
切れ味鋭い日本刀――。これが俊野達彦のプレイを見た時の第一印象だ。スピードに乗ったドライブで相手の守備ブロックを切り裂く。本人も「(ドライブは)他の選手と比べても負けていない」と絶対の自信を誇る。8年目を迎えたbjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)に新規参入した群馬クレインサンダーズに所属し、ポジションはシューティングガード(SG)を務める。ルーキーながら今季は12月3日現在、16試合すべてに出場し、104得点。群馬の大きな武器になっている。
「“あ、いけるかな”という感じで練習していましたね」
俊野はシーズンが開幕するまでの心境をこう明かした。7月にドラフト2位で群馬に入団してから、自分の能力がどれくらいbjリーグで通用するか完全には掴めていなかった。だが、9月に行われたプレシーズンゲーム(対新潟アルビレックスBB、対東京サンレーヴス)で出場機会を得ると、得意のドライブからシュートを放つなど“俊野らしさ”を発揮。「bjリーグで戦う相手に持ち味であるスピードが通用すると感じた」という。その手応えは幻ではなかった。
迎えた10月7日の開幕戦(対富山グラウジーズ)で、両チーム最多の18得点をマークしたのだ。しかも、群馬が採用していた戦術は“タイムシェア”。これは、出場メンバーと控え選手を含めた全員がプレイタイム(出場時間)をシェア(共有)し、試合の展開によってメンバー構成が頻繁に変化していくというものである。つまり、俊野は限られた時間のなかで結果を出したということだ。
「出る時間が短い分、運動量も豊富に動いて、アグレッシブにプレイすることを意識していました」
試合ではパスを受けて相手にプレッシャーをかけられつつも、一瞬でギアを上げてゴール下へと切れ込んだ。ドライブからの2ポイントシュートで10得点を稼ぎ、bjリーグで自身の武器が通用することを証明してみせた。
プロデビュー戦に臨む上で精神的なプレッシャーは感じなかったのか。「あまり緊張はしないほうなので」と彼は笑い、デビュー戦での心境をこう振り返った。
「とにかく縮こまったプレイだけはしないように心がけました。オフェンス(OF)もディフェンス(DF)も積極的にいく。自分にできることを全力でやればいいかなと」
いくらプレシーズンを経験しているとはいえ、重圧のかかる場面で普段どおりにプレイすることは簡単ではない。俊野はプレイのみならず、メンタル面でもプロとしての資質を備えていた。
進化のカギは“視野”と“我慢”
その後も俊野は目覚ましい活躍を見せた。第2戦(対富山)でも13得点(チーム2位)を記録し、第3戦(対信州ブレイブウォリアーズ)では20ゴール(チーム最多)を叩き出したのだ。第3戦では初めてスターティングファイブに名を連ねるなど、俊野はもはや群馬にとって欠かすことのできないピースと化していた。
(写真:(C)Gunma Crane Thunders/清水 和弘) 群馬のキャプテン・岡田慎吾は俊野のプレイを初めて見た時の印象を「とてもスピードがあると感じました」と振り返る。岡田は昨季まで東地区を3連覇し、日本一に2度輝いた浜松・東三河フェニックス(※今季から西地区に移行)でも主将を務めたリーグ屈指のガード(G)である。その岡田も俊野のドライブには太鼓判を押す。
「一緒にプレイする時は、得意のペネトレイト(ドリブルで仕掛けること)で相手のDFブロックを崩してくれるのでありがたいですね」
ただ、岡田は「パスの視野をもっと広げられれば、さらにプレイの幅が広がるんじゃないかなと思います」とも口にした。俊野のドライブの鋭さを認めながらも「やはり、インサイドに大きい外国人選手がいて、フィニッシュまでいけない時に、それでも無理やり(ドリブルで)いってしまう場面が多い」と指摘。俊野が仕掛けることで、相手のDFは彼に引き付けられる。その時に岡田や他の味方選手のマークがゆるくなり、チーム全体にシュートチャンスが増えるのだ。本人も「もっとパスをさばけるところもあると思います。そうなればアシストも増えてチームの得点も増える」と認めている。
最後に岡田は「無理やりシュートまでいかずに、我慢することが大事」とアドバイスした。彼のドライブにパスを出す“視野”と“我慢”が備われば、切れ味はさらに鋭さを増すだろう。bjリーグのレギュラーシーズンは52試合。伝家の宝刀を研ぎ澄ます時間は十分にある。

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俊野達彦(としの・たつひこ)プロフィール>
1988年1月18日、愛媛県生まれ。雄新中―新田高―大商大―草加クラブ―千葉エクスドリームス。小学3年時にバスケットボールを始める。新田高時代は1年時から全国大会に出場。小中高ともに愛媛県の優秀選手に選出。大学は関西大学バスケット界の名門・大商大に進学したが、卒業後は就職し、第一線から離れた。しかし、プロになる夢を諦めきれず、2011年のbjリーグ合同トライアウトやチームトライアウトを受験。同年に入団した千葉エクスドリームスで練習を重ね、今年6月の合同トライアウト最終選考に合格。同月、ドラフト会議で群馬から2位指名を受けた。現在、新人ながら全試合に出場を続けている。高い身体能力と鋭いドライブが武器。身長185センチ、80キロ。背番号33。

(鈴木友多)
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