南アフリカW杯開幕まであと9カ月。アフリカ大陸で初めて行なわれるサッカーの祭典が、もう間もなくやってくる。各大陸で激しい予選が繰り広げられてきたが、開催国の南アフリカを含め、すでに11の代表が本大会進出を決めた。各チームのプロフィールを紹介し、一足はやく大会の見どころを探ってみたい。
【開催国】

国名: 南アフリカ共和国
首都: ケープタウン
人口: 約4800万人

FIFAランク: 73位
W杯出場回数: 3度目(2大会ぶり)
初出場時成績: グループステージ敗退(98年フランス大会)
W杯最高成績: 本大会出場(98年フランス大会、02年日韓大会)
06年ドイツW杯成績: 予選敗退

監督: ジョエル・サンタナ(ブラジル)(ベガルタ仙台で監督経験有り)
愛称: バファナ・バファナ(ズールー語で“男の子たち”の意味)
歴代名選手: ゴードン・ホジソン、クイントン・フォーチュン
現役キープレイヤー: スティーブン・ピーナール(エバートン)

国内リーグ: ABSAプレミアシップ
代表クラブ: マメロディ・サウンダウンズ、カイザー・チーフス

 今年6月に行なわれたFIFAコンフェデレーションズカップでは下馬評を覆す大躍進を遂げた。攻撃の中心を担うのはスティーブン・ピーナール。アフリカ人特有の身体能力に加え、高度なテクニックも併せ持つ。また長身の白人CBマシュー・ブースがボールを持つと観客が一斉に「ブース!!」と叫ぶため、あたかもブーイングのように聞こえるが、彼はミス南アフリカと結婚するなど国内でも非常に人気の高い選手だ。他のブラック・アフリカ諸国と違ってスピードや身体能力よりも足元のボールコントロールに秀でているのも一つの特徴。バファナ・バファナは本大会でも旋風を巻き起こせるか。


【ヨーロッパ】

国名: オランダ王国
首都: アムステルダム
人口: 約1600万人

FIFAランク: 3位
W杯出場回数: 9度目(2大会連続)
初出場時成績: 1回戦敗退(34年イタリア大会)
W杯最高成績: 準優勝(74年西ドイツ大会、78年アルゼンチン大会)
06年ドイツW杯成績: ベスト16

監督: ベルト・ファン・マルヴァイク
愛称: オランイェ(オランダ語で“オレンジ色”の意味)
歴代名選手: ヨハン・クライフ、マルコ・ファン・バステン
現役キープレイヤー: アリエン・ロッベン(バイエルン・ミュンヘン)、ヴェスレイ・スナイデル(インテル)

国内リーグ: エールディヴィジ
代表クラブ: アヤックス・アムステルダム、AZアルクマール

 EURO2008ではグループステージを破竹の勢いで突破しながら、ダークホースのロシアに敗れ、準々決勝で姿を消した。大会後には長年オランダを支えてきたルート・ファン・ニステルローイやエドウィン・ファン・デル・サールが代表を去り、世代交代を図っているが、その穴は完全に埋められたとはいえない。それでも欧州予選を8戦全勝で突破し、実力を見せつけた。ロッベンやスナイデルなど豊富なタレントが揃う一方、主力に故障がちな選手が多いだけに、大会を通じてコンディションが維持できるかがポイントとなりそうだ。


国名: イングランド
首都: ロンドン
人口: 約5000万人

FIFAランク: 7位
W杯出場回数: 13度目(4大会連続)
初出場時成績: グループステージ敗退(50年ブラジル大会)
W杯最高成績: 優勝(66年イングランド大会)
06年ドイツW杯成績: ベスト8

監督: ファビオ・カペッロ(イタリア)
愛称: スリーライオンズ
歴代名選手: ボビー・ムーア、スタンリー・マシューズ
現役キープレイヤー: ウェイン・ルーニー(マンチェスター・ユナイテッド)、スティーブン・ジェラード(リバプール)

国内リーグ: バークレイズ・イングリッシュ・プレミアリーグ
代表クラブ: マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー

 EURO2008ではまさかの予選敗退。サッカーの母国として最大の屈辱を味わったが、ファビオ・カペッロを招聘し見事に復活を果たした。欧州予選で8連勝を飾り、一気に本大会出場を決めた。前線ではジャーメイン・デフォーが頭角を現し、ルーニーの相棒に名乗りを挙げている。中盤はジェラード、フランク・ランパードなど中心を担う選手から、ベテランのデイビッド・ベッカムや新進気鋭のセオ・ウォルコットなど多士済々。開催国が英語圏の国であるのもアドバンテージになるはずだ。正守護神の不在は気になるが、サッカー母国として44年ぶりの戴冠を目指したい。


国名: スペイン
首都: マドリード
人口: 約4400万人

FIFAランク: 2位
W杯出場回数: 13度目(9大会連続)
初出場時成績: ベスト8(34年イタリア大会)
W杯最高成績: ベスト4(50年ブラジル大会)
06年ドイツW杯成績: ベスト16

監督: ビセンテ・デル・ボスケ
愛称: ラ・ロハ(スペイン語で“赤”の意味、「無敵艦隊」はスペイン国内では一般的ではない)
歴代名選手: フェルナンド・イエロ、ルイス・エンリケ
現役キープレイヤー:ア ンドレス・イニエスタ、シャビ(ともにバルセロナ)

国内リーグ: リーガ・エスパニョーラ
代表クラブ: バルセロナ、レアル・マドリッド

 EURO2008を制覇し、その後も35戦連続無敗と順風満帆の航海を続けた無敵艦隊。コンフェデ杯では格下と思われたアメリカに準決勝で不覚をとったが、それでもスペインの強さに翳りは見えない。最終ラインにジェラール・ピケという待望の大型CBが現れ、シャビ、イニエスタを擁する中盤はまさに磐石。エースストライカーにフェルナンド・トーレス、ダビド・ビジャ、GKにイケル・カシージャスとホセ・マヌエル・レイナと信頼できるプレーヤーを2人ずつ抱える層の厚さは心強い限りだ。懸念事項といえばコンフェデ杯以降、度々カウンターで失点を重ねていることくらいか。EUROで本物の無敵艦隊になったスペイン代表はW杯でも間違いなく大本命だ。


【南米】

国名: ブラジル連邦共和国
首都: ブラジリア
人口: 約1億9000万人

FIFAランク: 1位
W杯出場回数: 19度目(19大会連続、唯一の全大会出場国)
初出場時成績: グループステージ敗退(30年ウルグアイ大会)
W杯最高成績: 優勝(58年スウェーデン大会、62年チリ大会、70年メキシコ大会、94年アメリカ大会、02年日韓大会。5度の優勝は最多)
06年ドイツW杯成績: ベスト8

監督: ドゥンガ(ジュビロ磐田でのプレイ経験有り)
愛称: セレソン(ポルトガル語で“代表”の意味)、カナリーニョス(ポルトガル語で“小さなカナリアたち”の意味)
歴代名選手: ペレ、ジーコ(元日本代表監督)
現役キープレイヤー: カカ(レアル・マドリー)、ロビーニョ(マンチェスター・シティ)

国内リーグ: カンピオナート・ブラジレイロ
代表クラブ: サンパウロ、クルゼイロ

 ドゥンガ政権が発足し、守備的なスタイルにシフトしてからセレソンは国内メディアの批判に幾度となくさらされてきた。美しく勝つことを要求するブラジル国民にとって守り勝つことは不満でしかなかった。しかし、ドゥンガは国民の要求に屈することなくロナウジーニョを代表から外すなどドラスティックな改革を断行してきた。絶対的な存在を排除したチームは次第に団結力を高め、コンフェデ杯ではブラジルの守備的サッカーが優勝という形で一つの完成をみた。過去86年、02年に世界を制したチームも守備的と言われたチーム。ジンクス通りいけば今回も優勝ということになるのだが……。


国名: パラグアイ共和国
首都: アスンシオン
人口: 約600万人

FIFAランク: 23位
W杯出場回数: 8度目
初出場時成績: グループステージ敗退
W杯最高成績: ベスト16(86年メキシコ大会、98年フランス大会、02年日韓大会)
06年ドイツW杯成績: グループステージ敗退

監督: ヘラルド・マルティーノ(アルゼンチン)
愛称: ロス・グアラニース(パラグアイの原住民、グアラニ族に由来)
歴代名選手: ホセ・ルイス・チラベルト、アルセニオ・エリコ
現役キープレイヤー:ロケ・サンタ・クルス(マンチェスター・シティ)、フスト・ビジャール(バジャドリー)

国内リーグ: リーガ・パラグアージャ
代表クラブ: オリンピア・アスンシオン、セロ・ポルテーニョ(かつて廣山望が在籍)

 近年、ブラジル、アルゼンチンに次ぐ南米第3の強国の座を手に入れつつあるパラグアイ。原住民グアラニ族が比較的穏やかな農耕民族だったこともあってか、パラグアイ代表のサッカーも攻撃より守備に重きを置く。国内リーグはアスンシオンの強豪クラブとその他の格差が激しく、主力選手のほとんどは欧州やメキシコ、アルゼンチンでプレーしている。南米第3の強国として、欧州の列強国の牙城を崩したい。


【アフリカ】

国名: ガーナ共和国
首都: アクラ
人口: 約2400万人

FIFAランク: 32位
W杯出場回数: 2度目(2大会連続)
初出場時成績: ベスト16(06年ドイツ大会)
W杯最高成績: ベスト16(06年ドイツ大会)
06年ドイツW杯成績: ベスト16

監督: ミロバン・ライェビッチ(セルビア)
愛称: ブラック・スターズ
歴代名選手: アベディ・ペレ
現役キープレイヤー: マイケル・エッシェン(チェルシー)、スレイ・ムンタリ(インテル)

国内リーグ: Gloプレミアリーグ
代表クラブ: ハーツ・オブ・オーク、アシャンティ・コトコ

 前回のドイツ大会では初出場ながらベスト16に入る活躍を見せ、昨年のアフリカネイションズカップでも3位に入るなど近年力をつけているアフリカ勢の中にあっても躍進は著しい。01年にワールドユースで準優勝した世代が選手として円熟期を迎えており、南アW杯でも上位進出の期待が大きい。チェルシーで活躍するマイケル・エッシェンに代表されるようにブラック・アフリカン特有の身体能力と運動量を前面に押し出したプレイが持ち味。また、若い選手が多く、次世代のスター候補を探しながら見てみるのもいいだろう。


【アジア】

国名: オーストラリア
首都: キャンベラ
人口: 約2000万人

FIFAランク: 14位
W杯出場回数: 3度目(2大会連続)
初出場時成績: グループステージ敗退(74年西ドイツ大会)
W杯最高成績: ベスト16(06年ドイツ大会)
06年ドイツW杯成績: ベスト16

監督: ピム・ファーベーク(大宮アルディージャで監督経験有り)
愛称: サッカルーズ(“サッカー”と“カンガルー”を組み合わせた造語)
歴代名選手: アレックス・トビン、ダミアン・モリ
現役キープレイヤー: ティム・ケーヒル(エバートン)、マーク・シュウォーツァー(フルアム)

国内リーグ: Aリーグ
代表クラブ: メルボルン・ビクトリー、シドニーFC

 前回大会ではベスト16に進出、決勝トーナメントでは大会を制することになるイタリアを最後まで苦しめるなど健闘が光った。GKのシュウォーツァーはアジア最終予選で無失点を続け、所属するフルアムもマンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、リバプールに次いで少ない失点を記録するなどワールドクラスのGKだ。日本に幾度と無く苦杯をなめさせたティム・ケーヒルもイングランドでプレイしている。中盤の選手だが得点能力が高く、果敢な飛び出しと打点の高いヘディングでゴールを奪うシャドウストライカーだ。今回もベスト16以上は十分期待できる。


国名: 大韓民国
首都: ソウル
人口: 約4800万人

FIFAランク: 49位
W杯出場回数: 8度目(7大会連続)
初出場時成績: グループステージ敗退(54年スイス大会)
W杯最高成績: ベスト4(02年日韓大会)
06年ドイツW杯成績: グループステージ敗退

監督: ホ・ジョンム
愛称: 太極戦士、アジアの虎
歴代名選手: 洪明甫、車範根
現役キープレイヤー: 朴智星(マンチェスター・ユナイテッド)、朴主永(ASモナコ)

国内リーグ: Kリーグ
代表クラブ: 城南一和天馬、水原三星ブルーウィングス

 予選でイラン、サウジアラビア、北朝鮮など強国と同組になりながら無敗で突破し、いまやアジアでは頭一つ抜ける存在となっている。アジアサッカー史上、最も成功を収めた選手となりつつある朴を中心に、欧州で活躍する選手も多い。運動量の豊富さは折り紙つきで体の強さも屈強なヨーロッパの選手に引けを取らない。8度の本大会出場を果たしているが、ホームで行われた日韓大会以外は全てグループステージ敗退に終わっている。前回大会ではアジア勢がグループステージで全滅しているだけに、アジアNo.1の意地を見せてほしい。


国名: 日本
首都: 東京
人口: 約1億3000万人

FIFAランク: 40位
W杯出場回数: 4度目(4大会連続)
初出場時成績: グループステージ敗退(98年フランス大会)
W杯最高成績: ベスト16(02年日韓大会)
ドイツW杯成績: グループステージ敗退

監督: 岡田武史
愛称: 岡田ジャパン、ブルーサムライ(海外ではこちらの愛称で通っている)
歴代名選手: 釜本邦茂、中田英寿
現役キープレイヤー: 中村俊輔(エスパニョール)、遠藤保仁(G大阪)

国内リーグ: Jリーグ
代表クラブ: 鹿島アントラーズ、川崎フロンターレ

「日本はいいサッカーをする」。ワールドクラスの選手たちは口を揃えて日本をこう評する。これはお世辞でも何でもない。彼らから見ても日本は教科書どおりの「いいサッカー」をするのだ。しかしこの言葉は、日本サッカーに特徴が無いことの裏返しでもある。「いいサッカー」をするが特徴があるわけではない。世界の舞台では日韓大会を除いてほぼノーインパクトの日本。まずは「いいサッカー」を返上するため、世界に向けてなんらかの強烈なインパクトを発信する大会にしたい。


国名: 朝鮮民主主義人民共和国
首都: 平壌
人口: 約2300万人

FIFAランク: 90位
W杯出場回数: 2度目
初出場時成績: ベスト8(66年イングランド大会)
W杯最高成績:ベスト8(66年イングランド大会)
06年ドイツW杯成績:予選敗退

監督: キム・ジョンフン
愛称: チョルリマ(千里馬)
歴代名選手: 朴斗翼
現役キープレイヤー: 鄭大世(川崎F)

 66年イングランド大会でイタリアを破ってベスト8入りを果たすなど世界に衝撃を与えた北朝鮮。その勇姿は「奇蹟のイレブン」というドキュメンタリー映画にもなった。アジア予選でも鉄壁の守備と鄭を中心としたカウンターを武器に勝ち上がってきた。チョルリマの愛称が示すとおり、勝利のために90分間走り続けられる強靭な肉体と不屈の闘志が武器。Jリーグにゆかりのある選手も多く、我々からは選手個人に注目してみるのも面白い。44年前の大躍進の再現を果たすことはできるのか。