9月5日、9日は国際サッカー連盟(FIFA)のインターナショナルマッチデーにあたり、世界中で南アフリカW杯に向けた予選が行なわれる。既に最終予選の日程を終了し、本大会出場を決めている日本代表は、ヨーロッパの強豪国・オランダへ遠征し、5日にオランダ代表と9日にガーナ代表と親善試合を行う。南アフリカW杯まであと9カ月あまり、本番を占う上でも重要なシミュレーションの機会がやってくる。
 欧州遠征中の日本代表が、FIFAランキング3位のオランダと対戦する。過去にオランダと戦った経験はなく、“オレンジ軍団”とは初顔合わせとなる。

 オランダ代表の特長といえば、圧倒的な攻撃力だ。FWからMFにかけてメンバー表に目をやれば、クラース・ヤン・フンテラール(ACミラン)、ディルク・カイト(リバプール)、ロビン・ファンペルシ(アーセナル)、アリエン・ロッベン(バイエルン・ミュンヘン)、ウェズレイ・スナイデル(インテル)にラファエル・ファンデルファールト(レアル・マドリッド)と、欧州のスター選手の名がキラ星の如く並ぶ。チーム全体としても安定した力を発揮しており、南アW杯欧州最終予選を一番乗りで突破している。

 多くいるスター選手の中でも注目なのは快速ウィングのロッベンだ。欧州移籍市場が閉鎖される直前の28日、電撃的にレアル・マドリッドからバイエルン・ミュンヘンに移籍したロッベン。翌29日に行なわれたヴォルフスブルグ戦では後半途中出からピッチに登場し、いきなり2得点を挙げる鮮烈なドイツデビューを果たした。フランク・リベリと組んで欧州サッカーシーンの勢力図を塗り替える予感がある。今回の日本戦でも鋭いドリブルと抜群の得点感覚を披露してもらいたい。

 また、オランダ戦の4日後に対戦するガーナも近年成長著しいアフリカにあって、指折りの実力を持つ国だ。W杯出場は前回ドイツ大会の1度のみ、FIFAランキングは35位だが、それ以上の実力を有しているといってよい。W杯アフリア最終予選が5日に行なわれるだけに(スーダンとのホーム戦)、ベストメンバーで試合に臨むかは不確定な部分もあるが、チームには実力者が揃っている。注目は中盤のキーマン、マイケル・エッシェン(チェルシー)だ。英・プレミアリーグの強豪クラブでも中心選手として活躍するセントラルMFは、攻守に渡り高い能力を示す。アフリカ勢というと、以前はフィジカルに任せた荒いサッカーをするイメージがあったが、今では欧州のトップリーグを主戦場とする選手が中核を担っているだけに、戦術面でも大きな進歩を遂げている。初出場のドイツW杯では決勝トーナメントに進出しているチームだけに、日本が本大会で結果を残すためにも、実力で勝ちを奪いたい相手だ。

 日本代表にとって、ヨーロッパへ遠征するのは2007年のオーストリア以来2年ぶり。世界ランクトップ10チームとの対戦は06年ドイツW杯ブラジル戦まで遡らなければならない。スポンサーの関係などで、どうしても国内での試合に偏重する傾向にある中、今回の2試合は非常に貴重な実験の場となる。対戦するオランダやガーナにとっても、W杯本番まで選手をテストできる親善試合はそう多くない。それだけに相手も日本戦にむけて明確な意図を持っているはずだ。その点でも岡田JAPANにとって、またとない強化のチャンスがやってきたといえる。

 オランダ遠征には当初、22名の選手が参加する予定だった。しかし、代表メンバー発表得後に大久保嘉人(神戸)が腰痛を理由に遠征を辞退し、替わって前田遼一(磐田)が招集された。欧州へ出発する直前には、今回の遠征の目玉となるはずだった森本貴幸(カターニャ)が右足太ももの痛みから遠征参加を見合わせた。直前でのキャンセルだったため替わりの選手を呼ぶこともできず、21名での遠征となった。

 さらにオランダでの練習中、久しぶりに代表へ招集された岩政大樹(鹿島)が接触プレーで右足首付近を傷めている。故障明けの田中マルクス闘莉王(浦和)も万全とはいえず、DF面にも不安は残る。

 ケガ人続出の日本だが、MF本田圭佑(VVVフェンロ)に大きな期待がかかる。今季オランダ1部リーグに返り咲いたフェンロで活躍する本田は開幕戦から第4節まで連続ゴールを挙げている。先週の第5節ではゴールを奪えなかったものの、現在オランダリーグで堂々の得点王だ。今回の遠征は本田にとってホーム戦のような試合になる。森本の欠場を埋めて余りある活躍をしてもらいたい。

 気になるのは本田の起用法。右、もしくは左サイドMFでの先発が濃厚だ。これまで岡田JAPANの中盤といえば中村俊輔(エスパニョール)が主役だったが、本田と中村俊の共生ができるのか、そこがカギになる。

 アジア最終予選の終盤では、中村憲剛(川崎F)がトップ下に入り、岡崎慎司(清水)が1トップという形が攻撃にリズムを作っていた。ただ、本田の得点力を活かすのであれば、故障を抱える長谷部誠(ヴォルフスブルグ)に無理をさせず、中盤の底に中村憲を配置し、トップ下に本田というフォーメーションも面白い。現在、オランダリーグで本田が活躍している理由はクラブから自由を与えられているから。守備の負担がサイドよりも少ないトップ下の位置からゴールを狙う動きを見せれば、世界屈指の強豪国相手でも得点シーンを演出できる。岡田武史監督には選手の長所を伸ばすような起用法をプランニングしてもらいたい。

 また、先述したように離脱者が続くFWでは、緊急招集された前田にも注目したい。万能型のFWで1トップのスタイルにマッチする。今季、Jリーグでは12ゴールを挙げて岡崎と並び得点ランクトップを走って折り調子もいい。身長183cmと高さもある選手だけに、平均身長が非常に高いオランダや、フィジカルに優れるガーナとの試合は、前田の能力を計る意味でもいい機会だ。森本の不参加によって巡ってきたせっかくのチャンスを逃したくないだろう。ベンチを温めるだけでなく、積極的な選手起用でピッチを駆け回りたい。

 W杯本大会のグループリーグでオランダ、ガーナと対戦すると仮定してみる。そうなれば、第1シード扱いのオランダには引き分け、第3もしくは第4シードのガーナには勝ちという結果が要求される。日本がこれから戦おうとしているワールドカップの舞台では、当然結果を求められる。今回の遠征は貴重なアウェー戦であると同時に、2試合連続でゲームを消化できる点でもより大会に近い環境で経験を積むことができ、大きな意義がある。本番でのグループリーグの戦い方を想定しながら、内容と結果を残すようにプランを組み立てるべきだ。

 オランダ遠征の2試合を含めて2009年に行なわれる日本代表の試合は6回。来年の上半期はインターナショナルマッチデーが1日しかなく、多くの試合を組むことはできない。代表選手同士のサバイバルも含めて、南アフリカW杯の戦いはすでに始まっているといっても過言ではない。

(大山暁生)

<国際親善試合>
◇9月5日(土)
オランダ代表 × 日本代表
FCトゥヴェンテスタディオン(オランダ・エンスヘーデ)

◇9月9日(水)
日本代表 × ガーナ代表
ハルヘンバールトスタディオン(オランダ・ユトレヒト)