監督として初めてのシーズンは、球団としては5年ぶりとなるリーグ制覇、そして独立リーグチャンピオンシップ進出を果たしました。しかし、改めてシーズンを振り返ると、いろいろなことが手さぐりだったなと感じています。指揮官として、選手たちとどう接するのか、どんな戦略を立てるのか、さらには試合中にゲーム全体の流れを読むということも、初めての経験でした。結果的にチームは勝ち越したものの、良かったこともあれば、反省することもあり、とても勉強になったシーズンとなりました。
 強力打線の裏にあったエースの好投

 プレーオフを振り返ると、新潟アルビレックスBCとの上信越地区チャンピオンシップ、そして石川ミリオンスターズとのリーグチャンピオンシップは、いずれも2勝をして王手をかけた後に連敗を喫し、逆王手をかけられたところからの優勝と、厳しい戦いが続きました。それでも最後の最後、大事なところで勝つことができたのは、今シーズンの強さが表れていたと思います。

 エース格だったロバート・ザラテや、フランシスコ・カラバイヨ(ともにベネズエラ)をケガで欠き、明らかに戦力ダウンした後期、1勝7敗4分と大きく負け越した新潟との地区チャンピオンシップは、新潟が優位な状況にあったことは間違いありません。しかし、私の中では負け越していることを気にはしていませんでした。というのも、後期の優勝の可能性がなくなった時点で、すぐにプレーオフに、頭も気持ちも切り替えていたからです。チームにとってはプレーオフでどう戦うかが最重要課題であり、とにかく投打の柱であるザラテとカラバイヨの調子を取り戻すことが先決だったのです。

 新潟との地区チャンピオンシップは2勝2敗1分けと、史上初の第6戦までもつれこむ大接戦となりましたが、最後に勝ち切ることができた、そのキーマンはやはりザラテにあったと思います。特に最後の第6戦は、彼の好投がチームに勝利を導いてくれました。その試合、5回までわずか1安打と今季最優秀防御率に輝いた田村勇磨投手に抑えられ、完全に新潟ペースでした。しかし、チームに焦りはありませんでした。確かに彼はいいピッチャーですから、打ち崩すのは容易ではないとは予想していました。

 とはいえ、中3日での登板でしたから、「とにかく球数を投げさせよう。そうすれば、必ずチャンスは訪れる」という戦略をたてていました。案の定、100球に近づいたあたりから、ボールが抜けることが多くなり、それを群馬の打線が見逃さなかったのです。しかし、打線が逆転できたのも、またこうした戦略をたてることができたのも、すべてはザラテが最少失点に抑えるという前提にありました。そして、ザラテは期待通りに好投してくれ、計算通りの展開にもっていくことができたのです。

 チャンピオンシップでの反省

 そのザラテを、徳島インディゴソックスとの独立リーグチャンピオンシップでも初戦から投げさせたかったのですが、新潟、石川とのプレーオフで計3試合に登板していることもあり、疲労を考えると無理をさせることはできませんでした。そうすると、やはり先発投手の駒不足という状態に陥り、徳島戦に大きな影響を与えたことは否めません。指揮官としては、やはりもっと早めに勝負を決めていれば、という反省の気持ちもあります。

 結果的に、徳島には1勝することしかできませんでしたが、実力が劣っているとは思いませんでした。徳島はイメージ通り、投手力に優れたチームでした。特に、プロ野球ドラフトに指名された入野貴大投手の球威や変化球のキレは、BCリーグにはいないレベルのもので、とても手こずりました。しかし、全体的に見ると個人個人の力は、群馬の方が上だった印象があります。では、何が徳島は上回っていたのか。それはチーム力だったと感じています。

 徳島は昨年、石川に1勝しかできずに涙をのみました。その悔しい思いが強く残っていたこともあったのでしょう。チームがひとつになっている感じを受けました。翻って群馬の方は、個性の強い選手が多く、それ故にもうひとつ一枚岩になれなかったところがあったのではないかと思います。

 5試合の中で、私が一番反省している試合といえば、第2戦です。7回表に6点を奪って3点差を一気にひっくり返したのですが、その裏に追いつかれて、結局は降雨コールドでドローに終わりました。これは、私の采配ミスだったと思っています。7回表にカラバイヨの3ランなどで逆転したその裏、1死後に2ランを打たれて1点差に詰められると、私はピッチャーをクローザーのレボ・ロメロ(ベネズエラ)に代えました。

 すると、ロメロがマウンドが荒れていることを気にして「整備して欲しい」と依頼してきたのです。そこでグラウンド整備が入り、試合は一時中断しました。今にして考えれば、この時の整備の時間がなければ、試合の流れは変わっていたかもしれません。もう少しロメロとコミュニケーションをしっかりととって、整備せずに投げさせることもできたと思うのです。

 そして、最終戦となった第5戦も反省しきりの試合となりました。同点で迎えた最終回に守りのエラーで先頭打者を出し、四球でランナーをためた後、2本のタイムリーを打たれて3失点。シーズン最後の試合を自分たちのミスで終えてしまったことは非常に残念でなりませんでした。しかし、選手たちも守備がいかに大事かを身をもって知ることができた、貴重な試合となったことと思います。これを来季にいかさない手はありません。

 カギ握るオフのトレーニング

 さて、来季も監督を続投することが決定しました。もちろん、今季果たすことができなかった球団初の独立リーグ制覇を狙います。そのためには、やはり守備の強化が不可欠であることは間違いありません。私は投手出身ということもあり、もともと基本は「守りを中心とした野球」を目指しており、今もその考えはまったく変わりありません。前述したように、今季は監督1年目で、投手以外の守備や走塁についてはわからないこともあり、手さぐりでやっている面も少なくありませんでした。

 しかし、その経験をいかし、来季はしっかりと成長したチームの姿を見せられるように、オフから守備力アップのための練習を積んでいきたいと思っています。まずは来春のキャンプまでに筋力、体力ともにひと回り大きくし、キャンプがスタートする際には全員がしっかりと動けるような体制で臨みたいと思っています。

 とはいえ、アルバイトをしながらの選手は練習時間が限られており、また私がすべてを把握することはできません。基本的には本人次第ということになります。いかに選手自身が、自分の目標がどこにあるのか見据え、しっかりとしたビジョンをもってオフを過ごすことができるかにかかっています。オフにトレーニングをしてきたかどうかは、一目でわかります。キャンプで集合した時、「よし、しっかりとやってきたな」と手応えを感じさせてくれることを期待しています。

川尻哲郎(かわじり・てつろう)>:群馬ダイヤモンドペガサス監督
1969年1月5日、東京都生まれ。日大二高、亜細亜大、日産自動車を経て、94年にドラフト4位で阪神に入団。2年目にプロ初勝利を挙げると、翌年には自己最多の13勝(9敗)をマーク。98年5月26日の中日戦で史上66人目となるノーヒットノーランを達成し、同年オールスターゲームにも出場した。2004年に近鉄に移籍し、翌年には楽天へ。05年シーズン限りで現役を引退した。13年より群馬の投手コーチを務め、14年より監督として指揮を執っている。
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