打ち上げの場所は麻婆豆腐で有名な中華料理屋だった。実は私、最も苦手な食べ物が豆腐なのです。

「なんで、あんな美味しいものを!」とよく驚かれるが、答えようがない。苦手なものは苦手なのだ。

 子どもの頃、私の偏食を心配した母が、こっそり味噌汁の中に、米粒程度に刻んだ豆腐を入れた。ひと口すすった瞬間、私はパニックになり、トイレに駆け込んだ。あの思い出は悪夢だ。

 予定どおりコース料理の最後に麻婆豆腐が出てきた。隣に座っていたスタッフのHに「オレはいいから」と小声で断ったにもかかわらず、無視されてしまった。並々と皿に盛り、テーブルの上にドン。

「これは、美味しそう!」。自らのも皿に盛り、額に汗を浮かべながら、麻婆豆腐をブルドーザーのシャベル張りにかきこんでいくH。ハァ、ハァ、ハァ。「思ったより、辛いですね、。これ」。汗だくになりながら、麻婆豆腐と格闘し続ける。

 食べ終えると、チラリとこちらを見てポツリ。「あれ、ひと口も食べてないのに、なぜ汗をかいているんですか?」

 それは“怒りの冷や汗”ってもんだよ!

(編集長N)
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