3日、世界選手権(8月・北京)の日本代表選考会などを兼ねた「第31回静岡国際陸上競技大会」が行われた。男子走り高跳びは衛藤昂(AGF)が2メートル28で、男子棒高跳びは荻田大樹(ミズノ)が5メートル65で制した。衛藤と萩田は派遣標準記録を突破したため、日本選手権(6月・新潟)で優勝すれば、世界選手権代表に内定する。男子800メートルは川元奨(スズキ浜松AC)が、女子100メートルハードルは木村文子(エディオン)が、いずれも昨年の日本選手権優勝者が制した。
(写真:自己ベストタイをマークし、優勝した衛藤)
 晴天の静岡で、北京へ向け、高く舞った。エコパスタジアムで行われた日本グランプリシリーズ第4戦、静岡国際は実力者たちが存在感を示した。

 男子走り高跳びは、昨年の日本選手権を制した衛藤が勝利した。日本のエース・戸邉直人(つくばツインピークス)が欠場したものの、自己ベスト2メートル30を持つブランドン・スターク(オーストラリア)もいる中で、2メートル28をただ1人跳んでの優勝。2メートル05と、2メートル10をパスした衛藤は、つづく2メートル15、2メートル20、2メートル25と3試技連続で一発クリアした。

 高張広海(日立ICT)との一騎打ちとなると、2メートル28を3回失敗した高張に対し、衛藤は3回目で成功。バーを越え、着地したマットから起き上がると、両手で突き上げ、大きなガッツポーズを作った。これで衛藤の優勝が確定し、世界選手権派遣設定記録となる2メートル31に挑戦した。しかし、5メートル28での3回の試技によるエネルギーの消耗は大きかった。3回ともバーを越えられず、記録は「最低限の目標」としていた自己ベストと並ぶものだった。

 193センチと長身でジュニアの頃から結果を残してきた戸邉を「天才」と称する一方で、自らを「自分は不器用なので、コツコツ積み上げていくタイプ」と分析する。昨年の日本選手権では、その戸邉を破り、前年まで3年連続2位のシルバーコレクターを返上した。遅咲きのハイジャンパーは徐々に、その才能を開花させつつある。

 衛藤は今大会で派遣標準記録(2メートル28)を突破したため、日本選手権優勝で自身初となる世界選手権行きの切符を手にできるが、6月までに派遣設定記録更新を狙う。次戦出場予定の10日のセイコーゴールデングランプリには戸邉に加え、世界選手権モスクワ大会王者のボーダン・ボルダレンコ(ウクライナ)など、2メートル30センチを超える自己ベストを持つ強敵たちがエントリー。衛藤ハイレベルの争いの中で、更なる高みを目指す。

 荻田、山本聖途(トヨタ自動車)、澤野大地(富士通)という実力伯仲の3人が揃う棒高跳びでは、荻田が5メートル65で優勝した。いずれも5メートル、5メートル20をパスして臨んだ5メートル30から試技を開始した。荻田と山本は一発クリア。澤野は2度の失敗を経て、なんとか3回目で成功した。つづく5メートル40は3人ともパスをし、5メートル50でも荻田と山本はノーミスで通過。澤野は3回ともバーを越えられず、脱落した。
(写真:自身2度目の世界選手権に近付いた荻田)

 ここからは荻田と山本、そして海外招待選手のジン・ミンスブ(韓国)との三つ巴となった。ともに5メートル60をパスし、5メートル65に挑んだ。荻田が一発でクリアすると、山本とジンは3連続失敗。ここで荻田の優勝が決まった。次に挑戦する5メートル70は萩田の自己ベストだ。

 自己記録を更新できれば、北京行きの切符獲りは濃厚となるが、3回の跳躍とも結果は失敗だった。「ちょっとしたポールの高さとバーの位置が合わなかった。跳べるか跳べないかはギリギリのところ」という。踏み切りに余裕を持たせるため、助走の仕方を変えた。5メートル70までの3度の跳躍はスムーズに運べたが、勝負所で力みが出てしまった。

 前回の世界選手権は山本と澤野と3人でモスクワの空を舞った。現時点で派遣標準(5メートル65)をクリアしているのは荻田だけ。「やはり3人で行かないと。(世界選手権6位の)山本の成功も少しは3人で行けたのがあると思う。自分もチームとしてまわりに臨めるメンバーがいるといい。全員が最善を尽くせるという意味では3人で出たい。(2人には)負けたくないですけど、高いレベルで日本選手権で戦わないと」と語った。

 モスクワ大会での山本の6位入賞を含め、徐々に世界との差を詰めつつある日本勢。しかし、世界のトップレベルは6メートルオーバーである。記録的にはもう少し上積みが欲しいところだ。日本記録は澤野が2005年にマークした日本記録5メートル83。荻田は「パッと見ると少し高いところにある。少しずつベストを更新していけば、次期に見えるところにあるんじゃないかと思っています」と、焦らずにそのバーを跳び越えていくつもりだ。

 主な決勝の結果は次の通り。

<男子800メートル決勝>
1位 川元奨(スズキ浜松AC) 1分48秒22
2位 田中匠瑛(盛岡市役所) 1分49秒28 
3位 横田真人(富士通) 1分49秒33
(写真:2位以下に1秒以上の差をつけ、日本記録保持者の実力を示した川元<右>)

<男子走り高跳び>
1位 衛藤昂(AGF) 2メートル28
2位 高張広海(日立ICT) 2メートル25
3位 ブランドン・スターク(オーストラリア) 2メートル20

<男子棒高跳び>
1位 荻田大樹(ミズノ) 5メートル65
2位 山本聖途(トヨタ自動車) 5メートル50
2位 ジン・ミンスブ(韓国) 5メートル50

<女子100メートルハードル決勝>
1位 木村文子(エディオン) 13秒27
2位 柴村仁美(佐賀陸協) 13秒32
3位 ジャン・ヘリム(韓国) 13秒37

(文・写真/杉浦泰介)