皆さんの思いを伝える気持ちで、一体となって頑張ります。招致を成功させ、再び日本に戻ってきます」と誓うと、ともに現地へと向かう安倍首相は「“2020年東京!”とアナウンスを響かせようじゃありませんか!」と熱く語りかけた。一方、森喜朗元首相は自身が14度の議員選挙で当選した秘訣として「選挙は投票を開けるまで分からない。最後まで勝ったような顔をしてはいけないんです」とゲキを飛ばした。
文部科学省が発表した調査によると、オリンピック・パラリンピック開催に“賛成票”は92%に及ぶという。昨年5月のIOCによる調査で47%と低調だった支持率は、今年1月で70%に増えた。開催地決定が近付くにつれ、国民の期待感は増してきている証拠だろう。この結果に猪瀬知事も「右肩上がりで心強い」と喜んだ。さらに「自信はあります。謙虚に戦っていきたい」と手応えを口にしつつ、自分を戒めるように気を引き締めた。

一方で、外国のメディアからは福島の原子力発電所の汚染水漏れについての指摘を受けた。それに対して猪瀬知事は「国をあげて、きちんとやると安倍首相が発言しています。東京都としても、我々の食品と水は安全というデータが出ています。東京の放射線量もロンドン、パリ、ニューヨークと同じ。早急に解決すべき問題ではありますが、開催に直接関係はないと思っております」と毅然と答えた。
「確実で確かな開催能力」が強みの東京。「平和のトップリーダーだる日本の存在感を示したい」と、猪瀬知事は意気込んだ。前回の16年招致ではデンマークのコペンハーゲンでリオデジャネイロ、マドリード、シカゴと争った。東京は2回目の投票で落選。2回目の投票ではトップのリオにダブルスコア以上つけられる惨敗だった。石原慎太郎都知事(当時)は帰りの飛行機で、悔しさのあまり涙を流したという。東京の悔し涙は、4年の時を経て笑顔に変わるのか。9月7日、ブエノスアイレスですべてが決まる。
(杉浦泰介)