4月6日の開幕戦まで残り数日。皆さんから「いよいよ開幕ですね」と声をかけていただきますが、本音としては「開幕したら困る」という心境です……。今季のチームは外国人が多く、広島から派遣された右腕のダニロ・デヘスス・アラウホ、サードのエルニス・ジェナロ・レジェスがやってきたのが24日。全員揃って試合をしたのが2回しかなく、まだチームとしての戦い方が決まっていないのが現状です。
 ただ、2カ月間、基本を徹底したことで選手の意識は少しずつ変化しつつあります。守りでは捕った打球を確実にアウトにすることを毎日、口を酸っぱくして話をしました。まだミスはあるものの、堅実にプレーしようとする姿勢は見られるようになってきました。

 投手では井川博文、吉川岳、野原慎二郎と実績のあるピッチャーが抜けました。ウインターリーグや海外トライアウトで外国人を獲得し、9名中5名を助っ人が占める投手陣です。広島から来たデヘススは球が速いパワーピッチャー。広島では2イニング以上投げたことがないそうですから、抑えで起用する構想を抱いています。

 デヘススが来るまでオープン戦では中継ぎ、抑え役で使っていたレイモンド・ビラセニョールは思ったより制球があり、真っすぐがナチュラルに変化するクセ球の持ち主です。スタミナがあれば、先発で使ってみたいと考えています。

 野手ではフレデリック・アンヴィデイビー・バティスタエルニス・ジェナロ・レジェストニー・マクレンドンと4人を選手登録しましたが、どこまでできるのかは未知数です。アンヴィは3月初旬、フランス代表合宿で2週間チームを離脱した上に指を骨折し、まだプレーをするのに痛みがある状態です。ファーストでの起用を前提にしつつも、動けるようであればレフトを守ってもらうかもしれません。

 というのもレフトで使ったマクレンドンの守備にかなり不安があるからです。練習試合でホームランを放ったり、長打力はあるようですが、イージーフライを落球するなど守りは計算できません。広島から派遣されたレジェスも、紅白戦のイニング間の守備練習でファーストが転がしたボールを2度悪送球するなどスローイングにはかなり難があります。せめて打ってくれれば使い道はありますが、もし打てないとなると起用法には頭を悩ませることになるでしょう。

 本来はこうした見極めをオープン戦や練習試合で行ってからシーズンを迎えるものですが、先述したようにチーム全員が揃ってから、まだ1週間ほどしか経っていません。投手の役割分担も打順もあってないようなもの。開幕してからも、どの選手がどこへ収まるか手探り状態がしばらく続くことでしょう。

 幸い4月前半は試合数が少ないため、調子のいい選手をどんどん起用し、その中でチームのかたちが見えてくればと考えています。現状、河田直人を4番にしていますが、この打順で固定するかどうかは分かりません。こちらの意図としては彼は4番というよりも“4番目のバッター”。ランナーが出て打席が回ってくれば、ポイントゲッターとしての役割が求められますし、先頭打者であれば、まずは出塁が大事です。そう考えれば、1番も4番も7番も9番も状況に応じたバッティングをすることは共通しています。

 打順を組む際には「クリーンアップが重要」「1、2番が大切」という意見をよく聞きます。もちろん、1、2番がよくてクリーンアップが強力なのに越したことはありません。ただ、個人的には下位にもアベレージを残せる選手がいないと相手は怖くないと感じます。下位打線が弱いと、ピッチャーは安心して投げられるため、調子が悪くても立ち直りのきっかけを与えてしまうからです。その意味では4番だろうが、7番だろうが、重要度は変わりません。

 たとえばオープン戦では2番で起用することの多かった新人の中村憲治にも、「器用になりすぎない」よう注意しています。2番=つなぎ役という考えが強いのか、彼はすぐにセーフティバントや当て逃げをしようとします。しかし、それでは個の力はつきません。甘いインコースならライトオーバーのライナーを放てるような、しっかりしたバッティングを身につけてほしいと感じています。

 僕は現役時代、ストライクゾーンをコースによって5等分し、内側から1〜5の番号をつけていました。内角の1、2のコースは逆方向に打つのは難しいので引っ張る。真ん中の3と外側の4、5のコースは流す。こういったことを考えながら打席に立っていました。

 インコースのボールを引っ張り、鋭いライナーで外野に運ぶにはレベルスイングでボールの中心をとらえる必要があります。これが少しでもボールの下を叩けばフライになりますし、上を叩けばゴロになる。どのコースに、どういう角度でバットを入れれば、どんな打球が飛ぶのか。それを把握しておかなければ、ヒットの確率は高まりません。

 こうした基本理論を体得する第一歩として、選手たちには「フライを打つな」「鋭い打球を打て」と指導しています。狙ってライナーを打つ要領がつかめれば、その応用で狙ってゴロを転がすこともできますし、狙って犠牲フライも打てるようになるからです。日々の打撃練習では体を水平に回転させ、バットをレベルに振ることを意識して取り組ませています。

 2月のトレーニング開始から、僕は今の段階を4次キャンプと位置付けています。決して開幕が近づいたからといって、そこに合わせた調整はしていません。開幕してからもこれは一緒でしょう。シーズン通して体幹を強化すべく、選手には1年間、体をいじめ抜いてもらうつもりです。

 したがって、まだキャンプの手締めは行っていません。開幕前日に一応の区切りとして一本締めをするかもしれませんが、はっきり言って、我々に“儀式”は不要と感じています。力のない選手たちの集まっているチームなのですから1年終わるまでキャンプが続くととらえてもらってもいいでしょう。

 何のために、そこまでして楽しくもない練習をするのか。それは自身の成績を残し、チームが勝つためです。目的をしっかり持って1年間を過ごさなくてはレベルアップは到底望めません。意識が変わっただけで、すぐにこちらの要求が実践できるほど野球は甘くありませんが、少なくとも考えて練習や試合に臨まない限り、次の段階に進めないのは明らかです。

 オープン戦から、意識していれば防げるミスを犯した選手は容赦なく交代しています。この方針はシーズン中も貫きます。2カ月やそこらで選手は簡単に変わりません。しかし、徐々に変わりつつあります。1年通じて、繰り返し巻き返し野球の基本を植え付けることでステップアップを図るつもりです。その過程をファンの皆さんにも見ていただければと思っています。


弘田澄男(ひろた・すみお)プロフィール>:高知ファイティングドッグス監督
 1949年5月13日、高知県出身。高知高、四国銀行を経て72年にドラフト3位でロッテに入団。163センチと小柄ながら俊足巧打の外野手として活躍し、73年にはサイクル安打をマーク。74年には日本シリーズMVPを獲得。75年にはリーグトップの148安打を放つ。84年に阪神に移籍すると、翌年のリーグ優勝、日本一に貢献した。88年限りで引退後は阪神、横浜、巨人で外野守備走塁コーチなどを歴任。06年にはWBC日本代表の外野守備走塁コーチを務め、初優勝に尽力した。12年に高知の球団アドバイザー兼総合コーチとなり、14年より監督に就任する。現役時代の通算成績は1592試合、1506安打、打率.276、76本塁打、487打点、294盗塁。ベストナイン2回、ダイヤモンドグラブ賞5回。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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