二宮: 五十嵐さんはもう長い間、日本代表として活躍していますが、代表デビューはいつだったんですか?
五十嵐: 大学を卒業して、日立サンロッカーズに入団したルーキーシーズン、2003年です。その年の9月にアテネ五輪予選を兼ねたアジア選手権があったのですが、ポイントガードの選手が直前にケガをしてしまったんです。そこで、8月のユニバーシアードに出場していた僕が呼ばれたというのが最初です。


二宮: 残念ながら、アテネ五輪の切符をつかむことはできませんでした。これまで代表から外れたことは?
五十嵐: はい、06年に一度だけ外れたことがあります。その年は8月の世界選手権後、代表のヘッドコーチが替わったんです。それで12月のアジア選手権では選ばれませんでした。その時を除けば、代表歴は6年になりますね。

二宮: 今年は田臥勇太選手が11年ぶりに日本代表に復帰し、話題となりましたね。結局、NBA挑戦のために途中でチームを離れたわけですが、やはり6年間日本代表としてプレーしてきた五十嵐さんとしては、合宿中からライバル意識をもっていたんですか?
五十嵐: もちろんありましたよ。あのまま田臥がチームに残っていたら、同じチームでプレーするのは今回が初めてだったんです。以前から、田臥とは「バスケットボール界を盛り上げるためにも僕たちが先頭に立って、結果を残していかなければいけない」という話はしていたんです。だから、今回は一緒にやれるチャンスだったので、楽しみでもありました。

二宮: 田臥選手がアメリカに行っても、連絡はされていたんですか?
五十嵐: はい、ちょくちょくメールでやりとりしていました。残念ながらアメリカに行ってからケガをしてしまって、キャンプに参加することもできなかったようです。僕たち代表が7月にラスベガスに遠征に行った時、サマーリーグが開催されていましたが、そこにも田臥の姿はありませんでした。

二宮: 今シーズンもまた、リンク栃木ブレックスと契約したそうですね。
五十嵐: はい。ただ、彼はまだ諦めていないと思いますよ。きっと、またチャンスがあれば、NBAに挑戦したいという気持ちは持っていると思います。
 
 バランス重視のフィジカル強化

二宮: 五十嵐さんは日本代表として長年、世界を相手に戦ってきたわけですが、日本がオリンピックでメダルに近づくには何が必要だと感じていますか?
五十嵐: 難しい問題だと思いますが、若手の育成が必要かもしれませんね。最近、ヨーロッパが強くなってきた要因には、子供の頃からの強化が徹底していることが挙げられると思うんです。世界的にも若返りがすすんでいて、今回のアジア選手権でもほとんどの国が25歳以下の選手が中心となっていました。
 あとは個人個人の技術も上げないといけません。体のサイズだけではどうしても不利な面が出てくる。だからこそ、ルーズボールとかそういった泥臭いプレーを徹底させることが大事かなと思いますね。今は日本にも身長2メートル以上の選手はいますが、世界は身長のある選手でもスピードがあります。そういった世界との差を一人ひとりが意識しながら、課題に取り組んでいかなければいけないと思います。

二宮: 外国人選手はどんどんプレッシャーをかけてきますから、コンタクトの厳しさを感じられることも多いんじゃないでしょうか。
五十嵐: 体のぶつかり合いは激しいですから、それだけで体力を消耗しますね。僕自身、体が細い方なので、そういう部分に世界との差を一番感じたりもしています。

二宮: フィジカル面での強化も必要になってくるわけですね。
五十嵐: はい。ただ、単に体を大きくするのではなく、僕の武器であるスピードを殺さないためにも、バランスのいい体づくりを心がけています。
 
二宮: 五十嵐さんのベスト体重はどのくらいですか?
五十嵐: 体のキレを感じられる68か69キロくらいがベストですね。2キロくらい体重が変わってしまうと、「あぁ、体がちょっと重いな」と感じてしまうんです。もちろん、体を大きくしながらスピードを上げていくのが一番理想だとは思いますが、今の僕としてはこれくらいがいいのかなと。
 
二宮: 同じくらいのサイズの選手と比べても、体重は軽いほうですよね。
五十嵐: はい、体の線も細い方だと思います。もちろん、大きな選手とぶつかった時には飛ばされることもあります。でも、飛ばされながらもシュートを打てるというのは、やっぱり上半身と下半身のバランスがいいからだと思うんです。上半身だけでバンとぶつかっていっても、下半身に踏み切る力がなかったら、フィニッシュにまでうまくもっていけないんです。実際、これまでそういったことを感じてきましたから、やっぱりバランスが一番大事になるのかなと思いますね。

 バスケをメジャーに!

二宮: 五十嵐さんはいつからプロになられたんですか? 
五十嵐: 入団4年目の06年からです。僕も入団当初は社員だったので、午前中は会社で働いて、午後から練習というふうにしていたんです。3年目からは契約社員というかたちにしてもらい、ほとんどプロと変わらない生活をしていました。翌年にプロ契約をしたんです。

二宮: JBLではまだまだプロは一握りです。五十嵐さんがプロになろうと思った理由は何だったのでしょうか? 
五十嵐: バスケットはアメリカでは4大スポーツの一つとして、とても人気の高いスポーツですが、日本ではまだメジャーとはいえません。ですから、少しでもメディアでの露出が増えれば、それだけ多くの人にバスケットを知ってもらえる機会も増えると思ったんです。それには社員よりもプロの方がいいかなと。もちろん、プロですから結果を出すことが前提にはなりますけど、コート以外での活動も自分の役割としてあるのかなと思って、プロへの道を選びました。

二宮: 確かに五十嵐さんは発信源になっている。 
五十嵐: ありがとうございます。06年の世界選手権でも多くのメディアに取り上げてもらい、とても嬉しかったです。

二宮: 今シーズンはトヨタ自動車アルバルクに移籍されました。 
五十嵐: トヨタはここ2年、準優勝、ベスト4と、あと一歩のところで優勝を逃していて、今シーズンは3年ぶりの頂点を目指しています。僕自身にも、今まで以上に結果を求められると思いますので、責任感は強く感じていますね。

二宮: チームメイトとのコンビネーションはどうですか? 
五十嵐: はい、大丈夫です。実は僕よりも年輩となると、代表で一緒にプレーしている選手ばかりなんです。年下の選手の中には初めての選手もいますが、昨シーズンからプレー自体は見て知っているので、どんなプレースタイルの選手なのかは把握できています。あとは細かいところでのコミュニケーションをしっかりと取っていきたいと思っています。
 
二宮: ポイントガードは周りの選手をいかすようなプレーが求められますよね。 
五十嵐: はい。選手にはそれぞれ得意のシュートコースがあるんです。右サイドの選手もいれば、左サイドの方が得意という選手もいる。さらに、パスを出す位置も胸がいい選手もいれば、高い位置がいいという選手もいます。いつも確実にそこにパスを出すというのは難しいのですが、そういうことを常に頭に入れてプレーするようにしていますね。

二宮: その意味では、やりがいのあるポジションですよね。 
五十嵐: そうですね。高校2年まではシューティングガードやフォワードをやっていたので、パスをもらったらすぐにシュートというようなプレーが多かったんです。だからポイントガードをやり始めた頃は正直、おもしろさがわかりませんでした。「周りの選手にパスしなくちゃ」という意識が強すぎて、なかなか楽しむまでには至らなかった。でも、やっていくうちに、ポイントガードは試合をコントロールできるんだってわかって、やりがいを感じるようになりました。

 開幕から田臥と激突!
 
二宮: 今シーズンは10月3日に開幕を迎えますね。なんと開幕カードが、偶然にも田臥勇太選手のいるリンク栃木ブレックスだとか。やはり、彼とのマッチアップは燃えるものがありますか? 
五十嵐: そうですね。同い年ということもありますし、「負けたくない」という気持ちは強いです。だから田臥とのマッチアップは、他の選手以上に意識してしまいますね。

二宮: 試合をする中で特に心がけていることはありますか?
五十嵐: もちろん、勝ち負けというのは一番大事になってきますが、パフォーマンスもプロには求められるのではないかと思っています。余裕がないと、なかなか難しいのですが、試合中に一つでも会場を沸かせるようなプレーをするように心がけていますね。
 
二宮: ご両親も試合を見に来たりするんですか? 
五十嵐: はい。僕の試合を楽しみにしてくれていて、両親が一番のファンになってくれています。先月のアジア選手権にも中国の天津まで来てくれました。両親ともに働いているのですが、母親は自営業みたいなかたちでやっているので、リーグの試合にはほぼ全て来てくれています。
 
二宮: 試合中、お母さんがどこにいるのか、わかったりする時もありますか?
五十嵐: だいたいわかりますね。普段は出さないような大きな声で応援してくれているので(笑)。自然と耳に入ってくるんです。

二宮: 「圭〜!」とかって言ってるんですか?
五十嵐: 言っていますね(笑)。

 勝利の後の一杯は格別!

二宮: これまでのバスケット人生の中で最も忘れられない試合はありますか? 
五十嵐: 06年の世界選手権、初戦のドイツ戦ですね。その試合は、なぜかプレーをしていて心から「この試合、楽しいな!」って思えたんです。僕はどの試合も楽しむことを心がけてプレーしているのですが、その試合はほんと、自然にそういう感情が沸き起こりました。高いレベルでの厳しい試合でしたし、結果も求められていたのでプレッシャーもありました。それでも、楽しいと思えたんです。あんな気持ちになったのは初めてでしたね。

二宮: なぜ、そんなふうに思えたのでしょうか? 
五十嵐: 自分のシュートで先制することができましたし、調子が良かったこともあると思います。でも、なぜそう思えたのか、自分でもわからないというのが正直なところなんです。それほど自然に感じることができたんです。
 
二宮: よく名選手は「光がさす」とか「神が降りてきた」とか独特の言葉遣いをしますが、自分が頭で描いた通りにシュートが決まったり、試合をマネジメントできた時の喜びは格別でしょう? 
五十嵐: そんな試合が稀にありますね。単に投げただけのシュートが入ってしまったり……。ここ1、2年はシーズンに1、2回ほどブザービーターで勝った試合もあります。例えば、2点差で負けていて、残り4秒のところで、自分でドリブルでもちこんでスリーポイントを決めるとか。これまではそういった土壇場での逆転劇なんて経験したことなかったのですが、最近はやれるようになりましたね。

二宮: これまで積み上げてきた経験が大きいのでしょうね。 
五十嵐: はい。バスケットは経験がモノをいうスポーツですから、日本代表での経験がいかされているんだと思います。人任せではなく、最後は自分がなんとかするんだ、という強い気持ちがそうした神がかりなプレーを生み出してくれているのでしょうね。

二宮: そういった試合の後のビールは格別に美味しいと感じるんじゃないですか? 
五十嵐: はい、もう最高ですね! でも、やはり僕はポイントガードですから、周りの選手をうまく使うことができた時が一番納得できるんです。高校や大学の頃は自分がたくさん得点したいという気持ちが強かったんですけど、今は自分がパスを出した選手がきれいにシュートを決めてくれた時に快感を覚えますね。

二宮: じゃあ、シュートを決めてくれた選手と試合後に乾杯することも? 
五十嵐: 一緒に食事をすることもあるので、その時にビールを1杯飲むこともありますね。
 
二宮: 1杯だからこその美味しさっていうのもありますよね。 
五十嵐: そうなんです。美味しいビールは明るく、楽しい雰囲気で飲まないと、もったいないですからね(笑)。

二宮: 普段から他の選手たちと食事に行かれたりするんですか? 
五十嵐: はい。チームメイトと食事するのって、すごく大切なんです。選手それぞれに性格があって、しかもコートの中と外とでも違ったりするんです。食事を一緒にすると結構、性格がわかるものなんですよ。特に外国人選手とは決まった期間しかコミュニケーションをとることができないので、自分から食事に誘ったりしています。

二宮: 食事は家ですか? 
五十嵐: いえ、僕はほとんど外食です。独身男性って、やっぱり外の方が多くなってしまいますよね。逆に女性は自分で料理ができるから、家で飲まれる方が多いと聞いたことがあります。そういうのはちょっと羨ましいかな。僕も料理ができればそうしたいですけどね(笑)。

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<五十嵐圭(いがらし・けい)プロフィール>
1980年5月7日、新潟県出身。北陸高校、中央大学を経て2003年に日立サンロッカーズに入団した。同年、アテネ五輪アジア地区予選で日本代表デビュー。以降、世界でもトップ級のスピードを武器に日本を代表するポイントガードとして活躍している。06−07、07−08と2シーズン連続でJBLベスト5に輝く。今シーズンはトヨタ自動車アルバルクへ移籍。3シーズンぶりの王座奪還に期待がかかる。女性からの人気も高く、DVDや写真集を出すなど、活躍の場を広げている。9月28日には2冊目の写真集「principe」(日刊スポーツ出版)が発売される予定だ。
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