10日、キリンチャレンジカップ2009が横浜・日産スタジアムで行なわれ、日本代表はスコットランド代表と対戦した。前半は一進一退の攻防の中、両者無得点で折り返す。後半開始早々に森本貴幸(カターニャ)がピッチに入り代表デビューを飾るが、なかなか得点は生まれない。試合が動いたのは後半36分。左サイド駒野友一(磐田)のクロスがDFに当たり、オウンゴールで日本が先制する。さらに終了間際の後半44分、森本が放ったシュートの跳ね返りをゴール前につめた本田圭佑(VVVフェンロ)が押しこみダメ押し点を奪う。試合はこのまま終了、2−0で日本がスコットランドを下した。

 駒野、左サイドから2得点を演出(日産ス)
日本代表 2−0 スコットランド代表
【得点】
[日] オウンゴール(81分)、本田圭佑(89分)
 2日前にアジアカップ予選・香港戦を戦った日本代表は、先発全員を入れ替えて試合に臨んだ。DFに代表デビューとなる岩政大樹(鹿島)、中盤には5年半ぶりの代表復帰となった石川直宏(F東京)、FWではJリーグで15ゴールを挙げ得点ランクトップを走る前田遼一(磐田)が先発した。「様々な状況に応じて色々な選手を試していきたい」と今回の代表3連戦のテーマに掲げた岡田武史監督。過密日程の中、これまで試す機会の少なかった選手を数多く先発出場させた。

 スコットランド代表は来日直前でダレン・フレッチャー(マンチェスター・ユナイテッド)ら主力メンバーの多くが招集を辞退したが、それでもフィジカル能力に長けるFWリー・ミラー(アバディーン)らに高いボールを集め攻撃の形を作った。日本の最終ラインに入った岩政、阿部勇樹(浦和)は身長の高い相手との競り合いでもしっかりと体を寄せ、決定的なシーンを作らせない。中澤佑二(横浜FM)、田中マルクス闘莉王(浦和)に続くセンターバックの候補として両者とも十分な働きを示した。

 中盤では中村憲剛(川崎F)と本田圭佑(VVVフェンロ)が起点となり、石川や前田へボールを供給した。しかし、試合の立ち上がりから選手同士の息があわず、なかなか効果的なパスがつながらない。それでも30分過ぎからはだんだんとパスが通り、好機を演出し始める。

 40分には今野泰幸(F東京)のパスを左サイドに上がった石川がドリブルで深く切り込み、ゴール前に走りこんだ中村憲へラストパス。左足で放ったシュートはゴール横に外れたが、緩急つけた攻撃はゴールの可能性を感じさせた。少々間延びした展開の前半だったが、徐々に日本が主導権を握り0−0で折り返す。

 ハーフタイムをはさんだ後半10分、前田に代わり森本がピッチに姿を現わす。待望の代表デビューに、会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。

 日本が後半初めてのビッグチャンスを作ったのは19分。ゴール正面25m付近で中村憲が倒されて得たFKで本田が直接ゴールを狙う。枠内に飛んだボールをGKがはじき返したところへつめたのは内田篤人(鹿島)。右足でシュートを放つが、ボールは惜しくも枠を捕えることができず先制の絶好機を逃した。

 20分過ぎ、岡田監督は松井大輔(グルノーブル)、大久保嘉人(神戸)、徳永悠平(F東京)の3人を投入する。ここでフォーメーションを4−2−3−1から4−4−2へ変更。この交代で中村憲が中盤の底に下がり、松井が左サイドへ。森本と大久保の2トップとなった。

 中村憲からのボールでチャンスを作ったのは後半31分。縦パスに抜け出した森本がゴール前でためを作り、左サイドの松井へラストパス。シュートはDFに阻まれたものの、いい形でスコットランドゴールに迫った。中村憲がボランチに下がったことでビルドアップがスムーズになり、本田が中央でボールキープする機会も増えバランスがよくなった。

 日本が先制点を挙げたのは後半36分。今野との交代でピッチに入ったばかりの駒野が左サイドをオーバーラップし、DFラインとGKの間に低いクロスを上げる。ゴール前へ森本が走りこみ合わせようとしたところ、スコットランドDFが足を伸ばしクリア。そのボールがそのままゴール左隅に吸い込まれ、1−0となった。オウンゴールでの得点となったものの、DFのクリアがなくても、森本が触るだけで1点というシーンだった。細かいパスから中盤を押し上げゴール前の人数も足りており、波状攻撃が先制点につながった。

 日本が主に好機を演出したのは左サイドから。途中交代でピッチに入った松井がドリブルで仕掛けるところに森本が絡み、スコットランドDF陣を混乱させた。この2人のコンビは岡田JAPANの新しい攻撃のカードとなるかもしれない。

 試合終了間際には、再び左の駒野からニアサイドへ低いクロスを上げる。そこへ走りこんだ森本が一旦キープし、振り向きざまにシュート。一旦はDFがカットするが、右サイドにこぼれたボールにつめたのは本田だった。冷静にGKの動きをみて左足でゴールに流し込み2点目を奪う。本田の代表2ゴール目は試合を決定づける得点となり、このまま試合は終了。日本がスコットランドを2−0で下した。

 試合後、岡田監督は「前半はなかなかテンポが出なかったが徐々によくなっていった。選手それぞれが持ち味を出しよくやってくれた。岩政、石川、森本もチームで十分にやっていける」とスコットランド戦を振り返った。

 主力の中村俊輔(セルティック)、遠藤保仁(G大阪)、中澤らを温存した布陣で勝利を収めた日本代表。主力が抜けていたとはいえ、世界ランク30位の相手に結果を残すことができた。試合の中でフォーメーションを変え、様々な布陣をテストできたことは収穫だ。

 中でも動きが光っていたのは中村憲。後半、日本がいいリズムを作ったのは彼が中盤の下がり目のポジションに入ったところから。W杯最終予選の序盤ではベンチを温めることが多かった中村憲だが、今や代表に欠かせないキープレーヤーとなっている。今日の試合では中村俊、遠藤が不在だっただけに、ボールに触れるプレーが多く持ち味が十分に発揮された。ただ、中盤には長谷部誠(ヴォルフスブルク)もいるだけに手駒が余剰気味になっている。才能あふれる中盤の選手をどう使いこなすか。今後、岡田監督を大いに悩ませることだろう。

 また、本田や森本といった若い世代も中心メンバーになりうるポテンシャルを秘めることが実証された。本田の密集でも奪われないキープ力は魅力があり、森本のゴール前での迫力ある動きも貴重な武器になる。いうまでもなく両者ともに高い得点力を備えている。レギュラーの座をほぼ手中にしている岡崎慎司(清水)も、もともとは北京五輪組だ。若い世代が南アフリカW杯に向け、力をつけていること代表にとって心強い。これまで中心に考えられてきた玉田圭司(名古屋)や中村俊も今後の働き次第では、南アフリカのピッチに立つことができるかはわからない状況になるだろう。

 14日のトーゴ戦(宮城)では8日の香港戦、10日のスコットランド戦を踏まえ、ベストの布陣で戦う日本代表。本大会出場を狙う選手たちの激しいレギュラー争いはさらに熱を帯びることになる。W杯上位進出に向け、岡田監督がどのような布陣で4日後の試合に臨むか注目される。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
岩政大樹
阿部勇樹
今野泰幸
内田篤人
→徳永悠平(65分)
MF
稲本潤一
→駒野友一(80分)
橋本英郎
→大久保嘉人(65分)
中村憲剛
石川直宏
→松井大輔(65分)
本田圭佑
FW
前田遼一
→森本貴幸(55分)