二宮: 日本では2020年東京五輪・パラリンピックの会場問題が大きなニュースになっています。新国立競技場の建設については、サッカー協会が8万人必要だと言っていますよね。これに対して、「人口減少社会になんで、そんな大きなハコモノが必要か?」という意見もあります。セルジオさんは、どうお考えですか?
セルジオ: W杯のために、新たにスタジアムをつくる必要性はないと思う。開催も決まってないし、そもそもJリーグで8万人が入るかという問題もあるよね。まずはJリーグで入るようにしてからでしょう。「浦和レッズが入っているじゃないか」というのは違う。あとはどこが入っているの。最近は新潟も大分も入らない。リーグで8万人収容よりも小さいスタジアムですら埋まらないのにさ、つくってどうするの。まずは集客をどうするのかという宿題を解決してからじゃないかな。

二宮: 足元を見つめ直せと?
セルジオ: 8万人収容が必要であれば、新横浜でやればいい。8万人でなくとも埼玉で十分でしょ。今のJリーグのキャスティングでは、残念ながら埋まらないよね。クラブW杯も毎年日本でやるわけじゃない。2020年からは高齢化社会が一方的に進んで、子どもは減ってくると言われている。人口が減るのにさ、そういう働きかけこそやるべきでしょ。お年寄りもサッカーを見に来るような企画がない。W杯は、その期間儲かるからやろうとか、それはいかがなものかなと思うよ。

二宮: なるほど。新国立の維持コストだけで向こう50年間で1046億円もかかると見られています。
セルジオ: AFCチャンピオンズリーグでは客が入らないでしょ。だから、それぞれが自分たちの管轄じゃないという意識があるんじゃないのかな。やはりJリーグはある程度、観客動員を要求すべきだよ。たとえばドイツは自国開催のW杯が終わっても、大きなスタジアムが全部埋まっちゃうんだから。

二宮: ドイツはドイツ人や下部組織出身の枠をつくるなど国内改革に成功しましたね。
セルジオ: 一方でJリーグはW杯終わってから、それが出来ていないんですよ。もう1回民放が、中継するために競争するようなキャスティングにしなくちゃ。代表戦は民放が競争しているよ。リーグは年間予算をもらったらそれで満足しているんだよ。

 子どもの体力不足の原因

二宮: 昨今では子どもの体力不足が叫ばれています。その一因として遊べる場所が少なくなってきた。
セルジオ: 僕は日本に来て42年だけど、日本はずいぶん変わったね。昔はスポーツジムもほとんどなかった。考えてみたらね、生活がジムだったのよ。要は便利じゃないのね。エレベーターやエスカレーターが全然無い街もあったじゃない。

二宮: 確かにそうですね。
セルジオ: 4階建までは、エレベーターをつくらなかった。階段を昇って降りるしかないよね。文句言わないでさ。それが今は東京の高層マンションに引っ越ししたらさ。3階でも毎日エレベーター使うの。それで足腰が弱ってきている。僕言うのよ、たとえば4階までは、公団のアパートと思って階段を使う。そうすれば、絶対に足腰は強くなる。電力も節約することができるじゃない。

二宮: マンションによっては非常口も全部ふさがれていたりする。階段を使いたくても使えません。
セルジオ: 我々は考える動物だから、便利な方に絶対つられていくよね。この間も大阪のマンションに帰ったら、知っている奥さんたちがずっと話をしていたから、「何かあったのですか?」と聞いたの。「あと10分でエレベーターが動くから待っているんです」と言われたよ(笑)。習慣って怖いよね。子どもがスイミングスクール行くのにも、バスで送り迎えだもの。

二宮: その分、走った方が運動になる(笑)
セルジオ: これからJリーガーになっていく子どもとかが、親に送り迎えされて、グランドのすぐ近くまで車でおろしてもらう。やっぱり生活の中で鍛えられる。なぜアフリカがマラソンが強いかというと、学校の片道が数十キロもある。42.5キロあるところもあるんだってさ。だから、往復したらフルマラソン2回も走っていることになるんだよ。

二宮: しかも高地ですからね。
セルジオ: それも裸足。だから環境ってすごく大事だね。今、中国で太っている子どもが増えてきたのは、自転車を漕いでいた国民が、車に乗るようになったからだよ。もう、生活が変わったんだ。だからね、いろいろなところに原因はある。もっと幅広く見ないといけない。あんまり昔のことを言ったら「古い」とかみんな言うんだけど、昔で成功したものは変える必要性がないと思うね。

 おひとりさま文化が団結力を損なう?

二宮: そば焼酎「雲海」も進み、話も盛り上がってきましたが、お酒にまつわるエピソードなどありますか?
セルジオ: 以前ね、東北だけの日本酒協会の集まりがあり、仙台で講演を頼まれたことがあったんですよ。そうしたら当時は、日本酒が昭和33年以来、売上が落ち込んで売れなくなったと聞いたのよ。当然、その会で原因を調べて発表した。理由のひとつとしては、若い人が飲まなくなったというデータが出たのよ。で、いつから飲まなくなったのかというと、缶モノを発売し出してからだというのよ。これは衝撃だったね。なぜ缶モノが流通して売上が下がるのかというと、たとえばビールは、瓶のものはすぐ注がれるという時代だった。でも缶は自分のペースで飲めるんだよ。

二宮: たしかにそうだ。
セルジオ: そして自販機が増えて、コンビニもあるからね。だから段々杯を交わすという文化が薄れてきている。要するにお酒を注ぐために相手に寄っていく、相手もそれを受けるために近づいてくるのね。だけど缶の場合は、そのまま距離を保ってできる。それを裏付けるのは結婚式、公式なパーティーはね、瓶モノしかでないの。だからひとり社会に変わってきているからね。コンピュータとか携帯電話とか、いろいろひとりでなんでもできる社会になった。この国がまとまらなくなった原因も、こうやっていろいろな角度から探さなかったら分からないと思うね。

二宮: それは面白い視点ですね。
セルジオ: だから団体行動が減っていったんだよ。それが心地良くなって、例えば歌もみんなで歌うんではなく、一部の仲間だけで部屋を借りて歌う。

二宮: 今はひとりカラオケもありますもんね(笑)。
セルジオ: ひとり鍋もあるよね。それぞれの席に仕切りがあってね。それでも習慣は怖くて。だからこう助け合って、誰でもよかったうるさかったとかね。結局、あとはリーダーが少なくなったのは、団体がなくなれば必然的にリーダーはいらなくなるんです。

二宮: 集団がなくなれば、まとめる必要はなくなる。
セルジオ: 今は時代の変化とともに便利に見えるけど結束力がちょっと欠けている気がするよね。たとえばサッカー選手も、それぞれ自分ひとりで音楽を聴いて会場に入る。ずっと携帯をいじりながらひとりで集中している。それが試合で、ちょっとまとまりが足りなかったというのは当たり前のこと。そういうのが、なんかこう漠然と社会にあるよね。

二宮: そのためにも“飲みニケーション”は大切ですね。
セルジオ: そうなんですよ。お酒で人が近づいたら友達になるのね。だから今はやっぱりそういうところも、お酒だけじゃなくても、外で食事に行ったら会話がないじゃん。ただ食べて飲んで帰るだけ。新しい出会いがなくなってきた社会。歌うにしても食べるにしても、若い子は「個室がありますか?」と言うのね。全体的に見ると、そういう風潮があるような気がするね。

二宮: お話も尽きませんが、楽しい時間はあっという間です。またそば焼酎「雲海」を酌み交わしながら、忌憚のない意見を聞かせてください。
セルジオ: ぜひ。まだまだ言い足りないことはたくさんあるので、こちらこそよろしく。二宮さんとは、ずっと飲み仲間でいたいね(笑)。

(おわり)

セルジオ越後(せるじお・えちご)
 1945年7月28日、ブラジル・サンパウロ出身。両親が日本から移民した日系2世。18歳で名門クラブ・コリンチャンスと契約を結ぶ。入団後から頭角を現し、ブラジル代表候補にも選出される。23歳で一度引退するものの、日本からのオファーを受け72年に来日を果たす。藤和不動産サッカー部で2年間プレーし、現役を引退。その後は指導者に転身し「さわやかサッカー教室」を開催、長年に渡り全国の子供たちにサッカーの普及活動、指導を行った。現在はサッカー解説者として活躍する傍ら、アイスホッケー「HC日光アイスバックス」の役員として、地域密着を目指したチームづくりに参画している。


 今回、セルジオさんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
武蔵野うどん じんこ
東京都新宿区四谷1−23−8
TEL:03-5357-7539
営業時間:
昼 11:30〜14:30(平日)、12:00〜14:30(土)※L.O.14:00
夜 16:00〜23:30(月〜土)※L.O.22:30
定休日:日祝日

☆プレゼント☆
 セルジオ越後さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「セルジオ越後さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は10月8日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、セルジオ越後さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・杉浦泰介/写真・石田洋之)


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