9月29日〜10月2日の石川ミリオンスターズとの地区チャンピオンシップでは、レギュラーシーズン以上に、選手が集中力を発揮し、「絶対に勝つ」という勝利への執念を前面に出して戦ってくれました。その結果、接戦を制し、初のリーグチャンピオンシップへと進出することができました。しかし、そのリーグチャンピオンシップでは新潟アルビレックスBCに連敗を喫し、後がない状態です。13日からはホームでの試合ですから、全員で巻き返しを図りたいと思っています。
 新潟とは前期3勝3敗、後期0勝6敗というレギュラーシーズンの対戦成績ではありましたが、短期決戦ですから何が起こるかわかりません。とにかく、先に流れを掴むことが重要だと考えていました。その点では、1、2試合ともに、序盤で先取点を奪い、流れを引き寄せかけていただけに、残念です。

 まずは初戦ですが、1回裏、無死満塁というピンチを三振とダブルプレーで凌いだ後の2回表、1死から5番・裕太(大阪桐蔭高)と6番・小林恭兵(会津工業高−会津ベースボールクラブ−群馬ダイヤモンドペガサス)の連続三塁打で先取点を挙げ、さらに8番・荒井良丞(羽黒高−住友金属鹿島)のタイムリーで2点目と、いいかたちで先行し、流れが福井に来ていました。ところが、その直後の2回裏に新潟に一挙3点を奪われて逆転されてしまいました。味方が点を取った後の失点はチームにとっては大きな痛手です。やはり、ここが初戦の最大のポイントだったと思います。

 試合の流れを変えた攻守のミス

 今季、一度も新潟戦で投げていないということもあり、初戦の先発は藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)を起用しました。その藤井は3回までに既に8本ものヒットを打たれ、4失点。4回は無失点に抑えたものの、新潟の打者に藤井の球が合っているような感じがしたために、5回からは川端元晴(鯖江高−福井工業大)にスイッチしました。

 その5回裏、2死一、三塁の場面、一塁ランナーが盗塁してきました。キャッチャー上田龍太(日生学園第三高−神戸9クルーズ)は二塁へ送球したと見せかけて、川端がカットして、三塁へ。三塁ランナーを刺すためのこのサインプレーに新潟は完全にひっかかってくれました。ところが、川端の三塁への送球が悪送球となってしまい、逆に新潟に2点を与えてしまう結果となったのです。もちろん、野球にはミスがつきものです。しかし、こうした勝敗に大きく影響する大事なところでミスが出るというのは、やはり練習不足だと言わざるを得ません。

 一方、攻撃の方は4回表には無死満塁と絶好のチャンスがありました。しかし、7番・兵頭丘浩(豊田大谷高−日本プロスポーツ専門学校)、8番・荒井が連続三振。9番・上田はセンターフライに倒れ、結局1人もランナーを返すことができませんでした。
「得点を奪うには、ヒットだけではない」
 1年間、口を酸っぱくして言い続けてきたことです。例えば、無死満塁の場面で最低でもやらなければいけないのは、なんとかバットに当てて内野ゴロでゲッツーになったとしても、三塁ランナーを返すこと。ところが、絶対にやってはいけない三振という結果になってしまいました。レギュラーシーズンの時からですが、やはりプレッシャーからなのか、ランナーが出るとプレーに固さが出てくるのです。結局、初戦は3−11で落としてしまいました。

 成長著しいエースに求む“がむしゃらさ”

 迎えた第2戦には今季チーム最多の10勝を挙げた森本将太(福井高)が先発しました。強打の新潟打線をよく抑えましたが、5回裏に2死満塁からストレートを打たれ、走者一掃のタイムリー三塁打で逆転。これが決勝点となり、1点差で負けてしまいました。試合後、決勝打を打たれたボールについて森本は「アウトコース低めでファウルを取ろうと思っていたが、甘く入ってしまった」とコメントしました。この言葉を聞いて、もう少し成長してほしいと思ったのが正直なところです。
(写真:ドラフト候補にもあがっている森本)

 場面を考えて、自分で配球を考えられるようになった点については、今シーズン、森本が成長したひとつでもあります。しかし、勝負の世界はあくまでも結果が全てです。たとえ森本が考えていた通りのコースに投げたとしても打たれているかもしれないのです。ですから、「力負けです」と打たれたという結果を受け入れたコメントを残してほしかったなと思うと同時に、もう少し「絶対に抑えてやる」というがむしゃらさが欲しかったかなと。彼は20歳という年齢にしては、野球をよく考えられるピッチャーです。今シーズンは技術面でもメンタル面でも成長しました。あとは勝負に対する執念をもっと前面に出せば、さらにレベルアップするはずです。

 さて、13日からはホームでの試合が始まります。もう1敗もできない状況ではありますが、今持っている最大限の力を発揮し、シーズンを通してやってきた福井の野球をやれば、勝つ自信はあります。そのためには、何よりも守備でのミスをしないこと。先頭打者への四球など、ミスをすれば、相手に流れを与えてしまいます。逆に相手のミスから自分たちに得点チャンスがくることもある。ですから、“守備でのミスをしないこと”。これこそが、最大のポイントです。

酒井忠晴(さかい・ただはる)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ監督
1970年6月21日、埼玉県出身。修徳高校では3年時にエースとして活躍し、主将も務めた。89年、ドラフト5位で中日に入団。プロ入り後は内野手として一軍に定着した。95年、交換トレードで千葉ロッテに移籍し、三塁手、二塁手のレギュラーとして活躍した。2003年、再び交換トレードで中日に復帰したが、その年限りで自由契約に。合同トライアウトを受け、東北楽天に移籍した。05年限りで引退したが、07年からは茨城ゴールデンゴールズでプレーした。今シーズン、福井ミラクルエレファンツの監督に就任した。
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