東北楽天からポスティングシステムでニューヨーク・ヤンキースに移籍した田中将大が5日、敵地でのトロント・ブルージェイズ戦でメジャーリーグ初登板を果たし、7回6安打3失点で初勝利を記録した。日本人投手がメジャー初登板で初勝利を収めたのは2012年のダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)以来、9人目。新天地でスタートを切る1勝が、自身にとってはプロ通算100勝目となる節目の白星となった。
 いきなり洗礼を浴びた。だが、投資額182億円の価値があることを十二分に示した97球だ。

 デビュー戦の相手は強力打線がウリのブルージェイズ。スタメンには本塁打王2回のホセ・バウティスタ、主砲のエドウィン・エンカーナシオンら怖いバッターが並ぶ。また、トロントのロジャース・センターはマウンドの傾斜がきついことでも知られ、バッター以外との戦いも求められる登板だった。
 
 初回に早速2点の援護をもらい、記念すべき第1球は149キロのストレート。抑制のきいたボールがアウトローにきっちり決まり、デビュー戦の緊張を感じさせない。だが、3球目に投じたスプリットが高めに浮いてしまう。メルキー・カブレラがバットを一閃すると、打球はあっという間に右中間スタンドへ。先頭打者ホームランで、メジャーリーガーのパワーを身をもって体感させられた。

 手痛い一発に、田中は低めへの意識をより強くした。3番のバウティスタにはアウトローのスライダー、4番のエンカーナシオンには外へのスプリットで連続三振。立ち上がりを最小失点にとどめる。

 ただ、序盤は「雰囲気に入りきれていない感じがあった」と振り返ったように、勝負どころの制球が定まらなかった。2回は1死後、スプリットが落ちきらず、ディオナー・ナバロにライト前へ運ばれる。続くブレッド・ローリーにも甘くなったスライダーをセンター前にはじき返された。次打者のファーストゴロを一塁手が悪送球する不運もあり、1死満塁のピンチ。9番のジョナサン・ディアスには初球で三遊間を破られ、2点を失って2−3と逆転を許す。

 それでも、しっかり立て直せるのが勝てるピッチャーたるゆえんだ。なお一、二塁の場面で、初回にホームランを浴びているカブレラには追い込んでから外へのスプリットで空振り三振。続くコルビー・ラスマスもアウトコースへのスライダーでバットに空を切らせた。

 踏ん張るルーキー右腕に打線もすかさず援護する。直後の3回、2死二塁から、前日に今季初スタメンでマルチヒットを放ったイチローが内野安打で一、三塁とチャンスを広げる。すると同じく新人のヤンガービス・ソラーテが右中間へのタイムリー二塁打。4−3と再び試合をひっくり返した。

「序盤は変化球が多すぎた。速球系を増やして組み立てた」
 スライダー、スプリット主体で毎回安打を許した3回までとは一転、4回以降の田中はツーシームとカットボールに活路を見出す。4回は下位打線をフォーシームとツーシームの組み合わせで三者凡退。やや投げにくそうにしていた左バッターのインサイドにもカットを投げてカウントを整え、5回も2イニング連続で三者凡退に仕留めた。

 6回は先頭のエンカーナシオンにサード強襲の内野安打で出塁を許したものの、続くアダム・リンドにツーシームを打たせて注文どおりのダブルプレー。中盤以降は危なげないピッチングで強力打線を牛耳っていく。
「後半は集中力を増して投げることができた」
 7回も2つの三振を奪って4イニング連続で3人で相手の攻撃を終わらせ、マウンドを後続に譲った。

 調子を上げた右腕に引っ張られるように、ヤンキースは終盤も追加点をあげて7−3で快勝。開幕連敗スタートからの連勝で星を五分に戻した。「7番・ライト」で先発したイチローも猛打賞の活躍で日本から来たルーキーをもりたてた。

 この日の田中は苦労した最初の3イニングから、すかさず修正し、続く4イニングは初登板とは思えない圧巻のピッチングをみせた。ボールが先行するケースもほとんどなく、与四球はなし。未知の対戦相手、未踏の球場で投げることの多いメジャー1年目で、適応力の高さは大きな武器になる。

「まだ1試合終わっただけ。どんどんいいピッチングを続けていけるように頑張る」
 鳴り物入りで海を渡ったTANAKAのこれからにますます目が離せなくなってきた。