23日、キリンチャレンジカップ2012が静岡・エコパスタジアムで行われ、日本代表はアゼルバイジャン代表と対戦した。日本は前半43分、MF香川真司(ドルトムント)のゴールで先制。その後、FW岡崎慎司(シュツットガルト)が追加点を奪いリードを広げた。守りでは失点を許さず、2−0で試合終了。6月から始まるブラジルW杯最終予選前のラストマッチを勝利で飾った。明日24日には、最終予選に臨むメンバーが発表される。

 本田、9カ月ぶり代表戦でアシスト(エコパ)
日本代表 2−0 アゼルバイジャン代表
【得点】
[日] 香川真司(43分)、岡崎慎司(58分)
 本番直前のテストマッチは有意義な90分間だった。
 アルベルト・ザッケローニ監督がこの試合に掲げたテーマは2つ。海外組のコンディションの確認と出場機会の少ない選手を起用して戦力を底上げすることだ。前者では9カ月ぶり昨年8月以来の代表復帰を果たしたMF本田圭佑(CSKAモスクワ)がゴールに絡んだ。後者はFW宮市亮(ボルトン)やDF酒井宏樹(柏)らが起用され、それぞれ持ち味を発揮した。

 前半、日本は本田と香川を中心に攻撃を展開。昨年8月の韓国戦以来となる2人のコンビでボールを支配し、主導権を握った。しかし、ゴールが遠い。19分には、香川が左サイドからPA内にドリブル。中央にスライドしながらの右足シュートはわずかに左へ外れた。本田も24分、右サイド、ゴールから約35メートルの位置で得たFKを得意の左足で狙った。速いボールがゴール右上に飛んだが、GKが触って、さらにポストにも当たり、得点には至らない。

 ノーゴールのまま前半を折り返すと思われた43分、待望の先制点が生まれる。決めたのは香川だ。MF長谷部誠(ヴォルフスブルク)が本田とのワンツーで中央突破し、PA内左サイドへスルーパス。抜け出した香川はスライディングで止めにきたDFを切り返してかわし、右足を振り抜く。ボールはカーブを描いてゴール右サイドに吸い込まれた。香川の高い技術が光るシーンだが、本田のプレーも大きかった。ピッチ中央で後ろから体を寄せられながらも確実にワンタッチパスをつないだ。本田の前線でボールを収められる強さと技術は、やはりザックジャパンの大きな武器だ。

 先制した日本は、後半開始からともにA代表デビューとなる酒井、MF高橋秀人(FC東京)を投入。ザッケローニ監督の積極的に選手を試す意図がうかがえる交代策だった。そんな後半13分、岡崎が追加点を奪う。ゴールを演出したのは、再び香川と本田だ。ゴール前には相手DFが揃っていたが、香川は左サイドを仕掛けてクロス。本田が頭で落としたところを岡崎が右足で押し込んだ。最終予選では、相手が守備を固めてくることが予想されるだけに、半ば強引にゴールを奪った、このゴールは本番に向けて大きな収穫となった。

 新戦力の選手たちも、海外組に負けじと躍動する。酒井が右サイドを攻め上がり、右足で得意の高速クロス。これがPA内中央に走りこんだ本田の頭にピタリと合うものの、GKの正面を突いた。2−0とリードが広がったことで、指揮官はさらに積極的にカードを切る。17分、香川に代えて宮市の投入を決断。ピッチサイドに背番号11が現れると、スタジアムに宮市コールがこだました。2月のウズベキスタン戦で初招集されたものの、出番はなし。宮市にとっても、サポーターにとっても、待望のA代表デビューとなった。

 そんな19歳FWが、さらにスタジアムを沸かせる。28分には、PA内左サイドでパスを受け、そこから右足でゴール逆サイドを狙う。ボールはカーブを描いてゴール右へ飛んだが、GKにはじき出された。その3分後、左サイドで相手DFとマッチアップし、迷わず縦に仕掛ける。一気に相手を振り切り、ゴールラインを割る寸前でクロス。岡崎のヘディングシュートを演出した。ゴールとはならなかったものの、屈強なDFが揃うプレミアリーグでも通用するスピードを見せ付けた。
 結局、3点目を奪うことはできなかったが、香川はリーグ戦からの好調を維持し、本田も「いつも通り」のプレーで最終予選に向けて問題のないところを見せてくれた。酒井や宮市といった新戦力も得意のプレーで存在感を示すなど、攻撃面は充実した内容だったといえる。

 一方、守備面では以前からの課題が突きつけられた。選手層の薄さである。今回、所属チームの事情により今野泰幸(G大阪)と吉田麻也(VVV)のレギュラーCBが招集を見送られた。代わりに起用されたのは栗原勇蔵(横浜FM)と伊野波雅彦(神戸)。しかし、伊野波はクロスボールの対応時に相手に体を入れられ、シュートを許す場面が見られた。栗原は相手にアプローチはかけたものの、簡単にスピードで振り切られ、何度もピンチを招いた。いずれもGK川島永嗣(リールセ)の好セーブや相手のシュート精度の低さで失点にはならかったが、今野と吉田の穴を埋められたとは言い難い。

 今野と吉田は最終予選のメンバーには入ってくるだろう。しかし、累積警告や負傷など、彼らを欠いた中での試合も十分にあり得る。その時に、大きく守備力が下がるようでは厳しくなる。最終予選を戦い抜く上で、控えの守備陣の強化が大きなポイントだ。

 指揮官が掲げたテーマをクリアした攻撃陣と課題を残した守備陣。これらを踏まえ、ザッケローニ監督は最終予選でどのようなチョイスをするのか。24日のメンバー発表後、ザックジャパンは予選突破のカギとなる3連戦(3日、対オマーン。8日、対ヨルダン。12日、対オーストラリア)に突入する。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
内田篤人
→酒井宏樹(45分)
栗原勇蔵
伊野波雅彦
→槙野智章(87分)
長友佑都
MF
細貝萌
長谷部誠
→高橋秀人(45分)
香川真司
→宮市亮(62分)
本田圭佑
→中村憲剛(74分)
岡崎慎司
FW
森本貴幸
→前田遼一(37分)