8月は愛媛にとって勝負どころです。31日間に19試合が組まれ、ここでの勝敗が後期の行方を大きく左右するでしょう。7月は6勝3敗2分の2位と勝ち越したとはいえ、2敗は1点差負け。引き分けのゲームも含めて、あと1本が出ていれば、もっと勝ち星は増やせたとみています。
 試合数が増えれば、その分、負担がかかるのは投手陣です。中でもリリーフ陣は連投が予想されます。彼らを少しでもラクにするには、何より先発ピッチャーが役割を果たすことが欠かせません。彼らにはしっかりゲームをつくってもらうべく調整期間が与えられています。にもかかわらず、早々にマウンドを降りていてはブルペンにしわ寄せがくる一方です。

 もちろん、NPBでも序盤にKOされるピッチャーがいるように、ローテーションを守って結果を出すのは簡単ではありません。ただ、その作業ができなければ、上のレベルに行けないことも事実です。8月に入ってから池ノ内亮介古舘数豊がいずれも5回を投げ切れませんでした。2人とも経験のあるピッチャーなのですから、責任感を持って次の先発に備えてほしいと思っています。

 ブルペン陣では元西武の岩崎哲也が7月に入団しました。彼は後ろに体をひねって投げる変則フォームで有名ですが、投げっぷりの良さが光ります。決してコントロールは良くなくとも、思い切ってボールを投げるため、バッターがなかなか捉えきれないのです。愛媛にはカウントが不利になるとボールを置きに行くピッチャーが多いだけに、この点は見習ってほしいと感じています。

 岩崎が入ったことにより、チーム内には河原純一小林憲幸西川雅人金森敬之と元NPBピッチャーが5人に増えました。若いピッチャーは、これをプラスに考えてほしいものです。確かに実績が上の選手がチームに加われば自分の出番は減る可能性があります。しかし、その分、彼らの姿やピッチングを間近で見て吸収できる点は多いはずです。

 それに独立リーグといえどもプロですから、元NPBも1年目の選手も最終的には結果を出した選手が生き残ります。元NPB選手を上回るつもりでなければ、自身のドラフト指名もないでしょう。若手ピッチャーには、彼らをいいステップ台にするつもりで取り組んでほしいものです。

 投手陣が試合をつくれれば、あとは攻撃で確実に得点をあげるのみ。現在、打線を引っ張っているのはトップバッターの藤長賢司です。後期に入って調子を上げ、打率はリーグ2位の.327(8月5日現在)を記録しています。

 彼は走攻守揃った内野手としてNPBスカウトからも注目されています。ただ、守備、走塁ともスタートがぬるく、俊足を十分にいかせているとは言えませんでした。ドラフトで指名されるレベルに達するには“1歩目”の改善は不可欠――そう考えた僕はこの夏、彼を徹底的に鍛えることに決めました。ノックをどんどん打ってキレを出し、走塁にももっと興味を持ってもらえるようアドバイスをしています。

 この日々の作業が下半身を鍛え、バッティングでも好影響を与えているようです。本人も夢が現実味を帯び、練習にも一層力が入るようになってきました。残り2カ月、課題を克服し、いいアピールをしてほしいと願っています。

 もうひとり好調なのは高田泰輔です。前期は途中までトップバッターに固定しながら、結果を残せず、一時期、下位に打順を落としました。ただ、夏場になってヒットが増え、打率も3割に乗せてきました。今は打順もクリーンアップを任せています。

 ただし、彼はまだまだNPBのスカウトに「獲得したい」と思わせる決め手を欠いています。能力はありながら、本当の勝負どころやチャンスでのプレーで目立てないのです。これは厳しい見方をすれば、本物の実力がないとも言えます。

 そこで彼に対しては練習の中で、反復作業を取り入れるようにしました。これはルーティンを身につける目的です。一流選手が大事な場面で力を発揮するのは、ルーティンにのっとり、心身ともに常に同じ状態で臨んでいるから。高田も自分の軸となるものを確立できれば、より本番に強い選手になれるでしょう。

 そして、もうひとつ彼には考える力を養ってもらいたいと感じています。トップレベルともなれば、心技体で大きく差がつくことはありません。いかに野球を深く考えているか。これが選手として大成できるのかの分かれ道になります。

 きっかけとして、たとえば打席でのチェックポイントを増やすように話をしました。これまで軸足のひざの使い方だけ意識していたのを、さらに踏み出す足やトップのつくりかたにも神経を使ってみるのです。これらはすべて連動していますが、ひとつひとつについて考えることで、バッティングを単なる感覚ではなく理論立てられるようになっていきます。これができると自分自身で工夫しながら、さらなるレベルアップを図れるはずです。
 
 前期は1番・高田、4番・金城雅也を固定してスタートしましたが、後期は打順を相手投手に応じて変えています。それは、この後期こそ何としても優勝したいからです。やはり試合をしている以上、勝たなければ本当の意味での選手の成長はないと僕は考えています。

 愛媛の選手は総じてまじめですが、反面、押しが弱いところがあります。一言で言えば、自信がないのです。この殻を打ち破るには、勝って新しいステージに到達する必要があります。大きな成功体験をすれば、それが自信となり、新しい目標やモチベーションにつながるでしょう。

 ですから、後期はファンの皆さんにもひとつお願いがあります。選手を温かい目ではなく、ぜひ厳しい目で見てほしいのです。負けても「惜しかった」「良くやった」ではなく、「ダメじゃないか」と叱咤していただけたらと思っています。

 愛媛の皆さんとともに頂点へ立ち、喜びを分かち合う。秋にそんな日が必ず来るよう、こちらも残り試合を全力で挑みます。ファンの皆さんも私たちと一緒になって戦ってもらえるとうれしいです。


星野おさむ(ほしの・おさむ)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1970年5月4日、埼玉県出身。埼玉県立福岡高を経て、89年にドラフト外で阪神に入団。内野のユーティリティープレーヤーとして、93年に1軍デビューを果たすと、97年には117試合に出場。翌年には開幕スタメンで起用される。02年にテストを経て近鉄へ。04年に近鉄球団が合併で消滅する際には、本拠地最終戦でサヨナラ打を放つ。05年に分配ドラフトで楽天に移籍し、同年限りで引退。06年からは2軍守備走塁コーチ、2軍打撃コーチなどを務めた。11年より愛媛の監督に就任。
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