
東日本大震災の影響で、中断を余儀なくされていたJリーグは23日、約1カ月半ぶりに再開する。延期になっていたJ1の第2節〜第6節は、すべて7月に組み込まれることとなった。各クラブは再開からシーズン終了まで、休みなくリーグを戦うことを強いられる。さらに、リーグでは東北・東京電力管内の全試合について、今後の電力事情に応じ、日程が変更される可能性を示唆している。つまり、電力事情次第では夏場にデーゲームが実施されるケースも出てくる。今シーズンを占う上でカギになるのは、過密日程との戦いだ。となれば戦力の充実している名古屋グランパス、鹿島アントラーズが中心となって優勝争いを展開するだろう。
(写真:日本の結束力に期待する大東チェアマン) 昨季王者の名古屋は大卒ルーキーの永井謙佑が、横浜F・マリノスとの開幕戦でいきなり魅せた。1点リードされた66分に投入されると、50メートル5秒8の圧倒的なスピードで相手DF陣を翻弄。後半ロスタイムには、ペナルティエリア内への突破でPKを獲得。それをジョシュア・ケネディが落ち着いて決め、チームは勝ち点1を獲得した。試合後、PKを与えてしまった栗原勇蔵にやられて爽快と言わしめた。
ドラガン・ストイコビッチ監督は中断期間中に永井をケネディの近く、ゴールの近くでプレーさせたいとフォーメーションをそれまでの4−3−3から4−4−2に変更した。再開後のリーグ戦では“ストップ・ザ・永井”が各チームのキーワードになるかもしれない。
不安材料があるとすれば、昨季優勝の立役者・ダニルソンを欠いていることだ。開幕戦、ACLと、代役を任された中村直志、吉村圭司、小川佳純が、その穴を埋める活躍をしているとは言い難い。4−4−2に変更したことで、ボランチが2枚になり中盤は安定してきたが、やはりキーマンの不在は大きい。期待の新戦力が活躍を見せ、攻撃面でその穴をカバーできるかが、名古屋連覇に向けてのカギとなるだろう。

鹿島は今季、本田拓也、西大伍、アレックスを補強、モンテディオ山形に期限付き移籍していた田代有三を呼び戻し、そこに高校選手権で活躍した柴崎岳も加入。経験豊富な小笠原満男、中田浩二を含め、さらにポジジョン争いが激しくなった。ゼロックススーパーカップ、開幕戦となかなか流れの中から得点を奪えなかった攻撃陣だが、13日のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)・シドニーFC戦で興梠慎三が今季初得点を記録。シュート時の冷静さも戻ってきており、カルロンがフィットし始めれば多彩な攻撃パターンを期待できそうだ。
再開初戦は中澤佑二や栗原などリーグ屈指の守備陣を誇る横浜FM戦。興梠や大迫勇也ら若手選手がゴールを決めることで、決定力不足という課題を払拭したい。
鹿島は本拠地である茨城県鹿嶋市も震災の被害を受け、カシマスタジアムも修復工事中だ。4月のホーム戦は国立競技場で行う。本来のホームスタジアムを使えないハンディキャップはあるが、それを乗り越えることで王座を奪還したい。
(写真:健闘を誓い合うオリベイラ監督<左>と木村和司監督) またその鹿島と開幕戦で引き分けた大宮アルディージャにも注目だ。今季はU-22代表の東慶悟を獲得。イ・ジョンス、ラファエル、東、藤本主税が絡む前線はJリーグ屈指の破壊力を誇る。中盤の底にジュビロ磐田から上田康太も加入し、例年以上に戦力は充実している。
一方、守備陣は課題が多い。鹿島戦ではセットプレーから2失点、中断中に行われたアルビレックス新潟との練習試合でもコーナーキックから失点した。連戦が続くだけに守備のほころびは早めに手を打ちたい。
その他、ガンバ大阪、セレッソ大阪のACL勢も優勝争いに絡んでくるだろう。今季、G大阪はC大阪からアドリアーノを獲得。古巣との対決になったC大阪とのダービーマッチではやや連係不足を感じさせたものの、それでも得点してしまうのはさすがだ。中断期間を経て、アドリアーノのスピードを生かすイメージがチーム全体に浸透しつつあり、再開後はゴールを量産しそうだ。
また3年目の宇佐美貴史にも注目したい。昨季、高校生Jリーガーではシーズン最多の7得点を決め、ベストヤングプレーヤー賞を獲得した。今季からG大阪の11番を背負っている。リーグ戦のみならず五輪予選、ACLと試合が続き、コンディションを保つのが難しそうだが、若さではね返せそうな期待感がある。
唯一の不安材料は、未だ固定されていない最終ラインか。センターバックには山口智、中澤聡太、高木和道、そしてルーキーのキム・ジョンヤと実力者が揃っているだけに、早いうちにベストな選択を見つけたいところだ。
最後にベガルタ仙台についても触れておきたい。震災でクラブハウスが半壊、スタジアムも甚大な被害を受けた。各クラブの協力を得て活動を再開したのは3月28日だった。さらに、マルキーニョスが日本でのプレーに難色を示し、退団。得点源として期待していただけに戦力的にも大きな痛手を被った。
中断期間中は手倉森誠監督のもと、4−2−3−1、4−3−3の新システムをテスト。左から梁勇基、赤嶺慎吾、関口訓充が並ぶ3人のFWには前線からの激しいプレスが求められている。このシステムはボールを奪ってからの速攻が生命線。注目したいのが、サイドのFWとして出場することになりそうな太田吉彰だ。中断期間中も好調を維持しており、16日の大宮アルディージャとの練習試合でも相手守備陣を翻弄した。現段階ではセンターFWの赤嶺が孤立してしまう場面も多く見られるが、2列目、3列目からの飛び出しが増えてくれば被災地に元気を与える白星が届けられるはずだ。
また、Jリーグは22日に日本サッカー協会でリーグ戦再開に向けての記者会見を行った。会見には、大東和美チェアマンに加え、Jクラブを代表して仙台、鹿島、横浜FM、川崎フロンターレの4クラブの監督が出席した。
まず大東チェアマンが、中断期間に感じたことを語った。
「被災した現地に行き、クラブのスタッフ、選手の練習する姿を見て、現場の力の大きさを感じました。現場の力をフルに発揮すれば、元に戻れることを確信しました」と話し、さらに3月29日に行なわれたチャリティーマッチを開催した際に「サッカー界が役割を果たそうと必死で動いた。連帯のパワーを感じました」と、日本サッカー界のチームワークの強さを感じたと言う。
そして明日からのリーグ戦再開に向けては、「選手たちは全力を出し切り、エキサイティングな試合を展開してくれると確信しています」と期待感を口にした。

今回の震災で甚大な被害を受けた仙台の手倉森誠監督は「多くの方々の支援をいただき、ようやくここまでたどりつくことができました。本当にありがとうございます」と、まず感謝の言葉を述べた上で、次のように心境を語った。「沢山の命や財産をなくした人たちがいる中で、“本当にサッカーをやってていいのか?”という葛藤がありました。しかし、我々が元気な姿をみせ、活躍することで、東北に勇気や希望を与えることができる。サポーターだけでなく、被災して希望を失いかけている人に、少しでも希望の光になれるように力のすべてを注ぎたいと思います」
(写真:「気持ちのあるプレーを見せたい」と語る手倉森監督) 同じく被災した鹿島のオズワルド・オリベイラ監督も「クラブを代表して、再開のために協力していただいたすべての方々に感謝しています。我々が感謝の形を示す方法は、ピッチの中で表現するしかない」と、全力プレーを誓った
震災により、大幅なスケジュールの変更を余儀なくされ、タイトな日程を強いられるクラブにとっては、過酷なシーズンとなる。各クラブが、その逆境を乗り越えて、最後まであきらめない姿勢をみせることで、被災地に勇気を与えることができるはずだ。それだけに全38クラブに課された責務は大きい。“チカラをひとつに”をスローガンに、Jリーグの熱き戦いが、再び幕を開ける。