気持ちのいい胴上げでした。後期シーズンを制し、就任2年目で初優勝。優勝して胴上げされるのは初体験でしたから、とても良かったです。
 優勝の要因は選手ひとりひとりが持ち味を出してくれたこと。競った展開でもピッチャーが抑え、バッターがいいところで打って白星を積み重ねることができました。

 選手たちを支えた2人のコーチにも感謝です。森山一人コーチは前期の反省を踏まえ、野手陣にバットを振りこませて技術面、精神面の向上に力を尽くしてくれました。加藤博人コーチはチーム防御率1点台と前期に引き続き、いい投手陣を整備してくれました。

 投手陣では2年目の東風平光一が先発、中継ぎとフル回転してくれたことが大きかったです。しかも、後期は防御率0点台で4勝0敗と抜群の成績を残しました。

 また抑えの阿部直晃も新人ながら11セーブをあげ、厳しいところで頑張りました。ボールに威力があり、思い切って勝負する度胸もありますから、この先もコンスタントに結果を出していけば、上のレベルを狙えるでしょう。

 正田樹小林憲幸の先発2本柱以外にも、伴和馬が後期4勝をあげるなど連戦でも計算できるピッチャーが増えました。伴はメンタルが強くなり、マウンド上でいい意味での余裕が感じられるようになりましたね。

 前期、勝負弱さが目立った打線は、トップバッターで高田泰輔がよく引っ張ってくれました。プレーのみならず、ベンチでもよく声を出し、チームリーダーとしての自覚を感じられた後期になりました。

 中軸のザック・コルビー、内野の要である四ツ谷良輔も前期は精彩を欠きましたが、本人たちとコミュニケーションをとる中で、持ち味が出てきました。後期は2人とも3割以上の打率をマーク。キーマンとして、いい働きをしてくれたと感じています。四ツ谷は守りでも非の打ち所のないプレーをみせてくれました。

 外国人のファン・ヘイドーンラファエル・ポロもトータルの打率は高くなかったものの、いい場面で打って助っ人としての力を発揮してくれました。ポロは明るくて元気が良く、ムードメーカーとしても貴重な存在でした。

 後期を振り返ると、1−0の勝利が4試合。守り勝つ野球を実践できたことが、チーム力をアップさせました。またポイントになる試合をあげるとすれば、9月3日の徳島との首位攻防でしょう。5回表を終わって0−5と苦しい展開ながら、打線がつながり、11−5と逆転勝ち。この勝利でチームが一気に波に乗ったと思います。事実、この試合も含めて9連勝で優勝を決めました。

 いよいよ次は前期覇者・香川とのリーグチャンピオンシップです。相手は首位打者の大木貴将や本塁打王の中川竜也を擁する強力打線ですが、後期の対戦成績は勝ち越しており、投手陣が抑えています。

 短期決戦ですからカギを握るのは先発の出来です。こちらは正田、小林、東風平の3枚で挑みます。香川は前期とは違い、中日に移籍したドリュー・ネイラーが抜け、絶対的なピッチャーはいません。先発を攻略すれば、十分勝ち目はあります。

 後期最終戦から中1日でチャンピオンシップに突入するだけに、いかに万全のコンディションで臨ませるかもポイントです。残り試合、起用法を考えながら、いいチーム状態で決戦を迎えたいと思っています。

 狙うは、もちろん球団初の年間優勝。第3戦以降(25日〜)はホーム・坊っちゃんスタジアム(松山)での戦いになります。地元ファンの皆さんの声援を力に、なんとか3つ勝って、もう一度、胴上げの瞬間を迎えたいものです。ぜひ、たくさんの応援をよろしくお願いします。


弓岡敬二郎(ゆみおか・けいじろう)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1958年6月28日、兵庫県出身。東洋大姫路高、新日鐵広畑を経て、81年にドラフト3位で阪急(現オリックス)に入団。1年目からショートのレギュラーとなり、全試合出場を果たすと、84年には初の打率3割を記録してリーグ優勝に貢献。ベストナインとダイヤモンドグラブ賞を獲得する。87年にもゴールデングラブ賞に輝き、91年限りで引退。その後もオリックス一筋で内野守備走塁コーチ、2軍監督、2軍チーフコーチ、スカウトなどを歴任。13年をもって33年間在籍したチームを退団し、愛媛の監督に就任した。現役時代の通算成績は1152試合、807安打、打率.257、37本塁打、273打点、132盗塁、240犠打。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)
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