11月9日(日)
 9日、日本シリーズは東京ドームで最終第7戦が行われた。試合は巨人が序盤に2点を先行したが、西武は1点ビハインドで迎えた8回、ノーヒットで同点に追いつくと、平尾博嗣が勝ち越しのタイムリー。このリードを守りきって、2004年以来13回目(前身の西鉄含む)の日本一を勝ち取った。

◇第7戦
 西口−石井一−涌井の継投策実る(西武4勝3敗、東京ドーム)
埼玉西武   3 = 000010020
巨人      2 = 110000000
勝利投手 星野(1勝0敗)
敗戦投手 越智(1勝1敗)
セーブ   グラマン(2S)
本塁打   (西)ボカチカ1号ソロ
       (巨)坂本1号ソロ
 勝敗を分けたのは、決断力だった。先発陣を惜しげもなく繰り出す投手起用。そしてリスクを恐れない積極的な攻撃。これぞ短期決戦という戦いをみせた若きライオンたちに勝利の女神は微笑んだ。

 勝ったほうが日本一の最終決戦、先に先制機を迎えたのは西武だった。先頭の片岡易之がヒットで出塁し、すかさず2盗を決める。1死後、3番・中島裕之の打席でワイルドピッチも飛び出し、片岡は3塁へ。しかし、中島はショートゴロに打ち取られ、飛び出した片岡がタッチアウト。先取点を奪えなかった。

 その裏、巨人は1死から2番・木村拓也が四球で出塁。続く小笠原道大がレフトへの2塁打を放ち、2、3塁とチャンスを広げる。今シリーズ初先発となる西口文也は微妙な制球が定まらず、ラミレスを四球で歩かせ、亀井義行の打席では変化球を叩きつけてしまう。このワイルドピッチで難なく3塁走者が生還し、巨人が1点を先行した。
 流れをつかんだ巨人は2回、先頭の坂本勇人が、西口のカウント球を引っ張る。打球は静まりかえったレフトの西武ファンの中へ飛び込むソロアーチ。2−0とリードが広がった。

 ここで西武ベンチは1つ目の大きな決断を下す。ベテランの西口を2回であきらめ、3回から石井一久を投入する。第3戦では先発で立ち上がりに失点を重ねたサウスポーは4回、5回をいずれも三者凡退。巨人に傾きかけた流れをピタリと止めた。

 すると5回、西武は2死無走者ながら打順の巡ってきた石井一に代打を送る。渡辺監督の思い切った選手起用に応えたのが、代打のボカチカだ。カウント1−1から高めに浮いたチェンジアップを叩くと打球は左中間スタンドへ。貴重な一発で1点差に詰め寄った。

 さらに渡辺監督は勝負手を打つ。3番手のマウンドへ送ったのは第5戦で先発した涌井秀章。北京五輪でリリーフ登板を経験した右腕はベンチの期待に応え、キレのあるボールを次々と投げ込む。巨人打線から5、6回で4三振を奪い、完璧な内容をみせた。

 1点差のまま勝負はいよいよ終盤へ。7回、巨人は今シリーズ安定感のある越智大祐を投入し、逃げ切りを図る。西武は1死から前日に4打点をマークし平尾博嗣がヒットで出塁。佐藤友亮が四球を選んで、得点圏へ走者が進む。
 ここでバッターは好投の涌井に代わって石井義人。しかし、今季、中継ぎの柱として成長を遂げた右腕は動じなかった。石井を2−1と追い込んで、外のボールで見逃し三振に仕留めると、続くボカチカに対しては3球勝負を挑む。前打席でアーチを描いた強打者のバットはインハイの速球に空を切り、マウンド上で越智は雄たけびをあげた。

 8回も越智は続投。だが、先頭の片岡に死球をぶつけてしまう。ガッツボーズをしながら1塁に向かったパ・リーグの盗塁王は次打者・栗山巧の初球に勝負をかける。アウトになれば非難されかねない状況での2盗。飛ばした俊足はタッチより早くセカンドベースを陥れ、同点ムードは一気に高まった。
 栗山がきっちり送り、1死3塁でバッターは中島。初球、痛む脇腹をかばうことなく、半ば強引に低めのボールをひっかける。打球は三塁前に弾み、思い切ってスタートを切った片岡が同点のホームを足で奪い取った。

 なおも西武は動揺した越智から冷静にボールを選んで、連続四球で走者をためる。迎えるは前の打席、越智からヒットを打っている平尾。巨人ベンチは交代の選択肢もあったが、原辰徳監督は動かない。そして、この決断が裏目に出た。フルカウントからの6球目、越智が空振りを狙った沈むボールに好調のバッターはくらいつく。はじき返された打球はセンター前へ。2塁走者が勝ち越しのホームを踏み、ついに西武がゲームをひっくり返した。

 渡辺監督は8回から迷うことなく守護神のグラマンを投入。レギュラーシーズンで31セーブをあげている外国人左腕は長身から投げ下ろすストレートとチェンジアップで相手に反撃の糸口を与えない。9回2死までスイスイとアウトを積み重ねると、最後は一発のあるラミレスをショートゴロ。西武投手陣は3回以降、巨人打線をパーフェクトに封じ込んで、劣勢をはね返した。
 
 就任1年目ながら強気の采配で頂点へ導いた渡辺監督はレギュラーシーズンとは異なり、笑顔の胴上げ。背番号(99番)にちなんで9度、宙に舞った。最優秀選手には第4戦で完封勝利をおさめ、第6戦でシリーズの流れを変えるロングリリーフをみせた岸孝之が輝いた。また敢闘選手は第2戦でサヨナラホームランを放った巨人のラミレスが選ばれ、優秀選手には西武から平尾、中島、巨人から鈴木尚広が選出された。

 西鉄時代からのライバル対決にふさわしい激闘を制し、西武は球団創設30年目のメモリアルイヤーを最高の形で締めくくった。13日からはアジアの頂点を目指してアジアシリーズに出場する。

○西武・渡辺監督
 チームの思いと家族の思い、全国のライオンズファンの思いが、この2戦に凝縮されていた。就任1年目のダメな監督を1年間盛り上げてくれて感謝している。
(開幕当初は)やるからには日本一を目指そうと思っていた。負け犬にだけは絶対になりたくなかった。なんとか勝てるチームに、と思っていた。
 日本シリーズ前にジャイアンツの原監督と「最高の日本シリーズにしよう」と話をした。7戦までもつれて、本当に最高の日本シリーズができた。

○西武・岸(シリーズMVP)
 うれしい。それだけです。野手のみなさんがいい形でつないでくれたので、それにのっかろうと思った。
(第6戦でのリリーフは)勝ちたいというか、西口さんにシリーズで投げてほしいという思いで頑張った。


【Jリーグ ディヴィジョン1 第31節】
 首位・鹿島、ドローで混戦抜け出せず(カシマ)
鹿島アントラーズ 0−0 アルビレックス新潟

 3試合連続零封で5連勝(味スタ)
東京ヴェルディ 0−2 ヴィッセル神戸
【得点】
[神戸]吉田孝行(63分)、鈴木規郎(71分)

 大分、苦手の千葉に痛いドロー(九石ド)
大分トリニータ 0−0 ジェフユナイテッド千葉