
解散総選挙が「そう遠くない日」に近づいてきたようです。投票日はお盆の前になるのか、後になるのか。国会内でも、衆議院議員のみなさんの動きが慌しさを増してきました。特にバタバタぶりが目立つのが与党・自民党議員の方々。有名県知事に出馬要請したり、麻生太郎首相を批判したり……。マニフェストではなく、“顔”で目先を変えようとする姿勢に、政権与党の行き詰まりを強く感じます。
そんなドタバタぶりはスポーツ政策にも影響を与えています。先頃、自民党のスポーツ立国調査会で、スポーツ基本法の骨子案が了承され、今国会での法案提出を目指すことが決まりました。現状、スポーツ政策の基本となっているのは1961年に制定されたスポーツ振興法。東京五輪前につくられた法律は半世紀近くが経過し、時代にそぐわない面が多くなってきています。新しくスポーツ基本法をつくり、スポーツ庁の設置へ――。ここ数年、超党派のスポーツ議員連盟では勉強会を重ね、僕もその一員として意見を述べてきました。
スポーツ基本法の制定とスポーツ庁の設置は、日本のスポーツ発展のため、早期に実現させたい事項です。とはいえ、国会会期が残り1カ月となり、解散もウワサされる中、法案を提出しても成立の見通しが立ちません。なぜ、長期にわたって議論してきた内容を、こんな短期間で結論を出さなくてはいけないのか。うがった見方をすれば、選挙前に各スポーツ団体の支持をとりつけるための実績づくりと言えなくもありません。
その証拠に自民党が了承した骨子案には、各団体の要望がたくさん盛り込まれています。スポーツ環境の整備や地域スポーツ推進など、さまざまな基本政策がある中で、もっとも目を引くのが競技水準の向上。「国は、スポーツ団体が行う合宿、オリンピック、パラリンピックなどの国際競技大会、全国的規模の競技会への選手の派遣、優れた資質を有する青少年に対する指導等に対する支援など必要な施策を講ずること」「国、地方公共団体は、スポーツの優秀な成績を収めた者、スポーツの発展に寄与した者の顕彰に努めること」といった文言が骨子案には並んでいます。
スポーツを発展させるために必要な3つの要素は「普及、育成、強化」。自民党案が主眼に置いているのは「強化」です。しかし、いくらトップアスリートを鍛えたところで、そのスポーツを「普及」させてすそ野を広げない限り、真の競技レベルは高まっていかないのではないでしょうか。僕が事務局長を務めている民主党のスポーツ政策小委員会では、より底辺拡大を重視した対案も検討しています。この点は、もう少し議論を尽くさなくてはならないところです。
加えて、個人的には「スポーツ権」の概念を基本法に盛り込みたいと考えています。日本国憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権がうたわれています。「健康で文化的な」生活を送るために欠かせないものがスポーツです。すべての人にスポーツをする権利、スポーツを楽しむ権利がある――。スポーツは誰のためにあるのかを明確化することで、この基本法がスポーツ界だけにとどまらない性格を持ったものであると示したいのです。
もちろんスポーツをする権利には、アスリートとしての権利も含まれています。日本のスポーツ界では、昔ながらの上下関係が色濃く残り、選手たちが声をあげることはなかなか認められません。しかし、スポーツ界の現状を最もよく理解し、その将来を担うのはアスリートたちです。彼らの立場を尊重し、意見を反映させる仕組みも必要だと感じています。
自民党の骨子案には附則として、「政府は、スポーツに関する施策を総合的に推進するため、スポーツ庁の設置等行政組織の在り方について、政府行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」とスポーツ庁創設に向けた内容が記されています。このコーナーでも何度も取り上げてきたように、日本のスポーツ行政は縦割りでバラバラです。学校体育や競技スポーツは文部科学省、障害者スポーツや健康増進は厚生労働省運動公園や競技場の整備は国土交通省、スポーツビジネスにまつわる事項は経済産業省、宝くじによるスポーツ助成は総務省……政策の一貫性は乏しく、ムリ、ムダが少なくありません。スポーツ庁ができれば、こういった弊害からは脱却できます。
しかし、附則にも「政府行政改革の基本方針との整合性に配慮して」とあるように、省庁再編に逆行して新しい庁を立ち上げることには慎重な意見が与野党問わず存在します。既得権益を手放したくない族議員の抵抗も予想されます。スポーツ庁がなぜ必要なのか、スポーツ庁で何ができるのか。この部分を明確に説明できなければ、構想は机上の空論になってしまいます。その意味でスポーツ基本法は、その後のスポーツ庁創設、日本型のスポーツ政策モデルを立ち上げるための一里塚になるのです。
せっかくのスポーツ基本法を駆け込み乗車のような形で決めようとする姿勢は、スポーツに育ててもらった人間のひとりとして寂しさを感じます。いずれにしても選挙が終われば、次の臨時国会でスポーツ基本法の成立を図ることになるでしょう。「強化」の自民党か、「普及、育成」の民主党か。ぜひスポーツを愛するみなさんには、このスタンスの違いも来る総選挙の投票の参考にしていただければと思っています。
友近聡朗(ともちか・としろう):参議院議員
1975年4月24日、愛媛県出身。南宇和高時代は全国高校サッカー選手権大会で2年時にベスト8入りを果たす。早稲田大学を卒業後、単身ドイツへ。SVGゲッティンゲンなどでプレーし、地域に密着したサッカークラブに感動する。帰国後は愛媛FCの中心選手として活躍し、06年にはJ2昇格を達成した。この年限りで現役を引退。愛称はズーパー(独語でsuperの意)。07年夏の参院選愛媛選挙区に出馬し、初当選を果たした。
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