7日、ポルトガルで行われているアルガルベ杯の優勝決定戦で、なでしこジャパン(女子日本代表)は女子ドイツ代表と対戦した。日本は2−3の1点ビハインドで迎えた後半45分、FW永里優季(ポツダム)のゴールで追いつくものの、直後にFWオコイヌダエムバミに決勝弾を許して試合終了。同大会初優勝はならなかった。

 粘り見せるも、守備陣崩壊(ファーロ)
日本代表 3−4 ドイツ代表
【得点】
[日] 川澄奈穂美(35分)、田中明日菜(55分)、永里優季(90分)
[ド] マロジャン(20分)、オコイヌダエムバミ(22分、87分、90分+1)
 決して後ろ向きな敗戦ではなかった。タイトルのかかった試合とはいえ、ロンドンに向け、強豪との貴重な実戦機会。米国戦に続いて澤穂希(INAC神戸)を体調不良で欠くなか、佐々木則夫監督は、これまで左MFを務めてきた宮間あや(岡山湯郷)をボランチ、右サイドバックにデンマーク戦で代表デビューした有吉佐織(日テレ)を起用するなど、勝負にこだわりつつも新しい布陣をテストした。

 ただ、その実験は裏目に出た。開始から日本は連係不足を露呈してドイツに押し込まれる。守備陣は相手のロングボールを警戒してラインを押し上げられず、逆に前線の選手たちは高い位置で勝負しようとしたため、距離が間延びした。中盤にスペースが生じてセカンドボールを拾われ、ボールを持っても攻撃の起点となるボランチのMF阪口夢穂(日テレ)、宮間が素早いプレスを受けてつぶされる。

 そんな前半20分、先制点を奪われる。右サイドにロングボールを通され、クロスを入れられると、ニアサイドでMFマロジャンに合わされた。さらに2分後には、左CKからオコイヌダエムバミに頭で叩き込まれて0−2。あっという間に差を広げられる。

「出だしが悪く、リズムを取れなくて失点してしまった」と佐々木監督が振り返る前半だったが、35分には、MF川澄奈穂美(INAC神戸)が1点を返す。FW安藤梢(デュイスブルク)からPA内左でパスを受けると、DFをかわして右足を振り抜く。シュートはゴール右サイドネットに吸い込まれた。勢いが出た日本は42分、PA内右で永里がフリーでシュート。これはGKの正面を突き、1点ビハインドの状況で前半を折り返した。

 日本は後半開始とともに、MF田中明日菜(INAC神戸)、DF近賀ゆかり(INAC神戸)、DF熊谷紗希(フランクフルト)の3選手を投入。宮間も本来の左MFに戻した。慣れ親しんだ布陣に戻ったことで、日本はパスが回り始め、持ち味の前線からのプレスも激しさが出てくる。
 迎えた後半10分、同点ゴールが生まれた。決めたのは後半から入った田中だ。左ショートコーナーから川澄が仕掛けたクロスに永里がファーサイドにずらしたところへ滑り込んだ。起用が当たり、してやったりの佐々木監督もベンチで笑みを浮かべた。

 日本は前半とは見違えるほどに各選手の球離れが早くなり、ドイツ陣内のスペースに前線の選手が走り込む場面が増えてくる。しかし、逆転ゴールを奪うことができない。34分には、阪口が宮間の左CKに頭で合わせるものの、わずかにゴール右へ。逆にドイツにカウンターから決定的な場面をつくられるなど、試合は昨年のW杯準々決勝と同様に一進一退の攻防が続く。

 同点でPK戦の可能性も出てきた42分、日本は痛恨のファウルを犯す。後半から左サイドバックにポジションを移していた有吉が裏を取られ、PA内で後ろから相手を引っ張って倒した。判定はPK。これをオコイヌダエムバミに沈められて勝ち越しを許す。

 それでも、なでしこは驚異的な粘りを見せた。劇的なゴールを呼び込んだのは、7日の米国戦で決勝弾を決めたMF高瀬愛実(INAC神戸)だ。右サイドから攻め込み、ゴール前へピンポイントクロス。GKがファンブルしたところを永里が押し込んだ。残る時間はロスタイムのみ。2度の同点劇で優勝を収めたW杯決勝の再現なるかと思われた。

 ところが、この日のなでしこは守りにスキがあった。直後に左サイドからのクロスに抜け出したオコイヌダエムバミにこの試合3点目許して万事休す。米国から初勝利を記録するなど、なでしこ史に残る大会は準優勝で幕を閉じた。

 タイトル獲得はならなかったものの、指揮官、選手は一様に手応えを感じている。DF岩清水梓(日テレ)は「まだ押し込まれる時間もあるが、(W杯と比べて)自分たちが有利に運べる時間が増えた。チームとしてやってきていることに間違いはない」と前を向いた。。佐々木監督も「現時点ではいい準備ができた。(大会で)成長した選手もいる」と振り返ったように、大黒柱の澤が不在のなか、ランキング上位の米国、ドイツと互角に渡り合えたことは、五輪へ向けて大きな収穫だ。W杯では控えだった高瀬、田中らが結果を出し、チームの層が厚くなった。ロンドン行きの切符を得られるメンバーは18人。今後、4月にホームで再び米国、そして世界ランク4位のブラジルと強化試合を行う。チーム内の熱い競争がなでしこを、もっと強くする。