9月2日に久しぶりの公式戦がありました。勝てばさいたま市長杯関東大会へ駒を進めることができる大会の埼玉県予選。関東大会へ進めば、関東圏の実力あるチームと対戦ができるとあって、「絶対コールド勝ち」を目標に掲げ、初戦に臨みました。
(写真:試合前のミーティング)
 この日は、たったふたりしかいないピッチャーがともに登板不可能で、内野手の新井がマウンドに立ちました。変化球の種類が多く、コントロールの良さが持ち味です。ピッチャー経験はあるとはいえ、高校時代から8年ほど内野専任。大会役員の方に「ピッチャーいないの?」と言われるのも無理はありません。

 我がチームの「ピッチャー不足」という最大の弱点をさらし、二桁のヒットを打たれながらも2失点。打たれても野手が助け、何とか守りきるシーソーゲームでした。

 緊張の糸が張り詰めたような空気で進んでいた3回裏。1点を先制された我がチームは、ワンアウト一・二塁で同点に追いつくチャンスを得ました。そこで6番・打撃に定評がある仙田の打球は球足の遅いボテボテのサードゴロ。相手サードがもたつき、ゲッツーは免れるタイミングかと思われました。猛然と二塁へ走るランナーの足が相手セカンドの捕球より明らかに早く、ランナー二・三塁にできると思ったその瞬間、二塁塁審の判定は「アウト!」。怒りにベンチが総立ちになると同時に、「審判に歯向かうな。相手は野次るな」といつも言っている大塚監督ですら「おいっ!!」と怒鳴らずにはいられませんでした。ベンチ全体が行き場のない怒りをぐっと我慢して、次の攻撃へ頭を切り替えました。

 今回のような納得のいかない判定は今までいくつもありました。試合前などに必要以上に注意を受けたこともあります。新参者というだけでなく、「監督・コーチが元プロ野球選手」ということで実力以上に目立ってしまうことが、周囲からの誤解を生んでしまうのでしょうか。

 監督・コーチは元プロ野球選手ですが、プレーしているのは、野球好きのアマチュア選手。いくらプロ野球で得た知識や経験を試合で生かそうと私たちに指導してくれても、その指示を体現できる能力が選手になければ、強くなるのは難しい。その能力を徐々に身につけつつはありますが、私たちは監督・コーチにもどかしい思いを随分と味わわせているのでしょう。「俺たちがこのチームにいる意味あるか?」と問われるほど、愕然とさせたことも数え切れません。

 なによりも、監督・コーチは自分たちのことを「元プロ野球選手」だと偉ぶってはいません。先週行われた試合前の集まりで、監督は私たちにこう言いました。

 「俺たちがこのチームにいるのは、野球が大好きなお前たちに、自分たちが今まで経験してきたことを伝えるためや。元プロ野球選手だからとかそんなんじゃない。プロ野球からクビ切られた時点で、自分のことをプロ野球選手だなんて思ってへん。そんなプライド、選手クビになった時に捨ててきたわ。
 20歳そこそこのお前たちより、30代、40代の俺たちは少し長く野球をやってきた。その少し長くやってきた分を教えてるだけや。
 一度は野球すること諦めたヤツ多いやろ。でもまた野球をやりたいと言って集まってきたなら、高い目標目指してやれよ。低い意識の人間はいらん。そんな人間がおるくらいやったら、野球ができない人数になってもいいからやる気のある奴だけとやる。ええな、いいチームになろうや」

 私たちは野球を通してひとつになり、監督とコーチの大きな熱意にたくさん背中を押してもらいながら野球をやっています。これからも高い目標を持って、相手は野次らず、野球以外のことでも「いいチーム」と言われるような野球集団でありたい。そしてその姿勢が、少しでも早く周囲の方にも伝わるといいなと思っています。


★携帯サイト「二宮清純.com」では7月より、このコーナーのコラムをHPに先行して配信中です。紅一点の女子部員の奮闘ぶりを一足早く携帯でお楽しみいただけます。更新は第1、3火曜。ぜひ、チェックしてみてください。

広瀬明佳(ひろせ・さやか)
福島県郡山市出身。母がソフトボール、兄が野球をやっていたことから中学・高校時代ソフトボール部に所属。大学時代軟式野球サークル。前職での仕事をきっかけに初めて硬式野球の道へ。現在、埼玉県内の硬式野球クラブチームに所属。チームの紅一点として奮闘中!

(このコーナーは毎週第1・3木曜日に更新いたします)
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