小椋久美子、潮田玲子の「オグシオ」ペアが大人気だ。所属先の三洋電機は自社のシンボルとしてCMにも二人を起用している。
 アイドル系のスポーツ選手といえばビーチバレーの浅尾美和が有名だが、彼女の場合、国内ツアーでさえ一度も優勝したことがなく、北京五輪の出場権も逃すなど、実力的にはイマイチ。その意味でバドミントンの「オグシオ」は人気、実力を兼ね備えた新時代のヒロインといえるかもしれない。
 この「オグシオ」人気が追い風になり、このところバドミントン人口が急増している。日本バドミントン協会のデータによると、選手登録者は2003年の約19万2900人から07年には約22万7400人になった。
 もともとバドミントンは裾野の広いスポーツである。昔はどこの家にもラケットとシャトルが置かれていた。公園や路地でバドミントンに興じる子供たちの姿もよく見かけた。

 バルセロナ五輪代表の陣内貴美子さんが以前、おもしろいことを言っていた。
「これまでバトミントンをする人たちはたくさんいた。これは遊びのレベル。でもバドミントンをする人は少なかった。こちらは競技者レベル。バトミントンからバドミントンへ。これが協会の課題だったわけです」

 バドミントンがオリンピックの正式種目になったのは1992年のバルセロナ五輪から。じつは陣内さん、世界ランキングが導入された直後に行なわれた「台北オープンダブルス」で優勝を飾り、世界ランクの1位に躍り出ている。メダル獲得が期待されたがバルセロナでは9位に終わった。それ以降も日本選手のメダル獲得はなし。

 もし北京で「オグシオ」がメダルでも獲れば、裾野が広いだけに、一気に火がつく可能性がある。誰も「バトミントン」と口にしなくなったとき、初めて国民的スポーツの仲間入りを果たすことができる。

<この原稿は2008年7月5日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>
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