24日、南アフリカワールドカップグループリーグF最終節がヨハネスブルグ・エリスパークで行われ、スロバキア(FIFAランキング34位)とイタリア(同5位)が対戦した。前半にスロバキアが先制すると、前回大会王者のイタリアは意地を見せるべく、ハーフタイムで2人を交代する積極策に出る。さらに10分には故障明けのMFアンドレア・ピルロ(ACミラン)を投入し流れを引き寄せたかに思われた。しかし次のゴールを奪ったのもスロバキアだった。コーナーキックからの攻撃でFWロベルト・ビテク(アンカラギュジュ)がこの日2点目をあげる。その後、イタリアは1点を返し猛攻に出るが、試合終了間際にスロバキアが1点を加点し王者に引導を渡した。ロスタイムに失点したものの3対2で試合終了、スロバキアがグループ2位に入り決勝トーナメントへ駒を進めた。一方、連覇を狙ったイタリアは1勝もあげることなくグループ最下位で南アフリカを去ることとなった。

 前回ファイナリスト2カ国がグループリーグ敗退(ヨハネスブルグ・エリスパーク)
スロバキア 3−2 イタリア
【得点】
[ス] ロベルト・ビテク(25分、75分)、カミル・コプネク(89分)
[イ] アントニオ・ディ・ナターレ(81分)、ファビオ・クアリアレッラ(90+2分)

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 今大会は混戦のグループが数多く存在するが、このグループもその中に入る。シード国イタリアがここまで2引き分けと結果を残せていない。さらにグループ内で格下と考えられていたニュージーランドも予想以上の健闘を見せ、イタリアを同じく2引き分け。どの国にも決勝トーナメント進出の可能性が残る最終節となった。

 1敗1分けでこの日を迎えたスロバキアはビテクをワントップに据える布陣で試合に臨む。トップ下のMFマレク・ハムシク(ナポリ)やサイドMFミロスタフ・ストフ(トゥベンテ)ら若く活きのいい選手が攻撃を牽引し、王者に挑む。

 一方のイタリアは中盤でジェンネーロ・ガットゥーゾ(ACミラン)が今大会初先発。覇気のないアズーリにファイターが戻ってきて、どのようにチームが変わるのか。また、グループリーグ2試合とも流れの中での得点がないため、これまで先発してきたFWアルベルト・ジラルディーノ(フィオレンティーナ)を外し、ワントップにFWヴィンチェンツォ・ヤクインタ(ユベントス)、左サイドに09−10シーズンセリエA得点王MFアントニオ・ディ・ナターレ(ウディネーゼ)を起用した。

 試合は序盤からスロバキアペースで進む。細かいパスでボールを繋ぎ、サイド攻撃で活路を見出していく。球際でも強さもみせ、ルーズボールをことごとく拾い主導権を握った。対するイタリアはDFラインの裏を取られることが多く、緩いチェックを繰り返す。6分にはハムシクが左からのパスを受け、ゴール正面からシュート。これはしっかりとヒットしなかったものの、イタリア守備陣はバイタルエリアで彼をフリーにしており、全体的に動きの鈍さが目立った。

 すると、イタリアのまずいプレーから先制点が生まれる。25分、イタリアMFダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)がPA付近で不用意な横パスを出す。これをMFユライ・クチュカ(スパルタ・プラハ)がカットし、ビテクへスルーパス。ビテクがバランスを崩し倒れこみながら右足でシュートを放つと、ボールはゴール右隅へ吸い込まれていく。押し気味に試合を進めたスロバキアが相手のミスをきっちりと得点に繋げリードを奪った。

 イタリアの攻撃はトップのヤクインタの周りをディ・ナターレが動き局面を打開しようと試みるものの、自由にボールを操るスペースはなく、なかなかチャンスが作れない。ヤクインタにくさびのパスが入ることもなく、攻めの形が単調だった。前半はシュートを6本放ったものの枠内に行ったのは1本のみ。苦しまぎれのシュートや遠目からのものばかり目立った。

 後半に入ると攻めあぐねていたイタリアが先に動く。マルチェロ・リッピ監督は動きの重いガットゥーゾに替えFWファビオ・クアリアレッラ(ナポリ)を入れ、ヤクインタ、ディ・ナターレの2トップにフォーメーションを変更する。クアリアレッラは彼らの下に入りゴールを狙う姿勢を見せた。さらにその10分後にはふくらはぎに故障を抱えていたピルロを投入する。変幻自在にパスを操る司令塔がピッチに立つことで、イタリアは攻撃にリズムが出てくる。17分には左サイドからのパスを受けたディ・ナターレがゴール正面PA少し外から右足でカーブをかけゴールを狙う。これはGKヤン・ムハ(レギア・ワルシャワ)がセーブするが、徐々にスロバキアゴールに迫っていく。

 このプレーで得たコーナーキックから決定的なチャンスが生まれる。右サイドからのボールを一旦クリアされるものの、それを拾ったMFシモーネ・ペペ(ローマ)がファーサイドへクロスをあげる。クリアに出たGKがボールに触れずフリーになっていたクアリアレッラの足元へ。強烈なシュートを放ったが、ゴールライン上でDFマルティン・シュクルテル(リバプール)がトラップしクリア。まさに紙一重のプレーでイタリアはゴールを奪えない。

 守備でのビッグプレーがあった後にはゴールのチャンスが巡ってくるものだ。29分、右サイドからのコーナーキック。一旦はDFにクリアされるが、クリアボールを受けたハムシクがダイレクトでニアサイドにグラウンダーのボールを入れる。そこへ反応したのはビテクだ。ニアの狭いエリアにシュートを蹴りこむとゴールネットを激しく揺らした。残り15分での2点リードはセーフティーかと思われたが、ここから試合はスリリングな展開を見せる。

 攻めるしかなくなったイタリアはピルロにボールを集め、攻撃を再構築していく。現代最高のパサーは周りの生かし方を知っている。ディ・ナターレやヤクインタ、ペペへと次々にパスを供給しスロバキアのDFラインをどんどんと下げさせていく。すると36分、PA外にポカリと空いたスペースを使ったのはクアリアレッラだ。右サイドからカットインし、ヤクインタとのワンツーでゴール前へ侵入しシュート。GKがセーブを見せたが、ファーに流れたこぼれ球をディ・ナターレが難なく流し込んで1点差となる。このゴールで再びイタリアが活気づいた。負ければ敗退が決まるアズーリは前がかりとなってスロバキア陣に人を割いていく。

 しかし次のゴールを奪ったのは、DFラインの裏を狙い続けたスロバキアだった。44分、右サイドからのスローインの場面。中盤に位置していた途中出場のカミル・コプネク(スパルタク・トルナバ)が一気にゴール前へと上がっていく。不意を突かれたイタリアDFは誰も彼をマークができない。スローインされたボールにはクリアに入ったGKフェデリコ・マルケッティの手よりも、走りこんだコプネクの足が先に触れた。シュートはループ気味にイタリアゴールへと向かい、やさしくゴールネットを揺らした。前回王者に引導を渡す3点目を入れたスロバキアが勝利を確信した瞬間だった。

 ロスタイムの間に、クアリアレッラが見事なループシュートを決めイタリアが再び1点差に詰め寄ったが、それ以上ゴールが生まれることはなく3対2で試合終了。スロバキアはチェコとの分離独立後、初めてのグループリーグ突破を果たした。同時進行で行なわれていたパラグアイ−ニュージーランド戦がスコアレスドローに終わったため、2位での決勝トーナメント進出だ。ハムシク、ストフら若いタレントが最高の舞台で輝きを放ち、見事なジャイアントキリングを成功させた。決勝トーナメントではオランダとの対戦が濃厚だが、彼らのスタイルが攻撃的な相手にどこまで通用するのか。次戦はみどころの多い試合になりそうだ。

 敗れたイタリアはまさかの白星なしで今大会を去ることになった。アズーリにとって、やはりピルロの欠場が痛かった。3戦目で彼がピッチに入ってからのイタリアは全く別のチームになっていた。守備の要であるGKジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)も初戦で負傷し残り2試合を欠場している。前回大会から主要メンバーに変化がなく高齢化が叫ばれていたチームは、若さ溢れるチームに屈した。イタリアのグループリーグ敗退は実に36年ぶり。この失態から立ち直るためには、指揮官も含め世代交代が不可欠だ。クラブレベルで考えても、欧州CLを制したインテルが決勝の舞台に立った際、先発メンバーにイタリア人選手は1人もいなかった。この事実を見てもアズーリの人材不足は甚だしい。4年後はそう遠い未来の話ではない。早急に打開策を講じることがリーグ、クラブ、サッカー協会に求められるだろう。

(大山暁生)

【スロバキア】
GK
ムハ
DF
シュクルテル
ドゥリツァ
ペカリク
ザバフニク
MF
シュトルバ
→コプネク(87分)
クチュカ
ストフ
イェンドリシュク
→ペトラシュ(90+4分)
ハムシク
FW
ビテク
→セスタク(90+2分)

【イタリア】
GK
マルケッティ
DF
カンナバーロ
キエッリーニ
クリーシト
→マッジョ(46分)
ザンブロッタ
MF
デ・ロッシ
モントリーボ
→ピルロ(56分)
ガットゥーゾ
→クアリアレッラ(46分)
ペペ
ディ・ナターレ
FW
ヤクインタ