11日、東京・国立競技場でキリンチャレンジ杯2012が行われ、日本女子代表(なでしこジャパン)がオーストラリア女子代表と対戦した。日本は前半25分、MF宮間あや(岡山湯郷)のゴールで先制する。その後、FW大儀見優季(旧姓・永里、ポツダム)、MF澤穂希(INAC神戸)の得点でリードを広げた。守ってはオーストラリアに得点を許さず、3−0で試合終了。五輪前の国内ラストマッチを快勝で飾った。

 澤、W杯決勝以来のゴール!(国立)
日本女子代表 3−0 オーストラリア女子代表
【得点】
[日] 宮間あや(25分)、大儀見優季(45分+1)、澤穂希(58分)
 女王が華麗に復活を遂げた。攻守にわたり、澤がチームに貢献し、試合を決める3点目も挙げた。6月の米国戦では約4カ月ぶりに代表復帰したものの、ベストに程遠いパフォーマンスに終わっていた。“五輪までに調子を取り戻せるのか”という周囲の不安を、自らのプレーで一蹴した。

 日本は開始から前線に激しいプレスをかけ、オーストラリアを押し込んだ。ロングボールを放り込まれても、ボランチの澤と相棒のMF阪口夢穂(日テレ)がセカンドボールに素早く反応。早い段階でイニシアチブをとった。8分には、MF川澄奈穂美(INAC神戸)が右サイドを仕掛けてクロス。宮間が頭で合わせたものの、わずかにゴール左へ外れた。

 そして17分には、澤がチャンスに絡む。DFラインの裏に抜け出し、右サイドからのクロスにヘッドで合わせる。これは、わずかにオフサイド。ただ、米国戦ではゴール前に顔を出すシーンがほとんど見られなかっただけに復調を感じさせる場面だった。澤のプレーに引っ張られ、日本はさらに攻勢を強めていく。

 そんな25分、待望の先制点が生まれる。左ショートコーナーから川澄がPA内で倒されてPKを獲得。これを宮間が冷静にGKの動きを読み、完全に逆を突いてゴール左下へ沈めた。澤は真っ先に駆け寄り、キャプテンのゴールを祝福した。

 先制した日本は澤や宮間を中心に中盤を制圧し、細かいパスワークから追加点を狙いにいく。31分には、澤を起点にして再びチャンスを迎えた。ピッチ中央から右サイドへボールを展開すると、DF近賀ゆかり(INAC神戸)、宮間、大儀見がパス交換をしながら右サイドを突破。澤はこの間にゴール前に攻め上がり、宮間のアーリークロスに頭で合わせた。ゴール上に外れたものの、ジャストなタイミングでDFの裏を取ってみせた。

 1−0のまま試合を折り返すかと思われた前半ロスタイム、日本が追加点を奪う。ゴールを呼びこんだのは澤だ。ピッチ中央で相手のコントロールが大きくなったところをカット。それが阪口に渡り、日本はカウンター攻撃を展開する。最後は大儀見が、右サイドを抜け出した近賀のクロスに滑り込みながら左足で押し込んだ。

 2点リードを奪った日本は後半もペースを握った。開始から一気に3人の選手を交代させ、さらなるゴールを狙いにいく。澤も前半以上に高い位置でボールに絡む回数が増え、スルーパスなどでオーストラリア守備網を脅かした。

 そして、待ちに待った瞬間がやってきた。13分、澤が日本の3点目を決めたのだ。左CKがゴール前で混戦になり、目の前にこぼれてきたボールを右足でゴール左下に流し込む。昨年のW杯決勝の米国戦以来、約1年ぶりの代表ゴールだった。右手を突き上げる背番号10にチームメイトが駆け寄り、エース復活を喜んだ。ゴールを狙えるポジション取りと、シュートを決めきる決定力。やはり、なでしこに欠かせない存在であることを証明した得点だった。ここで、澤は御役御免。交代でベンチに下がる彼女には、スタジアム中から称賛の拍手が送られた。

 完全に試合を決めた日本はその後、司令塔の宮間もベンチに下げる余裕の試合運び。それでも途中出場した選手が前線からの激しいプレスをかけ続け、オーストラリアにペースを渡さなかった。相手のシュートはわずかに5本、まさに完勝といえる内容で五輪本大会へ弾みをつけた。

「久々の復帰ゴールでもあったし、自分がもやもやしている、本調子ではなかったことを分かっている選手もいたと思う。ゴールを決めた後にみんなが集まってくれたのがとてもうれしかった」
 澤は自身のゴールシーンをこう振り返った。不本意な内容に終わった米国戦とは「全然違う。コンディションは順調に上がってきている」と、大きな手応えを掴んだようだ。佐々木監督も「澤はプレッシャーの中での感覚が戻ってきている。点を取ったことは本人にとっても、チームにとっても良かったと思う」と五輪直前のエース復活に明るい表情を見せた。

 初戦のカナダ戦まで2週間。今後は19日にパリでフランス女子代表と対戦し、本番に備える。澤は最後に「どんな色でもいいのでメダルは持って帰ってきたい」と力強く宣言した。復活した頼れる大黒柱が、自身4度目の五輪で初のメダル獲得に挑む。

<なでしこジャパン出場メンバー>

GK
福元美穂
→海堀あゆみ(45分)
DF
近賀ゆかり
岩清水梓
→矢野喬子(45分)
熊谷紗希
鮫島彩
MF
澤穂希
→田中明日菜(59分)
阪口夢穂
宮間あや
→高瀬愛実(77分)
川澄奈穂美
FW
安藤梢
→大野忍(45分)
大儀見優季
→丸山桂里奈(72分)