<突然ですが、あまり良くないニュースがございます。自分の体に悪性リンパ腫が見つかり、来年から闘病生活を余儀なくされることになりました>。元プロレスラー垣原賢人からメールが入ったのは、街がにぎわう昨年のクリスマスのことだ。折り返し電話を入れ、病状を聞いた。
 本人によると、数週間前から鼠径部や脇のしこりが気になり出し、近くの病院で診察を受けると、にわかに医師の顔色がくもったという。「大学病院に紹介状を書くので、すぐに行きなさいと。その時点で嫌な予感がしていました」

 診断の結果は「悪性リンパ腫」。いわば血液のガンだ。大学病院の医師からは「完治は難しい」と告げられた。「再発することもある。抗ガン剤も効きにくい。最終的には骨髄移植も覚悟してください」。悪性リンパ腫の中でも、垣原が患ったのは「濾胞性リンパ腫」という性質の悪い種類で、本人いわく「プロレスでいえば、カウント2.9の状態」。この日からガンとの壮絶な闘いが始まった。

「自分なりに調べた結果、これまでの食事に原因があったのでは、という結論に至りました。リングに上がっている頃は筋肉のことを考えて肉ばかり食べていた。過度の動物性たんぱく質や塩、砂糖、そして油の摂取。きっとミネラルやビタミンが細胞に、しっかりと行き届いていなかったのだと思うんです」。以来、動物性のたんぱく質は、全く摂取していない。「食事は野菜中心。しかも味付けなし。塩分のある味噌汁もダメ。こんな生活が4カ月も続いています」。外出もままならない。抗ガン剤治療を受けると、免疫力が落ちるため、人混みは避けなければならない。「このような状況でカゼをもらうわけにはいきませんから……」

 垣原は17歳で新生UWFに入門後、UWFインターナショナル、キングダム、全日本プロレス、ノア、新日本プロレスと多くの団体を渡り歩いてきた。同郷でともにクワガタ・マニアということもあって意気投合し、私が主宰するサイトにもコラムを寄せてもらっている。なかなかの名文家でもある。

 垣原を慕う文化人は多く、将棋の郷田真隆新王将もそのひとり。骨髄移植を見据え、5月19日の就位祝賀パーティーでは募金を呼びかけるという。カウント2.9での闘いを続ける42歳に支援の手を差し延べようと、タッグロープの絆が強まりつつある。

<この原稿は15年4月22日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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