8日、日本代表はブラジルW杯アジア最終予選第2戦を埼玉スタジアム2002で行い、ヨルダン代表と対戦した。試合は日本が前半18分にFW前田遼一(磐田)のゴールで先制し、主導権を握る。その後はMF本田圭佑(CSKAモスクワ)、MF香川真司(ドルトムント)らがゴールを重ね、終わってみれば6−0。圧勝で最終予選2連勝を飾った。

 本田、3ゴール1アシストの大爆発!(埼玉)
日本代表 6−0 ヨルダン代表
【得点】
[日] 前田遼一(18分)、本田圭佑(21分、30分、53分)、香川真司(35分)、栗原勇蔵(89分)
 これぞエースだ。日本が本田の2試合連続の活躍で勝ち点を6に伸ばした。初戦のオマーン戦に続くマン・オブ・ザ・マッチは、3ゴール1アシストと強烈な輝きを放った。前節の試合後には「しっかり自分が出た試合は勝って、得点に絡む」と語っていただけに、公約を果たすかたちとなった。

 日本は試合開始からエンジン全開でヨルダン守備陣に襲い掛かる。5分には、MF岡崎慎司(シュツットガルト)が、MF遠藤保仁(G大阪)のパスに抜け出し、PA内で胸トラップから左足のボレーシュート。17分には、本田がPA手前から左足で狙った。いずれもGKに防がれたものの、強い圧力をかけ、ヨルダンを防戦一方に追い込む。

 そんな18分、本田のアシストで待望の先制点が生まれる。決めたのは前田だ。本田の右CKが相手と競り合った前田の肩に当たり、ボールは右上のバーに当たってゴールに吸い込まれた。精度の高いキックで前田の2試合連続ゴールをお膳立てする。

 先制の興奮が冷めやらぬ3分後、今度は本田自身がゴールネットを揺らした。遠藤がピッチ中央付近からダイレクトでPA内へ入れたボールに反応。後ろからはDF、前からはGKにプレッシャーをかけられながらも、落ち着いて左足でゴール左下へ流し込んでみせた。「どうだ」とばかりに右拳を振り上げるパフォーマンスに、超満員の埼玉スタジアムは早くも興奮の絶頂に達する。

 一方、ヨルダンは27分にFWアブダラー・ディーブがMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)との競り合いでヒジを出し、この試合2枚目のイエローカードで退場に追い込まれる。日本は早い時間帯で数的優位にも立ったことで、さらに攻勢を強めた。そんな30分、またも背番号4が歓喜の雄たけびをあげる。岡崎のPA内右からのシュートがこぼれたところを押し込み、とどめを刺した。「岡崎がシュートを打つタイプだとわかっていたから生まれたゴール」。そう本田は語る。誰かがシュートを打てば、しっかりと詰める。オマーン戦でも見られたゴールへの意識の強さと反応の速さがもたらした得点だった。

 本田が目立てば、この男も黙ってはいない。先日、名門マンチェスター・ユナイテッドへの移籍に合意した香川だ。35分には、4点目を生み出す。DF内田篤人(シャルケ)からPA手前でパスを受けると、冷静にゴール右下を狙った。ゴール前でバウンドしたボールは、カバーに入ったDFをあざ笑うかのようにゴールへ吸い込まれる。日本は4−0とリードを大きく広げ、試合を折り返した。

 後半は、立ち上がりこそ立て続けにシュートを許したものの、本田、香川が積極的にボールに絡み、ペースは再び日本に傾いていく。7分、PA左サイドを仕掛けた前田が倒され、PKを獲得。スポットにボールをセットしたのは、本田だ。ゆっくりとした助走から、ゴール中央に蹴り込んだ。これでハットトリック達成。最終予選では1997年のフランスW杯最終予選ウズベキスタン戦で三浦知良(横浜FC)が達成して以来の快挙だった。

 この夜は、これでMF中村憲剛(川崎F)と交代してお役御免。だが、本人は「監督には4点目を狙いたかったと伝えた」とまだまだ貪欲だ。ベンチに下がるスターに6万人が大喝采を送った。

 日本は、その後も貪欲にゴールを狙い、中村、香川らが惜しいシュートでスタンドを沸かす。44分にはショートコーナーから長友がファーサイドへクロスをあげ、途中出場のDF栗原勇蔵(横浜FM)が、豪快に頭で叩きこんだ。圧巻のゴールショーは栗原のうれしい代表初ゴールで締めくくられた。

「本田は代表を10カ月間離れていたので、その分を取り返してほしかった。これだけでは足りないので、満足せずにもっと決めてほしい」
 試合後、アルベルト・ザッケローニ監督は、この日のヒーローに更なる高みを求めた。その監督会見中に報道陣の前に現れた本田は「相手がマンツーマンでついてきていたので、最初はやりづらかった。でも、こっちが先制してから変わり始めた。(前田)遼一君が決めてからスペースが空いてきた」と振り返った。オマーン戦も自身のゴールでチームに勢いをつけたように、試合の流れを変える力が、この男には備わっている。

 次のライバル・オーストラリア戦はアウェーでの戦い。先制点の重みは一層増す。圧勝にも本田は浮かれることなく、「疲れてくると、(うまく攻撃が)できなくなる。(オーストラリア戦までは)中3日で移動も入ってくる。どういうふうにコンディションを調整するかが次のテーマ」と次戦を見据えた。

 試合後、前半途中で負傷したDF吉田麻也(VVV)が右ひざ内側靭帯を損傷し、オーストラリア戦を前にチームを離脱することが発表された。相手と高さで互角に渡り合える守備の要を欠くのは痛い。だが、今の日本には絶好調の本田がいる。相手がどこであろうと、強気なエースがサムライブルーを3連勝に導く。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
内田篤人
今野泰幸
→伊野波雅彦(72分)
吉田麻也
→栗原勇蔵(44分)
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
岡崎慎司
本田圭佑
→中村憲剛(57分)
香川真司
FW
前田遼一