現在、ドイツで開催されているFIFA女子ワールドカップは9日より決勝トーナメントに突入する。第1回大会から6大会連続の参加となった日本は、グループリーグを2勝1敗で通過。初のベスト4をかけて大会3連覇を狙うホスト国・ドイツと9日(日本時間10日)に激突する。ここまでのなでしこジャパンの戦いぶりを振り返りつつ、強敵との大一番を占う。
 過去最高のFIFAランキング4位でW杯を迎えた日本は、グループリーグ初戦のニュージーランド、2戦目のメキシコを順当に撃破。早々と決勝トーナメント進出を決めた。その強さは組織力と個の力の融合にある。組織では前線からプレスをしっかりかけ、ボールを奪うと2列目からの飛び出しも含めて厚い攻撃を展開する。このW杯に向けて磨いてきた攻守の切り替えの早さが光った2試合だった。

 個でも、今大会のなでしこジャパンは人材豊富だ。32歳のベテラン、澤穂希(INAC神戸レオネッサ)はメキシコ戦でハットトリックを達成。釜本邦茂さんの持つ国際Aマッチでの通算得点記録(75点)を抜いた。その決定力はもちろん、ボランチとしてチーム全体のバランスを保てる点で、今の日本には欠かせない。30歳を過ぎてもハードワークでチームを牽引する姿は良き手本にもなっている。

 前線では永里優季(ポツダム)、安藤梢(デュイスブルク)とドイツでプレーする2トップが高い攻撃力を持つ。永里はニュージランド戦で、味方のスルーパスにうまく抜け出すと、GKの動きをよく見て、技ありのループシュートを決めた。安藤も屈強な欧州勢を相手に培った1対1の強さをみせる。そして攻撃の最終兵器は18歳の岩渕真奈(日テレベレーザ)だ。グループリーグでは3試合とも途中出場。得点こそないが、持ち前のスピードで相手DF陣を崩し、何度もチャンスを演出した。

 また中盤では宮間あや(岡山湯郷)が正確なボール回しで攻撃にリズムをつくった。“女・俊輔”とも呼ばれるプレイスキックの名手。ニュージーランド戦ではペナルティーアーク付近で得たFKをゴール右隅に叩き込み、決勝点をあげた。メキシコ戦では2アシストと、司令塔としての役割を十二分に果たしている。

 だが、なでしこジャパンが決勝トーナメント初戦で当たるのはFIFAランキング2位のドイツだ。個々の能力を生かしたサッカーでグループリーグは3連勝。同1位で通過している。国際Aマッチ126得点のエースストライカー・プリンツこそ無得点だが攻撃力は高い。日本は過去ドイツと6敗1分。3年前の北京五輪でも3位決定戦で苦杯をなめ、メダルを逃した。

 日本はグループリーグ最終戦で敗れたイングランド戦をいい教訓としたい。この試合、なでしこジャパンは体格差のある欧州の選手に対し、守りでは1対1で競り負け、ボールを持っても相手の早い寄せにパスがつながらなかった。同じ欧州勢であるドイツに、このような展開に持ち込まれれば勝つ確率は極めて低くなる。完全アウェーの中、劣勢を挽回するのは至難の業だ。ニュージーランド戦やメキシコ戦でみせた攻守の早い切り替えで、数的優位の時間帯を増やし、なるべく主導権を渡さないようにしたい。

 特に体格で劣るだけにロングボールへの対応は要注意だ。イングランド戦では相手の最終ラインから放り込まれ、先制点を許した。その二の舞は避けたい。ドイツは3試合で3失点と守備にスキがある。カギを握るのは前線の永里、安藤だろう。ドイツでプレーしていることもあり、相手DFの特徴をよく知っている。少ないチャンスをモノにして先制し、相手の焦りを誘えば勝機が出てくるはずだ。

 史上最強とも言われる今回のなでしこジャパン。ホスト国に対し、“8度目の正直”で日本女子サッカー界の歴史に新たな花を咲かせたい。