2010年のJリーグで活躍した選手や監督などを表彰するJリーグアウォーズが6日、都内で開催され、最優秀選手、ベストイレブンを含めた各種表彰が行われた。最優秀選手賞(MVP)には初のリーグ制覇を果たした名古屋グランパスの守護神・楢崎正剛が選出された。GKのMVP受賞はリーグ18年目で初めて。最優秀監督には同じく名古屋のドラガン・ストイコビッチ監督が選ばれ、今季から新人王に替わって設けられたベストヤングプレーヤー賞(21歳以下でリーグ戦に17試合以上出場した若手を対象)にはガンバ大阪の宇佐美貴史選手が輝いた。
(写真:プレゼンターの荒川静香氏(右)よりMVPのトロフィーを授与される楢崎)
 ベストイレブンではG大阪の遠藤保仁が最多となる8度目の受賞。今季名古屋に移籍し、リーグVに貢献した田中マルクス闘莉王が7年連続7度目のベストイレブンに選ばれた。優勝した名古屋からはMVPを獲得した楢崎、闘莉王のほか、増川隆洋、ダニルソン、ケネディと5選手がベストイレブンに入った。

「GKの僕が賞をもらえたことに価値がある。他のGKの励みになる。それがうれしい」
 MVP受賞のスピーチで楢崎は控えめに喜びを表現した。「歴代の受賞選手や、壇上の(優秀選手賞)の顔ぶれをみて、こんな賞をもらっていいのかなと思う」と本人は語ったが、今シーズンはMVPにふさわしいプレーぶりをみせた。リーグ戦は全34試合でゴールマウスを守り、483本のシュートを浴びた。これはGK別では今季、最も多い。しかし、失った点はわずか37。こちらはリーグで3番目に少なかった。一番後ろからチームを落ち着かせ、奮い立たせる彼の存在なくして2010年の名古屋は語れなかった。

 34歳での受賞は史上最年長になる。今年は南アフリカW杯を経て、9月に代表引退を表明した。しかし、サッカーへの情熱が衰えているわけではない。
「まだまだサッカーをエンジョイしたい。試合にも勝ちたい。そしてJリーグ、日本サッカー発展のために、いいプレーをしっかりと続けていきたい」
 今後の目標を力強く語って、受賞スピーチを締めくくった。

 その楢崎らを擁する名古屋を頂点に導いたストイコビッチ監督は現役時代、95年にMVPを獲得している。MVP受賞者が指導者として最優秀監督賞に輝くの史上初だ。「私は最優秀監督だとは思っていない。この18年間、選手たち、チームが一丸となってやってきた。そのおかげでこの賞をいただけたと思っています」。表彰式ではそう感謝を述べると、サポートしてくれたスネジャナ夫人に「I Love You」と語りかけ、壇上に招いて抱擁とキスを交わした。
(写真:「これからも美しいサッカーができるよう指導していきたい」と目標を掲げるストイコビッチ監督とスネジャナ夫人)

 得点王は最終節で1ゴールずつをあげた前田遼一(ジュビロ磐田)とケネディ(名古屋グランパス)が分け合う形になった。17ゴールのうち、前田が9点、ケネディが8点をヘディングシュートで奪うなど2人は得点パターンも似かよっていた。史上初の2年連続での得点王となった前田は「僕が2年連続ここに立てるのは、チームメイトのおかげ」と謙虚なコメント。「特に最終戦は、(得点王を取らせようと)僕にボールを集めてくれた。チームが大敗してしまったのはリスクを負ってでも点を取らせてやろうとみんなが思ってくれたからかもしれない」と苦笑いした。残念ながら17得点での得点王は、リーグ18年目で最も少ない。単独での得点王を狙いたかったのでは、との声にも「2人のほうが気が楽です(笑)」とピッチ以外では物静かなストライカーらしい発言で周囲を沸かせた。

 一方、冗舌なスピーチで会場を盛り上げたのはベストイレブンとフェアプレー個人賞を獲得した槙野智章(サンフレッチェ広島)だ。壇上で「僕の夢は2つある」と明かし、「ひとつは2014年W杯で日本が優勝すること」と話すと、場内からは「ウォー」と声があがった。そして、「もうひとつは日本でサッカー文化を興し、子どもたちに夢を与えること」と語り、すっかり名物になったゴールパフォーマンスへの思いを口にした。「サッカーファン以外の人にもサッカー好きになってほしいし、これからの子供たちにも、もっとサッカーを好きになってほしいという一心でやらせてもらっている」。最後は「ぜひ、もっといろいろなパフォーマンスを、いろいろなチームにやっていただきたい」と呼びかけ、参加者から大きな拍手をもらっていた。
(写真:優勝した名古屋を祝福しつつ、「背の高い選手やカタカナ名の選手、うちに欲しい選手がたくさんいる」と笑いを誘った槙野)

 来季のJリーグにはガイナーレ鳥取が参入し、J2が20クラブに増加。J1には柏レイソル、ヴァンフォーレ甲府、アビスパ福岡が復帰し、J2にはFC東京、京都サンガF.C.、湘南ベルマーレが降格する。

<2010 Jリーグアウォーズ受賞者一覧>

○最優秀選手賞 
楢崎正剛(名古屋グランパス)

○ベストイレブン
GK 楢崎正剛(名古屋グランパス)
DF 田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)、増川隆洋(名古屋グランパス)、槙野智章(サンフレッチェ広島)
MF 中村憲剛(川崎フロンターレ)、マルシオ・リシャルデス(アルビレックス新潟)、藤本淳吾(清水エスパルス)、ダニルソン(名古屋グランパス)、遠藤保仁(ガンバ大阪)
FW 前田遼一(ジュビロ磐田)、ケネディ(名古屋グランパス)

○得点王 
前田遼一(ジュビロ磐田) 17得点
ケネディ(名古屋グランパス) 17得点

○最優秀監督賞
ドラガン・ストイコビッチ(名古屋グランパス)

○ベストヤングプレーヤー賞 
宇佐美貴史(ガンバ大阪)

○最優秀主審賞
西村雄一

○最優秀副審賞
相樂亨 

○フェアプレー個人賞
槙野智章(サンフレッチェ広島)

○フェアプレー賞 J2
該当クラブなし

○フェアプレー賞 J1
モンテディオ山形
横浜F・マリノス

○フェアプレー賞 高円宮杯
サンフレッチェ広島

○最優秀育成クラブ賞
FC東京

○年間優勝チーム表彰
名古屋グランパス

○J2優勝表
柏レイソル

○Jリーグベストピッチ賞
日産スタジアム
アウトソーシングスタジアム日本平