26日現在、石川ミリオンスターズは9勝10敗3分。富山サンダーバーズとの優勝争いは、まさに一進一退の攻防戦といったところです。チーム状態は決して悪くはありません。しかし、先発ピッチャーが不足しており、なかなか勝ち星が計算できません。それでも期待しているピッチャーは、それなりに成績を残していますので、自分たちの野球を貫き、勝てる試合を確実にモノにしていけば、自ずと優勝が見えてくると思っています。
 ネイディング、中継ぎから先発へ

 先発不足の最大の要因は、これまで勝ち頭としてチームを牽引してきたデリク・ループ(米国)の退団にあることは否めません。白星が計算できるピッチャーでしたから、正直言って大きな痛手です。しかし、ループと入れ替わるようにしてワンダー・ペレス(ドミニカ)が加入しました。ペレスは190センチの長身ながら、アンダースロー。しかもサウスポーです。アンダースローとはいっても、日本人のそれとは違います。身体を沈み込ませることなく、立った状態のままで長い腕をしならせるのです。変化球の使い方も巧みで、相手バッターを見ながら投げています。24日の富山戦で初先発しましたが、8回3安打2失点という数字からもわかるように、バッターは一様に打ちづらそうにしていました。今後、先発の柱としての活躍を期待しています。

 もうひとり先発として台頭してきたのが、チャールズ・ネイディング(米国)です。彼はもともと、あまりコントロールがいい方ではなく、これといった変化球もありませんでした。しかし、スピードはありましたので、今後のことを考えると、中継ぎとして短いイニングで速い球をどんどん放らせた方がいいかなと思っていたのです。しかし、夏場になって調子を崩し始めました。1イニングに集中して投げることができなくなってきたのです。

 そこで調整も兼ねて、一度、長いイニングを投げさせようと先発に起用したのが、8月1日の富山戦でした。意外にも、5回を3安打1失点と好投してくれたのです。本来なら、すぐに中継ぎに戻すはずだったのですが、あまりにもいいピッチングだったので、翌週の7日にも先発させたところ、またも5回途中を1安打1失点と好投したのです。そうこうしているうちに、ループが退団することになり、そのまま先発でいくことにしました。

 実はネイディングは米国よりも軟らかい日本のマウンドにずっと苦労していました。もともとサイドスローだったのですが、どうも投げにくそうにしていたのです。そこでこれまでいろいろと修正する中で、どんどん腕が上がり、今ではスリークオーターとオーバースローの間ほどの高さで振り下ろすようになっています。腕が上がることによって、左足の踏み出しも安定し、コントロールが定まってきました。どのボールも、サイドスローの時とは、速さもキレも違います。特に指にしっかりとかかった時のボールは、BCリーグのバッターではバットに当てることも難しいほどの球威があります。とはいえ、まだまだムラがありますので、これからですね。

 長谷川、レベルアップの兆し

 さて、先発として期待していた長谷川潤(成立学園高−金沢学院大)ですが、春のキャンプから体力づくりや基礎練習を継続して行ない、練習でもいろいろと自分で考えてやっていました。しかし、なかなか勝利につながりませんでした。そこで木田優夫さんともいろいろと話し合う中で、リズムを変えてみようということになったのです。これまで上條は、左足を真上に上げて右足1本で立った状態から、左足を前に踏み出すというオーソドックスなやり方でした。もちろん、これでしっかりと体重移動をすることができるピッチャーはいいのですが、長谷川はまだ身体の芯の力ができていないため、うまくいっていなかったのです。そこで左足を上げた時に止めてから踏み出すのではなく、上げてから踏み出すまでの動きを一連の流れの中でやってみようということになったのです。

 木田さんからのアドバイスで参考にしたのが、斎藤雅樹さん(現・巨人1軍投手コーチ)。現役時代の動画を見て、マネをしてみたところ、これが長谷川にピタリと合ったようです。スピード自体は変わらないものの、明らかにバッターの手元でボールが伸びるようになり、さらにコントロールも良くなっています。8月6日の信濃グランセローズ戦では5安打完封勝ちを収めるなど、かたちとして安定してきたようですので、これからが楽しみですね。

 一方、南和彰(神港学園高−福井工業大−巨人−カルガリーパイパース)はというと、今シーズンはなかなか調子が上がってきません。いい日もあるのですが、悪い日との差が激しいのです。球速も、従来のような「お、速い」と思わせるような球はほとんど投げられていません。それでもコントロールの安定感は健在ですし、経験も豊富なピッチャーですから、重要な戦力のひとりであることには変わりありません。若いピッチャーが多いだけに、ベテランの南は貴重な存在なのです。

 ネイディングが先発に転向したこともあり、8月以降は不足していた中継ぎでの起用が増えています。それも毎日投げる体力があり、どんな場面でも粘るピッチングができるからです。しかし、今後はさらにスケジュールがタイトになってきますので、先発も視野に入れながら、南にはフル回転でチームを牽引していってもらいたいと思っています。

 また、貴重な左の中継ぎとして頑張ってくれているのが、上條優太(八千代東高)です。主に8回、木田さんの前を担っています。上條は真っ直ぐの勢いはますます出てきましたが、決め球となる変化球を持ち合わせていません。それでも力感のないゆったりとしたフォームから、しっかりとしたボールを投げてきますので、バッターにとってはフォームと実際のボールとにギャップを感じ、タイミングがとりづらい。だからこそ、真っ直ぐとわかってはいても、バッターは空振りしてしまうのです。これに加えて決め球となる変化球があれば、ピッチングの幅が広がるはずです。現在はその変化球の精度を高めることを課題として取り組んでいます。

 打線上昇のキーマンは岡下

 打線はというと、柱は島袋涼平(おかやま山陽高−ブレーブス−富山))、ウェリントン・ドテル(ドミニカ)。現在、島袋は打率3割3分8厘(リーグ5位)、51打点(同4位)。ドテルは打率3割3分5厘(同6位)、23盗塁(同3位)と好成績を残しています。前期は足のあるドテルを1番に起用してチャンスメーカーとしての役割をこなしてもらっていましたが、後期に入ってからは谷口貴之(遊学館高−06BULLS)、板橋秀憲(佐野日大高−日本大−FedEx)の出塁率が高まり、1、2番が固定できるようになったことで、ドテルを本来の中軸に戻しました。相手ピッチャーにとっては一番警戒しなければならない島袋の後に、当たれば強い打球を飛ばすドテルがいますから、島袋と勝負せざるを得ないという状況をつくれていることが大きいですね。

 今後に期待しているのが、岡下大将(樟南高−大阪−愛媛マンダリンパイレーツ−06BULLS)です。ドテルを除く上位打線は左打者ばかりですから、右打者の岡下の調子が上がってくると、打線として厚みが増します。もともとパンチ力があり、足も速い岡下ですが、課題は守備。エラーの数は2ケタにのぼっています。そこで守備範囲の広いショートからサードへと転向させたところ、エラーがなくなりました。これで守備に自信を持てるようになれば、気持ちが楽になり、バッティングを含めていろいろな面でレベルアップしてくれるのではないかと期待しています。

 さて、先日報道にもありましたが、木田さんが今シーズン限りで現役を引退することを表明しました。相当な覚悟をもっての決断だったことでしょう。いずれにしても、石川ミリオンスターズが木田さんの最後の場所となるわけです。独立リーグチャンピオンシップでの優勝の瞬間、マウンドには木田さんが立っている――。そんな最高のシーンで最後を飾ることができるといいなと思っています。木田さんのためだけではありませんが、そのためにもまずは後期で優勝し、プレーオフに進出する権利を得られるよう、頑張ります。最後まで、応援よろしくお願いします。

森慎二(もり・しんじ)プロフィール>:石川ミリオンスターズ監督
1974年9月12日、山口県出身、岩国工高卒業後、新日鉄光、新日鉄君津を経て、1997年にドラフト2位で西武に入団。途中、先発からリリーバーに転向し、2000年にはクローザーとして23セーブを挙げる。貴重なセットアッパーとしてチームを支えた02、03年には最優秀中継ぎ投手に輝いた。05年オフ、ポスティングシステムによりタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に移籍。2年間のメジャー契約を結ぶも、オープン戦初登板で右肩を脱臼。07年、球団から契約を解除されたものの、復帰を目指してリハビリを続けてきた。09年より石川ミリオンスターズのプレーイングコーチに就任。10年からは金森栄治前監督の後を引き継ぎ、2代目監督としてチームの指揮を執っている。
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