1995年に野茂英雄選手がメジャーリーグへの道を切り開いた後、さらなる上のレベルを目指す日本人選手が米国へ流出。イチロー、松井秀喜、松坂大輔といった日本を代表するスタープレーヤーのメジャー移籍による日本野球界の空洞化も懸念されている。
 日本のプロ野球界が今後進むべき方向について二宮清純、坂井保之(プロ野球経営評論家)、牛込惟浩(メジャーリーグ・アナリスト)が語った。(今回はVol.7)
牛込: マイナーリーグなら、松坂の60億円で十分買えますね。
坂井: 大賛成。全米には野球チームが何百とある。ただ、日本のオーナーにそういう戦略がない。

牛込: 日本の野球界は、昔の鎖国時代みたいです。自分の国だけのことしか見えなくて、外から来るものはみんな追い返している。このスタンスが依然として変わっていない。
坂井: 日本では、球団の親会社のトップがオーナーになっているのですが、親会社の業界については精通していても、プロ野球のことはまるで知らなさすぎる。

二宮:オーナーは、その名のとおり「所有者」であるべき。オーナー代行とか、オーナー補佐とかいっぱいいて、何がなんだかよくわからない。オーナー会議で決めたことを、「会社のトップに話します」と持ち帰ったりするんだから(笑)。これじゃ、「オーナーレス会議」ですよ(笑)。
牛込: 権限のないオーナー代理は出席するべきじゃないんです。

坂井: 出てくるのは、親会社の常務クラスで、管理責任者にすぎない。マネジメントは球団社長に任せっぱなし。球団社長も、親会社では一流じゃない人ばかり。
二宮:困ったもんだ(笑)。

坂井: オーナーに加えて、フロントも経験がなくて頼りない。
牛込: 日本のフロントの人たちは、本当にモノを知らないね。これは、ひとえに親会社が悪い。親会社で残っていても取締役になれない人を球団に送り込んできた。

坂井: 「長年お疲れさま、楽しんでこい」という感じ。
牛込: スカウトもヒドい。選手で獲ったんだけれど、プレーヤーとしては能力がない。でも真面目だから、スカウトにでもしようかと雰囲気なんですから。

二宮:特にドラフト1位入団の選手に対しては「ドラフト1位で指名するから入ってくれ。その代わり、失敗しても球団が面倒を見る」なんてやっている。これでは公平性は保たれない。
坂井: 終身雇用とか年功序列という日本的な部分が、野球界にはまだ温存されている。厳しいリストラにあっていません。野球界でマネジメントしている人たちに、プロフェッショナルがいないんです。

(続く)


<この原稿は「Financial Japan」2007年3月号『スポーツセレブのマネー論』に掲載されたものを元に構成しています>
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