11日、南アフリカW杯アジア最終予選第4戦が横浜国際競技場で行われ、日本代表はオーストラリア代表と対戦した。日本は田中達也(浦和)、玉田圭司(名古屋)が積極的にオーストラリアDFラインの裏をつく動きをみせるもゴールは奪えず、前半を0−0で折り返した。後半立ち上がりはオーストラリアが攻勢にでたが、15分過ぎからは日本がペースを握り、決定機もいくつか迎えた。しかし、オーストラリアの堅守を崩すには至らず、90分が過ぎ、スコアレスのまま試合終了。ホーム戦で勝ち点1を獲得するにとどまった。

 決定機を作るも得点は奪えず(横浜)
日本代表 0−0 オーストラリア代表
 試合が始まる前の両国の位置関係は、オーストラリアが勝ち点9でグループA組首位。日本は勝ち点差2で2位につけていた。自力でグループ1位に上がるチャンスがこの試合にはあった。だが、岡田ジャパンは順位を上げることは叶わなかった。6万を超えるサポーターの声援を受けながら、スコアレスドロー。南アフリカへの切符を手にすることだけを考えれば、大きな問題のない結果だが、歯がゆい想いを抱いたサポーターは多かったのではないか。

 日本のフォーメーションは4−4−2。前半開始早々3分、日本はいきなり決定機を迎える。内田からの縦パスに反応した田中達が右サイドを敵陣深くまで進入する。そこでニアサイドに早いクロスを上げると、玉田が走りこみシュート。ボールは惜しくもゴール右に逸れた。高身長のオーストラリアに対し、ニアサイドに低いボールでチャンスを作るという意図を感じさせる攻撃だった。

 FWの田中達と玉田は試合開始時からオーストラリアDFにプレスをかける。MF松井大輔(サンテティエンヌ)もプレッシャーを与え、相手のミスを誘いボールを奪う。MF中村俊輔(セルティック)はいつもより下がり目の位置から試合を組み立てる。前線の選手が奮闘しDFの裏を取る動き続けるものの、なかなかオーストラリアから得点を奪うことはできない。このまま前半を終了し、0−0で試合を折り返す。

 後半に入ると、立ちあがりにオーストラリアが攻勢に出るが、中澤佑二(横浜FM)、田中マルクス闘莉王(浦和)を中心に安定した守備で大きなピンチを迎えることなく、この時間帯を乗り切る。

 再び日本の攻撃にリズムが出てきたのは後半15分過ぎから。右サイドから中村俊や内田篤人(鹿島)がチャンスを作り、何度となくオーストラリアゴールへ襲い掛かる。24分には内田のクロスを遠藤保仁(G大阪)がダイレクトでシュート。相手GKが好セーブをみせ、得点にはならなかった。

 続く33分、左サイドDF長友佑都(FC東京)からのクロスにゴール前で合わせたのは玉田。相手DFのマークをうまく外したが、体を精一杯伸ばしながらのヘディングはゴールバーの上を越える。さらに41分、再び右サイドを突破した内田からのボールをゴール前で長谷部誠(ヴォルフスブルグ)が右足でシュートを放つ。ボールは味方FWに当たってコースが変わり、ゴールを捉えることはできない。

 岡田武史監督は後半11分に大久保嘉人(ヴォルフスブルグ)を、37分に岡崎慎司(清水)をピッチに送りこむがゴールを奪うことはできず、無得点のまま試合終了。引き分けで勝ち点1を奪うにとどまった。最終予選のホーム戦では昨年10月のウズベキスタン戦に続き、2試合連続のドローゲームとなった。

 試合後、岡田監督は「我々が目指しているサッカーはできている。選手たちはよくやっている。チームは進歩してきた。これからも自分たちのやり方で(シュートの)回数と精度を上げていくことが必要だ」と語った。

 オーストラリア戦を見る限り、今日の岡田ジャパンに目新しさは全くなかった。チームの進む方向について、継続性があるといえば聞こえはいいが、悪くいえばマンネリ化している。

 サッカーというのは料理に例える事ができる。シェフがメニューを考えて、様々な食材を集め、最高の一品を完成させる。店にやってきた客がその料理を口にし、店の評価を下す。

 岡田監督の言うシュート回数や精度を上げることとは、個々の食材である選手が自らの質を上げるよう努力するということになるだろう。だが、どんなにいい食材を使っていても、シェフが考えるコースに魅力がなければ食材のよさは活かされず、料理のレベルも上がってこない。

 スタジアムに足を運んだ多くのサポーターからすると、今日の日本のサッカーは「不味くはないが美味でもない。値段にそぐわない料理」だったに違いない。しかも、今夜の料理は、以前にも口にしたことのある味だった。そんなことでは、店の評判は上がらないし、客足が増えることもない。

 監督はここで思い切ってメニューを考え直してはどうか。幸い、本大会の切符を手にすることはそう難しくない状況になっている。玉田、田中達也といったスピードのある選手を前線に並べるのではなく、大型FWをワントップに据えることも、違った料理を作り出す一つの方法だ。

 もしくは、今日使うことのなかった食材、中村憲剛(川崎F)や橋本英郎(G大阪)を中盤の中心選手として、3月の埼玉スタジアムで試してみるのもいいだろう。今までとは一味違うチームに仕上がるように思われるのだが。

 繰り返し中途半端な料理を出されては、スタジアムに足を運ぶ熱心なサポーターの舌を満足させることはできない。雇い主であるサッカー協会の幹部にもいい顔はされないだろう。次戦のバーレーン戦で彼らを満足させることができなければ、シェフ岡田の存在自体が問われることになる。

 南アフリカW杯本大会まであと16カ月。世界に通用するチームを作るために割ける時間は想像以上に少ない。時には思い切った方向転換も必要だ。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
都築龍太
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
内田篤人
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
松井大輔
→大久保嘉人(56分)
中村俊輔
FW
田中達也
→岡崎慎司(82分)
玉田圭司