2007年に産声をあげ、4球団でスタートした「ベースボール・チャレンジ・リーグ」(BCリーグ)も、今年で8年目を迎えました。この間、私たちが試行錯誤しながら取り組んできたのは、他にはない存在価値を見出すことです。なぜなら新興の独立リーグであるBCリーグが、80年の歴史をもつNPBと同じことをしていては生き残ることはできないからです。では、BCリーグが目指すべきものとは――。それは、「世界一の育成リーグ」です。
 BCリーグでは対象を日本国内にとどめてはいません。海外にも積極的にアプローチし、国際的に開かれたリーグづくりを行なってきました。実際、各球団の外国人選手は、年々、増えてきています。また、オフシーズンにはコロンビアや豪州などのリーグに選手を派遣するなど、グローバル化がすすめられてきました。

 石川に“木田効果”あり

 そして昨年、BCリーグの国際色はさらに色濃くなりました。そのひとつが、かつてメジャーリーグで活躍した“オールド・ルーキー”の存在です。石川ミリオンスターズの木田優夫(巨人−オリックス−タイガース−オリックス−ドジャース−マリナーズ−ヤクルト−北海道日本ハム)、信濃グランセローズの大塚晶文(近鉄−中日−パドレス−レンジャーズ)、富山サンダーバーズ(当時)の大家友和(横浜−レッドソックス−エクスポズ−ナショナルズ−ブルワーズ−ブルージェイズ−インディアンス−横浜)です。

 彼ら3人に共通していたのは、「もうひと花咲かせたい」という強い気持ちをもって、BCリーグに入ってきたことです。そのため、野球に対する姿勢や、目標を見失わない強さは並々ならぬものがありました。そして、生き馬の目を抜くような厳しい競争社会を生き抜いてきた経験値がありました。それをBCリーグの選手たちは間近で見て、感じて、学ぶことができたのです。

 日米で輝かしい実績を積み上げてきた彼らの加入を喜んだのは、選手ばかりではありません。ファンにとっても“おらが町”で元メジャーリーガーを見ることができるというのは、魅力的なコンテンツに映ったはずです。それは観客動員数にも表れています。東日本大震災の影響もあって、2011年以来、観客動員数が減少していたBCリーグですが、昨年は3シーズンぶりに増加しました。全体では前年比2428人増の16万2240人、1試合平均では前年比22人増の732人。微増ではありますが、1人でも増やすことの大変さが身にしみてわかっている私たちにとっては、本当に嬉しい結果でした。

 なかでも前年比30%増の観客動員数となったのが、石川でした。最大の要因は、木田投手の加入だったと思います。周知の通り、木田投手は高校からドラフト1位で巨人に入団し、主戦として活躍。その後はメジャーリーグにも挑戦。再び日本球界に復帰し、日本ハムでは日本一にも貢献しました。40歳を過ぎてもなお高みを目指し、現役にこだわり続ける木田投手。その彼に石川の選手たちは大きな影響を受けたことは間違いありません。2年ぶりの日本一達成の要因のひとつは、木田投手の存在がありました。

 また、彼の野球への真摯な姿に魅力を感じたファンは多かったはずです。さらに木田投手は営業部長も兼任(2014年はGM兼任)していました。積極的にメディアに露出をしたり、試合でのイベントの司会進行役を務めたりするなど、さまざまなファンサービスにも努めました。球団とともに行なってきたその努力が、観客動員数アップにつながったのだと思います。

 初の公式国際試合

 観客動員数増加への取り組みとして、リーグがチャレンジしたのは、ハワイを本拠地とする米独立リーグ・パシフィックアソシエーションとの公式戦でした。同リーグとは12年にも交流戦を行ないましたが、それを昨年は公式戦のひとつに組み入れたのです。それは、リーグ初の公式国際試合でもありました。

 BCリーグの全6球団がそれぞれ同リーグに所属する2球団(イカイカマウイ、ハワイスターズ)と1試合ずつの計12試合を行ないました。対戦成績は8勝3敗1分。BCリーグのレベルの高さが証明された結果となりました。BCリーグのファンは普段見ることのできない海外リーグのプレーを間近で見ることができ、新鮮味が感じられたことでしょう。そして球団にとっては、国際間の交流がさらにすすみ、視野の広がりに寄与した体験となったはずです。

 しかし、反省点もありました。ひとつはほとんどの試合が平日だったことです。やはり、週末や祝日に試合を組み込むことができなかったことで、観たくても球場に足を運べなかったファンはたくさんいたに違いありません。そして、もうひとつはビジターのファンを動員することができなかったということです。遠いハワイからファンがひとりでも多く来てくれることを期待していたのですが、さすがに距離や費用的問題が高いハードルとなったようです。ただ、リーグとして新しいことに果敢にチャレンジしたという点は、大きな意味を持っています。ぜひ、今後に活かしていきたいと思っています。

 スポーツ運営に不可欠な2大要素

 前述したように、昨年、最も観客動員数の割合を増やしたのは、石川でした。その要因を分析してみると、現代のスポーツ運営の成功には2つの要素があることが改めて明確化されました。それは“パフォーマンス”と“プロモーション”です。そのどちらが欠けても、運営は成功しません。

 昨年の石川を見てみると、“プロモーション”の巧みさはずば抜けていました。例えば、四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスとのチャンピオンシップ、ホームゲームでの第1戦で用意されたプロモーションは次の通りです。
「親子ホームラン競争」(参加親子に野球用具メンテブック、優勝親子には選手のサイン色紙をプレゼント)
「バットスピンコンテスト」(参加者にオリジナルリストバンドをプレゼント)
「ファールボールプレゼント」
「スタメンサイン入り試合球プレゼント」
「木田優夫出版記念サイン会」
 試合前、試合中、試合後と、常に盛り上げるコンテンツが提供されたのです。

 もちろん、こうしたイベントだけではリピーターはつくれません。石川は、一番重要な野球においても、しっかりとファンに魅力を提供していました。ピッチャーを中心に石川らしい守り勝つ野球で、前期を制して早々とプレーオフ進出を決め、そのプレーオフでは福井ミラクルエレファンツ、新潟アルビレックスBCを下して2年ぶりのリーグ優勝。さらには四国アイランドリーグとの独立リーグチャンピオンシップをも制し、日本一に輝きました。“パフォーマンス”の質が高かったことは言うまでもありません。

 石川ファンは試合前から用意されたイベントを楽しむことで試合への期待感が助長され、いざ試合が始まれば、選手たちのプレーに魅了される。そして試合の合間や試合後にも、さらにイベントが待っている。球場に一歩足を踏み入れた瞬間から、球場を後にする瞬間まで、ファンのワクワク感は途切れないのです。これはディズニーランドなどの行楽施設とまったく同じ手法。昨年の石川は、今後のいいモデルケースとなることでしょう。

 BCリーグ独自の使命

 昨年11月にはエコスタジアム新潟においてボストン・レッドソックスのトライアウトが行なわれました。日本担当スカウトはもちろん、編成役員であるアラード・ベアード副社長まで来日してくれました。本気で日本の選手を求めていた何よりの証でしょう。トライアウトでは残念ながら合格者は出ませんでしたが、その後、富山サンダーバーズの大竹秀義投手がマイナーキャンプに招待され、大きなチャンスを得ました。結果的にはレッドソックスの一員になることはできませんでしたが、大竹投手にとっても、そしてBCリーグにとっても、大きな一歩を踏み出したことは言うまでもありません。

 これまでBCリーグからはNPBをはじめ、豪州、コロンビア、台湾のプロ野球リーグに選手を送り出してきました。そこに、新たにメジャーリーグ、マイナーリーグへの道が加わろうとしているのです。実現すれば、選手たちの活躍のフィールドがさらに広がります。将来的には海外FA権を取得するのに9年を要するNPBよりも、BCリーグがメジャーへの近道になる可能性もある。そうなれば、さらに大学や社会人を含め、他にはない独自の魅力をつくり出すことができます。

 NPBやメジャーリーグなど、選手として活躍するフィールドへ、そして引退を決めた選手には、社会人として生きていく場へと送り込む。それが他にはないBCリーグの使命だと信じています。8年目となる2014年も「ベースボール・チャレンジ・リーグ」の名に込められた信念のもと、さまざまなことにチャレンジしていきます。ぜひ、各球団が提供する“パフォーマンス”と“プロモーション”を楽しみに、球場に足を運んでもらいたいと思います。

村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。著書に『もしあなたがプロ野球を創れと言われたら――「昇進」より「夢」を選んだサラリーマン』(ベースボールマガジン社)がある。
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