サッカーW杯南アフリカ大会の主役は、やはりこの男だろう。「マラドーナ2世」と呼ばれるアルゼンチン代表FWリオネル・メッシだ。

 アブダビでのクラブW杯は、まさにメッシのメッシによるメッシのための大会となった。
 欧州王者バルセロナの至宝メッシは大会1週間前に行われた欧州チャンピオンズリーグで右足首を負傷し、大会出場が危ぶまれた。
 どうにか本番には間に合ったものの、初戦となる準決勝(北中米カリブ海代表アトランテ戦)のスタメンに彼の名前はなかった。
 メッシがピッチに姿を現したのは1対1と同点で迎えた後半8分。登場するやいなやDFラインの裏に抜け出したメッシにイブラヒモビッチからのスルーパスが届く。右足でトラップしたメッシはGKもかわし、やさしいタッチでゴールへ流し込んだ。メッシらしい芸術的なゴールだった。

 決勝の相手は南米王者エストゥディアンテス。1点のビハインドを背負ったバルセロナは後半に入って果敢に攻めるが、南米王者のゴールをこじ開けることができない。
 追い付いたのは終了間際の後半44分。ペドロがヘディングで押し込み、どうにか試合を振り出しに戻した。
 そして最後に試合を決めたのは、やはりメッシだった。延長後半5分、クロスに合わせて走り込んだメッシは体ごと飛びこむようにして、胸で勝ち越しゴールを叩き込んだ。バルセロナはクラブ創設110年目にして悲願の「世界一」を達成した。

 4カ月後に行われるW杯はサッカー先進国が独自のオートクチュールを競い合う4年に一度のコレクションでもある。そこで披露される最先端の戦術と技術が地球上のフットボールシーンをリードしていく。
 メッシは未来への水先案内人となり得る稀有なタレントである。サッカーに興味のない人も彼の名前は覚えておいて損はない。

<この原稿は2010年1月16日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>

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