日本サッカー協会(JFA)は12日、評議員会と新理事による理事会を開き、犬飼基昭新会長をはじめとした新役員人事を決定した。理事会終了後、犬飼新会長が記者会見し、今後のサッカー協会について所信表明を行った。
(写真:左から田嶋専務理事、鬼武副会長、犬飼会長、小倉副会長、大仁副会長)
 会見の冒頭、犬飼新会長は「ものすごい方の後任で緊張している。サッカー協会が今までやってきたことを引き継いでいきたい」と川淵三郎前会長の路線を継承していく方針を示した。その一方で、「社会の変化は激しくなっている。その変化に敏感に反応し、サッカー界がやるべきことを敏感に察知し反応していきたい」と柔軟に対応していく考えもみせた。

 新会長が最も優先順位の高い取り組みとして挙げたのは「CHQ活動の継続」だった。キャプテンズ・ミッションと名づけられ、川淵前会長が推し進めたサッカー普及のための運動を、今後は「プレジデント・ミッション=PHQ」として発展させていくことを約束した。

 また、日本代表戦の観客動員が減少し、人気にかげりが見えていることについては、「代表戦に観客が入らないのは、各国のリーグ戦が盛り上がりをみせる欧州のサッカー先進国にも言えること。しかし、この間のEUROあたりから状況が変わって、お客さんが入るようになってきた。それは選手の意識変化に理由があると言われている。日本代表もそのような雰囲気ができるように持っていきたい。いいサッカーをして勝つことが多くの人にサッカーを見てもらえることにつながる」と、代表選手の意識改革と強化に全力を尽くすことを誓った。
(写真:会見に臨む犬飼新会長)

 継続路線を本線とする犬飼会長だが、前会長との大きな違いを示したのは呼称だろう。川淵前会長は誰にでも親しみをもってもらえるようにと、自ら「キャプテン」と名乗った。だが、新会長は「キャプテンは川淵さんの愛称。私は会長、プレジデントでやっていきたい」と、キャプテンの名称は引き継がない。海外経験の豊富な犬飼氏。プレジデントという肩書きが似合う国際派の会長が誕生した。

 さらに会見で新会長が何度も口にしたのは「47都道府県のみなさんと協力する」という言葉だった。「今までのやり方を継続しつつも、都道府県単位の人とのコミュニケーションのとり方を変えていきたい。お互いが五分五分にやっていける環境を作りたい」。川淵体制では前会長の協力なリーダーシップの下、トップダウンで物事が決まることが多かった。浦和レッズを地域密着のビッグクラブとして変革した新会長は、地域の声を組み入れながらサッカー協会に新しい風を吹き込んでいく方針だ。

 その他の役員人事では、副会長に小倉純二国際サッカー連盟理事、鬼武健二Jリーグチェアマン、大仁邦彌日本フットサル連盟チェアマンが留任し、釜本前副会長は名誉副会長となることが決定した。専務理事には田嶋幸三氏が留任する。

 また新会長の会見に先立って、6年間にわたり会長職を務めた川淵キャプテンが挨拶し、「6年間会長を務められたことに対して、全国のサッカーを愛する全ての人に感謝をしたい。今の日本にはスポーツの持つ力が必要だ。みなさんを勇気付けられる感動を与えられるのはサッカーだと信じている。北京オリンピックやW杯でがんばってほしい」と今後のサッカー界にエールを送った。今後は協会名誉会長として、犬飼体制をバックアップしていく。

 新しい日本サッカー協会の役員は以下のとおり。任期は2010年7月までの2年間となる。

【日本サッカー協会 新役員】

会長
犬飼基昭

副会長
小倉純二、鬼武健二、大仁邦彌

理事
田嶋幸三、桑原勝義、綾部美知枝、佐々木一樹、瀧井敏郎、上田栄治、松崎康弘
大倉健史、田中道博、風間八宏、小野剛、平尾誠二、クルム伊達公子、佐藤公一
櫻井覚、植田昌利、横山孝、森本裕康、藤縄信夫、池田洋二、権名津朗、小川勇二

監事
斎藤幸司、池田正利

特任理事
青木治人、平山隆造、手嶋秀人、北澤豪、中西哲生、野田朱美