8勝4敗1分と開幕ダッシュに成功した4月から一転、5月は6連敗もあり、首位から陥落してしまいました。失速の原因は貧打。高田泰輔ザック・コルビー櫟浦大亮ら主力が軒並み不調でチーム打率.212はリーグ最下位です。
 選手、指導者として長く野球に携わってきましたが、こんなに打線がつながらないのは僕も初めて。打順を組み替えたり、いろいろ手を打ってみたものの、なかなか打開策が見つかりません。結果が出ないことで、どうしても全員が消極的になっているように映ります。どうすれば本来の状態に戻せるのか、指導力不足を痛感しています。

 唯一、バットが振れていた新人の高井悠生も長いシーズンを戦うのは初めての経験です。最初は怖いもの知らずでも、相手から研究されると余計なことを考え始め、壁に当たりかけています。これは誰もが乗り越えなくてはいけない試練です。練習は頑張るタイプですから、その中で突破する方法を見つけてほしいと願っています。

 打線のテコ入れに補強したドミニカ共和国出身のファン・ヘイドーンは、195センチ、109キロと体格は長距離砲そのもの。来日から約1カ月が経ち、日本のストライクゾーンや配球にも慣れてきています。1試合に1本はコンスタントにヒットを打ってくれますから、彼の前にランナーを溜める展開に持ち込みたいところです。

 ここにきて、3番から1番に配置転換した高田が復調の兆しをみせています。正直、彼が1番だと、クリーンアップが手薄になるのですが、高田自身はリードオフマンの方が合っているのかもしれません。開幕から結果を出せなかった分、打って打って打線を牽引してほしいですね。

 1試合平均の得点がわずか3点でも、勝率5割をキープできているのは、投手陣の頑張りに尽きます。とりわけ左腕の正田樹は既に3度の完封勝利。現在48イニング連続無失点中です。

 彼は愛媛に来て投球術にさらに磨きがかかっています。バッターが打ち気がないと見れば、簡単にストライクを取ってカウントを稼ぎ、打ってくると見れば、際どいコースを突いてくる。ストレートとシンカーでうまく緩急もつけるので、簡単には連打を浴びません。走者を背負ってからのピッチングも巧みで、格の違いをみせていると言っていいでしょう。

 このピッチングを可能にしているのは、下半身の粘りです。タメをしっかりつくって投げるため、球離れが遅く、ギリギリまでバッターを見て投げられます。おそらくバッターが振りに来たのを見極めて、途中でコースなどを微妙に変えているのではないでしょうか。

 これは僕の現役時代、江夏豊さんがやってきたテクニックです。江夏さんも球持ちが良く、駆け出しだった僕は完全におちょくられていました(笑)。正田はこれだけのピッチングができれば、NPBでも十分、通用するでしょう。年齢を差し引いても、貴重な左腕として戦力になるはずです。

 新人ではドラフト1位の阿部直晃が中継ぎで頑張っています。彼の持ち味はマウンド度胸の良さ。投げっぷりは素晴らしい反面、肝心なところで「えいや!」とストライクを簡単に取りに行きすぎるきらいがあります。ここは正田のようにバッターを見ながら投げ分ける術を体得してほしいものです。球速はありますから、経験を積んでピッチングがもう一段階上がれば、NPBのスカウトからも注目してもらえるでしょう。

 現状は5月に入って勝ち星を伸ばした香川が独走し、優勝マジックも点灯しています。首位チームとの違いは、やはり打線です。投手力に差はないものの、香川は打線が積極的に仕掛け、ここぞで1本が出ます。

 せっかく4月をいいかたちでスタートしたのですから、このまま簡単に引き下がるわけにはいきません。直接対決の残り3試合を全勝して食らいつき、リーグ戦をおもしろくしたいと考えています。

 そのためには、一にも二にも打線の爆発です。チームに流れを呼び込む起爆剤が現れてくれることが逆転優勝の条件になるでしょう。僕も選手の状態を見極めながら、何とか打線に火をつけたいと苦心しています。

弓岡敬二郎(ゆみおか・けいじろう)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1958年6月28日、兵庫県出身。東洋大姫路高、新日鐵広畑を経て、81年にドラフト3位で阪急(現オリックス)に入団。1年目からショートのレギュラーとなり、全試合出場を果たすと、84年には初の打率3割を記録してリーグ優勝に貢献。ベストナインとダイヤモンドグラブ賞を獲得する。87年にもゴールデングラブ賞に輝き、91年限りで引退。その後もオリックス一筋で内野守備走塁コーチ、2軍監督、2軍チーフコーチ、スカウトなどを歴任。13年をもって33年間在籍したチームを退団し、愛媛の監督に就任した。現役時代の通算成績は1152試合、807安打、打率.257、37本塁打、273打点、132盗塁、240犠打。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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