参入1年目はここまで3勝3敗。ピンチを背負い、攻め込まれる場面も多い中、勝たせてもらっている試合が多い印象です。選手たちの「勝ちたい」という思いがよく出ていることが、まずまずの成績につながっているのではないでしょうか。
 ピッチャーはそこそこ投げられる頭数が揃っており、ゲームをつくってくれそうな雰囲気が出てきています。信濃から移籍した篠田朗樹は武蔵では先発の軸になっています。彼は信濃時代、抑えで2年連続セーブ王のタイトルを獲りながら、NPBから声はかかりませんでした。ドラフト指名をもう一度目指したいなら、同じことをやっていても変わりません。本人とこちらの考えが一致し、転向が決まりました。

 結果は出しているのですから、次に求められるのは内容です。さらに高みを目指すには、原点であるストレートを見直すことでしょう。本人も課題は自覚しているでしょうから、先発で登板を重ねる中で、今までとは違った姿をスカウトに見せてほしいと感じています。

 また先発2番手の中村一仁(藤嶺藤沢高−帝京大−旭鋼管工業)は、球筋が良く、変化球も一通り投げられます。社会人では軟式に取り組み、1年間リーグ戦を戦ったことがないため、現状は100球をメドに週1回の先発を考えています。アイランドリーグ愛媛の監督時代もそうでしたが、若手や経験不足のピッチャーは徐々に球数を伸ばしていくことが大事です。1年間ローテを守りながら、最終的には120〜130球で完投できる力をつけてほしいと望んでいます。

 この2人に加え、先発として考えているのは戸谷亮太(所沢北高−埼玉大)と韓国系米国人のベック・チャスン。戸谷は全国的には無名で、体力、技術はこれからの選手ですが、おもしろい変化球を持っています。それはスライダー。軌道が独特でチェンジアップと見分けがつきません。これでチェンジアップを習得すれば、それだけで、ごはんが食べられるピッチャーになれるでしょう。

 勝ちパターンの継投は福井からやってきた矢島陽平、元アスレチックスのドミニカ人、ファウティノ・デロス・サントス、サイド右腕の新人・三ツ間卓也。この中で最も未知数の三ツ間を抑えにしました。その理由は僕の野球観として最終回よりも、7、8回の方が勝負どころになる可能性が高いから。もちろん、最後を締めくくる重要なポジションを任せることで、三ツ間の成長を促したいとの思惑もあります。

 三ツ間は、まだ体幹が弱い部分があるものの、うまくハマった時のストレートは魅力十分です。うまくいけば、“BCリーグの又吉克樹(中日)”と呼ばれる存在になるかもしれません。そして、もうひとつ抑え向きだと感じるのは精神面。おそらく、BCリーグの又吉という表現は本人は気に入らないのではないでしょうか。「オレはオレのスタイルで勝負する」という向こう気の強さも買っています。

 野手はライド・ロドリゲス(キューバ)が4番に座り、打線の軸ができました。ロドリゲスにとって4番は、これまでのキャリアでは初とか。それでも中軸に据えたのは、チームと本人の両方にとってプラスと考えたからです。ロドリゲスはBCリーグで日本の野球を勉強し、近い将来はNPB入りも視野に入れています。それなら、4番で結果を残した方が編成のアピールになるでしょう。また、守備も走塁も一生懸命プレーするタイプのため、彼が中心になることでチームにも好影響を及ぼすはずです。

 また新人で楽しみなのはショートの中川翔(神港学園−大阪学院大−姫路Go TO WORLD)。本職は外野手ですが、小柄ながらバネがあるところを見込んで、内野にチャレンジさせています。165センチ65キロの体型はアイランドリーグから埼玉西武に入団した水口大地を見ているようです。彼も5年かかってNPB入りを果たしました。独立リーグは1年勝負ですが、長いスパンでステップアップすれば、モノになる素材だと感じました。

 もちろん、現状はまだまだ。他にもセカンドを守れる選手がいる中、細かいところは目をつぶって試合に出している状態です。本人もそのことは重々承知しているでしょう。試合に出ることで責任感が芽生え、顔つきが変わりました。この調子で日々の取り組みも変わっていけば、早い段階で化けるかもしれません。

 新規参入チームだけにチームづくりは始まったばかりです。アイランドリーグで愛媛の監督をしていた頃と比べると、練習量も不足しています。しかし、恵まれない環境の分、創意工夫してスキルアップしようと高い意識を持っている選手もいます。

 現段階で星勘定をしたり、対戦相手を見て戦う余裕はありません。選手たちに要求しているのは自分たちの足元を見つめて野球をすること。プロとして最低限の基本以上のプレーのは求めていません。

 やることをやって打たれたり、結果が出ないのは仕方ありません。ただ、しょうもないミスはしない。余計なチャンスや得点を与えない。これらを目標に1戦1戦戦っていくつもりです。

 ファンの皆さんの期待に十分応えられるかどうかわかりませんが、開幕から選手たちが見せてくれている「勝ちたい」という気持ちを失うことなく、なんとか粘って白星を重ねたいと思っています。引き続き、温かい応援をお願いします。

星野おさむ(ほしの・おさむ)>:武蔵ヒートベアーズ監督
1970年5月4日、埼玉県出身。埼玉県立福岡高を経て、89年にドラフト外で阪神に入団。内野のユーティリティープレーヤーとして、93年に1軍デビューを果たすと、97年には117試合に出場。翌年には開幕スタメンで起用される。02年にテストを経て近鉄へ。04年に近鉄球団が合併で消滅する際には、本拠地最終戦でサヨナラ打を放つ。05年に分配ドラフトで楽天に移籍し、同年限りで引退。06年からは2軍守備走塁コーチ、2軍打撃コーチなどを務めた。11年よりアイランドリーグ愛媛の監督に就任。2年目の12年後期には球団4年ぶりとなる優勝に導いた。13年12月より、武蔵ヒートベアーズの創設に携わり、初代監督を務める。
◎バックナンバーはこちらから