
日本の障害者スポーツ界で今、最も輝いているのが車いすテニスプレーヤー国枝慎吾だ。2006年から世界ランキング1位の座を守り続け、07年には車いすテニスでは史上初のグランドスラムを達成。翌年の北京パラリンピックではシングルスで悲願の金メダルを獲得した。だが、昨年の11月のマスターズでは3年ぶりに敗戦を喫し、それまで積み重ねてきた連勝記録が107でストップした。しかし、そこで終わらないのが世界王者・国枝だ。今年の全豪オープン決勝ではマスターズで敗戦したその相手に勝ち、リベンジして見せた。果たして、どのようにして復活を遂げたのか。そして、今後の目標とは――。当サイト編集長・二宮清純が国枝選手の強さの秘密に迫った。
二宮: 1月の全豪オープンでは5連覇達成、おめでとうございます。昨年の世界マスターズでは準決勝で敗れ、2007年から積み上げてきた連勝記録が107でストップしました。しかし、全豪でそのリベンジを果たせたのでは?
国枝: そうですね。正直なところそういう気持ちはありましたね。というのも、全豪の決勝の相手が世界マスターズで敗れたステファン・ウデだったんです。そういうのもあって、非常に感慨深いものがありました。
二宮: 連勝がストップした時は、相当なショックを受けられたでしょうね。
国枝: もちろん、負けた時は悔しくて、少し落ち込みもしました。でも、翌日になったら「負けてよかったな」と思えるくらいスッキリした気持ちになりましたね。
二宮: 「負けてよかった」というのは?
国枝: 負けるまでの半年間というのは、勝つためではなく、負けないためのテニスだったんです。それは自分の中でも気付いていました。でも、やはりリスクを負うことを怖れていたんでしょうね。無意識にテニスが守りに入っていたんです。それがもろに出たのが昨年の世界マスターズでした。
二宮: 連勝記録が頭にあって、自分から攻めるというよりも、相手のミスを待つようなテニスだったと?
国枝: 連勝記録にこだわっていたわけではないのですが、やはり頭のどこかに「負けちゃいけない」ということはあったんでしょうね。勝ち続けてはいましたが、自分が納得したプレーはどんどん減る一方だったんです。自分でもそれはすごく感じていたので、この負けをいいきっかけにできればと、すぐに気持ちを切り替えることができました。
二宮: 負けたことによって、肩の荷が下りて初心に戻ることができたんでしょうか......。
国枝: そうですね。もう一度、挑戦者に戻れたかなと思いますね。今年の全豪の決勝では、久しぶりに納得のいくパフォーマンスをすることができました。
二宮: 負けた次の試合が一番大事なんでしょうね。
国枝: そうだと思いますね。ウデとは世界マスターズ以来の決勝での対戦でしたので、連敗はどうしても避けたかった。だから正直、勝つことができてホッとしましたし、自信を持つことができました。
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