2012年のJリーグで活躍した選手や監督などを表彰するJリーグアウォーズが3日、横浜アリーナで開催され、最優秀選手、ベストイレブンを含めた各種表彰が行われた。最優秀選手賞(MVP)には初のリーグ制覇を果たしたサンフレッチェ広島の佐藤寿人が選出された。佐藤はこの他、得点王、ベストイレブン、フェアプレー個人賞も受賞し、史上初の4冠を達成した。最優秀監督には同じく広島の森保一監督が選ばれた。ベストヤングプレーヤー賞(1991年4月2日以降に出生し、今季のJ1リーグ戦に17試合以上出場した選手を対象)には柴崎岳(鹿島)が輝いた。
(写真:MVPと得点王の同時受賞は中山雅史、高原直泰、アラウージョ、マルキーニョスに続いて史上5人目)
 ベストイレブンではガンバ大阪の遠藤保仁が自身の持つ最多記録を更新する10年連続10度目の受賞。日本代表サイドバックのジュビロ磐田・駒野友一は初の選出となった。優勝した広島からは佐藤のほかに、GK西川周作、DF水本裕貴、MF青山敏弘、MF高萩洋次郎ら最多5選手がベストイレブンに入った。

 森保監督は就任1年目での栄誉に「大変光栄」と喜びを口にし、「選手、現場スタッフ、フロントスタッフ、サポーター、スポンサーの皆様、すべての方々に感謝したい。そして、いつどんなときも僕を支えてくれた家族に感謝の気持ちを伝えたい。ありがとう」と語った。続けて指揮官は自らの師匠にも言葉を送った。「昨年までチームづくりをしてきた現浦和監督の、そして僕の監督でもあったミシャさん(ミハイロ・ペトロヴィッチ)に感謝の気持ちを伝えたい」。ペトロヴィッチの攻撃的サッカーを継承し、組織的な守備を広島に組み込んだ。その結果、今季は得点数でリーグ2位(63)を記録し、失点数もリーグで2番目に少ない(34)抜群の安定感を誇った。

 また、広島にはユース出身の選手が多いのも特徴だ。森崎和幸・浩司兄弟、森脇良太、高萩洋次郎ら、ユース出身者が今季のチームを支えた。
「サンフレッチェは初優勝したが、これまでは育成型クラブとしてのスタイルを忘れず、長い道を歩んできた。(今後も)どこにでも誇れる育成型クラブのスタイルを確立し、成長していきたい」
 森保監督は、強い口調でさらなる進化を誓った。
(写真:森保監督は元日本人Jリーガーとして初の最優秀監督賞に輝いた)

 今回の表彰式で最も会場が沸いたのは、MVPが発表された時だ。栄光のスポットライトが佐藤に照射されると、広島サポーターだけでなく、詰めかけた他クラブのサポーターからも大歓声が飛んだのだ。それほど、今季の佐藤の活躍は際立っていた。キャプテンとしてチームをけん引し、自身初の得点王を獲得。フェアプレー個人賞は1枚も警告をもらわないという偉業だった。

「僕ひとりの賞じゃない」
 MVPの受賞スピーチで佐藤はこう強調した。「チームが優勝したからこそ、この賞をいただいたと思っている」。史上初の個人賞4冠に輝いた男の中は、周囲への感謝であふれていた。

 そして、佐藤は「子供のころからサッカーをする環境を整えてくれた両親に感謝の気持ちを伝えたい」と語り、ある選手の名を口にした。双子の兄・佐藤勇人(千葉)だ。
「僕の一番の良きライバルである兄の勇人(千葉)。子供のころ、いつも僕のシュート練習に付き合ってくれたおかげで、今の自分がある」

 今季は寿人が歓喜を手にした一方で、勇人の所属するジェフユナイテッド千葉は、J1昇格プレーオフ決勝で敗れた。試合終了後、勇人はショックのあまり、しばらく立ち上がることができなかった。そんな兄に対し、寿人は檀上で「再来年、J1の舞台で兄弟対決ができることを願っている」とエール。場内からはこの日一番の拍手が巻き起こった

 もちろん、自らの家族にも言葉を忘れない。
「一番感謝しなければいけないのは妻の奈央と、2人の息子である玲央人、里吏人。彼らの支えがあったから、いつも前を向いて戦うことができた。家族にこの賞を捧げたい」
 6日からはクラブW杯が開幕する。初戦の相手はオセアニア王者のオークランド・シティ(ニュージーランド)。佐藤は「世界の舞台でサンフレッチェのサッカーを見せたい」と力強く宣言した。

 今年はロンドン五輪でU−23日本代表が43年ぶりのベスト4に進出し、五輪後、清武弘嗣(ニュルンベルク)や酒井宏樹(ハノーバー)などが、欧州リーグへ飛び立った。ベストヤングプレーヤーの柴崎も近い将来、彼らの後を追うであろう逸材だ。今季は、29試合に先発出場し、名門鹿島のレギュラーに定着。ナビスコ杯では決勝で2ゴールをあげてMVPに輝き、順風満帆な1年と思われた。だが、柴崎は選手間投票で自身に投票してくれた選手たちへの感謝を示した後、厳しい表情でこう語った。

「僕自身、ベストヤングプレーヤー賞の投票用紙を見て違和感があった。他にも何人かが違和感を感じたのではないか。この賞に値する選手は今季はゼロ人だった。世界的に見れば同世代には、ミランのエル・シャーラウィ、レアルの(ラファエル・)ヴァラヌ、サントスのネイマール。彼らのような活躍ができた選手が(Jリーグに)いるかといえば、そうではない。彼らに一歩でも近づき、日本を代表する選手になっていかなければ世界と戦えない」
(写真:プレゼンターのなでしこジャパン・岩渕真奈から盾を受け取る柴崎)

 名門でレギュラーを掴み取り、個人タイトルをとってなお、柴崎は満足していない。すべては世界と戦うため。20歳の新人王は今後、どんな成長曲線を描くのだろうか。

 来季はJ1にヴァンフォーレ甲府、湘南ベルマーレ、大分トリニータが復帰し、JFLからV・ファーレン長崎がJ2に昇格する。一方、J2にはヴィッセル神戸、ガンバ大阪、コンサドーレ札幌が降格。JFLにFC町田ゼルビアが降格する。21年目を迎えるJでは、一体どんなドラマが待ち受けているのか。今から期待に胸が躍る。

<2012 Jリーグアウォーズ受賞者一覧>

○最優秀選手賞 
佐藤寿人(サンフレッチェ広島)

○ベストイレブン
GK 西川周作(サンフレッチェ広島)
DF 水本裕貴(サンフレッチェ広島)、駒野友一(ジュビロ磐田)、田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)
MF 青山敏弘(サンフレッチェ広島)、高萩洋次郎(サンフレッチェ広島)、遠藤保仁(ガンバ大阪)、レアンドロ・ドミンゲス(柏レイソル)
FW 佐藤寿人(サンフレッチェ広島)、ウイルソン(ベガルタ仙台)、豊田陽平(サガン鳥栖)

○得点王 
佐藤寿人(サンフレッチェ広島) 22得点

○最優秀監督賞
森保一(サンフレッチェ広島)

○ベストヤングプレーヤー賞 
柴崎岳(鹿島アントラーズ)

○J2 Most Exciting Player
山口智(ジェフユナイテッド千葉)

○最優秀主審賞
西村雄一

○最優秀副審賞
相樂亨 

○フェアプレー個人賞
佐藤寿人(サンフレッチェ広島)

○フェアプレー賞 高円宮杯
サンフレッチェ広島

○功労選手賞
藤田俊哉
田中誠

○最優秀育成クラブ賞
コンサドーレ札幌

○J2優勝表彰
ヴァンフォーレ甲府

○Jリーグベストピッチ賞
東北電力ビッグスワンスタジアム
アウトソーシングスタジアム日本平
キンチョウスタジアム