AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦が24日、25日に行なわれる。今回は、出場した日本勢全4クラブが決勝トーナメント進出を果たした。3季前の王者ガンバ大阪は、初出場セレッソ大阪との大阪ダービーが実現。ここ2年、アジアを制している韓国勢は3クラブが進出し、FCソウルが鹿島アントラーズ、水原三星が名古屋グランパスと、日本勢の前に立ちふさがる。ダービーマッチに、宿敵・韓国のクラブとの対戦など、決勝トーナメントは初戦から注目カードが目白押しだ。
 1回戦最注目のカードは、日本勢同士の対決となった大阪ダービーだろう。両チームともに攻撃陣に豊富なタレントを揃えるだけに、得点の奪い合いが予想される。過去の大阪ダービーは、G大阪が20勝10敗3分けと、大きくリードしている。また、今季のJリーグ開幕戦でも、G大阪が万博競技場で2対1と勝利しており、今回の対戦はG大阪の優勢といえるだろう。

 2008年にACL制覇を果たしているG大阪は、グループリーグを苦しみながらも首位通過した。並行して行なわれているJリーグも、2試合消化が少ない中で、現在首位の柏レイソルとの勝ち点差4につけており、好調だ。チームを支えるのが、エース・アドリアーノだろう。Jリーグでは6戦で6得点をあげ、得点ランキング単独トップ。決勝トーナメント初戦で激突するC大阪は古巣となる、直近の対戦となった今季の開幕戦でもゴールを決めている。
 もう1つの好材料は、期待の若手・宇佐美貴史の復調だ。昨季11ゴールをあげた若武者も今季は公式戦8試合で得点ゼロ。しかし、11日に行なわれた天津泰達とのグループリーグ最終戦、ロスタイムにPKを獲得した際、キッカーとなったのは、名手・遠藤保仁ではなく、宇佐美だった。昨季ベストヤングプレーヤー賞に選ばれ、更なる期待を背負う19歳のアタッカーは、それを落ち着いて決め、今季初ゴールをマーク。その4日後のJリーグでも、後半8分に、強烈なミドルシュートを決め、チームの勝利に貢献している。攻撃サッカーが売りのG大阪だけに、ブラジル人ストライカーと若きアタッカーの出来が勝敗のカギを握るだろう。

 対戦成績では分が悪いC大阪だが、初挑戦のACLでここまで健闘を見せている。グループリーグを4勝2敗の2位で決勝トーナメント進出。中でも乾貴士とホドリゴ・ピンパォンがグループリーグで4得点と好調をキープしている。2人に加え、司令塔のマルチネス、キム・ボギョン、清武弘嗣といった攻撃陣でG大阪守備陣をゆさぶりたい。

 Jリーグでは最多のJ14冠を誇る鹿島が、未だに手にしていないのが、アジア王者のタイトルである。今季は無敗でグループリーグを通過したが、08年から3季連続決勝トーナメント初戦で敗退している。対戦するFCソウルとは、09年にホームで戦い、PK戦の末に敗れた。2年前の雪辱を果たすためには、不安定な守備陣の整備が急務だ。今季のJリーグでは15位と低迷し、3失点を喫した試合がすでに3つもある。21日に行なわれた浦和レッズとの試合では、2点のリードをふいにして、引き分けに持ち込まれた。かつては、盤石の体制を敷いていた鹿島も、西大伍や遠藤康ら若手を起用するなど、現在は世代交代の最中だ。FCソウルには、マウリシオ・モリーナという強烈なシュート力を持ったレフティーがいる。セットプレーでも力を発揮するコロンビア人に、守備の綻びを突かれるようだと、鬼門突破は厳しい。

 昨季のJリーグ王者・名古屋にとって、2季ぶりの決勝トーナメントは険しい道のりとなりそうだ。その理由は続出する怪我人の多さ。金崎夢生、ジョシュア・ケネディ、増川隆洋ら主力選手の故障が相次いでいる。さらに21日の柏レイソル戦では、千代反田充と吉田真紀人が負傷した。特に増川と千代反田が抜けたセンターバックの駒不足は深刻だ。怪我から戻ってきたばかりの田中マルクス闘莉王への負担は、増えるばかりだろう。敵地で戦う水原三星との一戦には、起用が予想される大卒2年目のDF新井辰也の奮起が必須となるだろう。

 対戦相手の水原三星は、グループリーグを無敗で勝ち上がっており、12得点3失点と攻守に安定した成績を残している。4月19日の鹿島戦では5バックと守備的な布陣を敷き、引き分けに持ち込むなど、試合巧者ぶりが光った。万全とは言えない名古屋の守備陣が、隙を見せるようだと、そこをすかさず突いてくるはず。不安が募る守備陣をカバーするのは、攻撃陣だ。藤本淳吾と、永井謙佑の新戦力のコンビに大きな期待がかかる。グループリーグでも力を発揮した藤本のプレースキック、永井のスピードを生かした突破、それぞれの持ち味を生かしたプレーで、水原三星に対抗したい。

 昨季は決勝トーナメントに進んだ日本勢2チームがすべて初戦で敗れ、早々とACLの舞台から去ることとなった。今季は大阪勢の直接対決があるため、少なくとも1チームはベスト8に進む。ただ、昨季は城南一和、一昨季は浦項スティラーズと韓国にアジア王者のタイトルを明け渡しており、日本勢としては黙っていられないだろう。今大会で優勝すると参加資格が得られる12月のクラブW杯は日本で開催される。開催国枠があるとはいえ、アジア王者として3年ぶりの日本でのクラブW杯を盛り上げたい。

【アジアチャンピオンズリーグ 決勝トーナメント1回戦】(※左がホーム)
◇5月24日(火)
G大阪 × C大阪
全北現代(韓国) × 天津泰達(中国)
セパハン(イラン) × プニョドコル(ウズベキスタン)
アルイテハド(サウジアラビア) × アルヒラル(サウジアラビア)
◇5月25日(水)
FCソウル(韓国) × 鹿島
水原三星(韓国) × 名古屋
アルサッド(カタール) × アルシャバブ(サウジアラビア)
ゾブ・アハン(イラン) × アルナスル(サウジアラビア)