目が離せない、ルーキーたちの活躍 〜プロ野球〜

 3月29日にセ・パ両リーグが同時開幕したプロ野球では、ルーキーの活躍が目立っている。セ・リーグでは菅野智之(巨人)、藤浪晋太郎(阪神)、小川泰弘(東京ヤクルト)、パ・リーグでは則本昂大(東北楽天)、金子侑司(埼玉西武)、鍵谷陽平(北海道日本ハム)。次世代を担う若手の活躍が、プロ野球を沸かせている。GW期間中、彼らはどんなプレーを見せてくれるのか――。
 ともに負け知らずのルーキー対決

 GW初日の27日、セ・リーグでは注目のルーキー対決が見られる予定だ。巨人・菅野と、ヤクルト・小川である。ここまでの成績を見てみると、菅野は3勝0敗、防御率1.86。小川は2勝0敗、防御率1.89。ともに無敗を誇り、1点台の防御率を誇る。両球団のファンとしては将来のエース候補同士の初対決は絶対に見逃すことはできない。

 菅野は周知の通り、11年ドラフトで1位指名した北海道日本ハムの入団を拒否し、1年間の浪人生活を経て、今年巨人に入団した。原辰徳監督の甥でもあり、注目されるのには慣れているのだろう。マウンドでの落ち着きぶりは、とても新人とは思えない。

 そのピッチングも“大人”である。大学時代は150キロ台の真っ直ぐで、打者に向かっていく気迫あふれたピッチングを見せていたが、プロでは変化球をうまく使っている印象がある。阿部慎之助のリードの影響も多分にあるとはいえ、その要求通りに投げられるコントロールには目を見張るものがある。奪三振数31は、リーグトップ。直球、変化球ともにキレも抜群である証拠だ。

 一方の小川は、新人らしい勢いのあるピッチングで打者を翻弄している。特筆すべきは、やはり左足を高く上げる独特のフォームだ。元メジャーリーグの速球王、ノーラン・ライアン(現レンジャーズ球団社長)の著書『ピッチャーズ・バイブル』を読んで研究したという。

 大学時代から、安定感は光っていた。東京新大学リーグでは通算46試合に登板し、36勝3敗、防御率0.60という成績をマークし、“ドクターゼロ”の異名をとった。その安定感を生み出しているのは、「右足のかかと」だ。ドラフト直後、小川はこう語っている。
「ライアンさんはしていないのですが、左足を上げた時に、僕は右足のかかとを少し上げるんです。腕を振る位置を少しでも高くしたいという意識とともに、そうすることによって、力まずに腕を振ることができる。これでコントロールが良くなりました」

 プロ初登板は6回2/3を投げて5安打2失点、2試合目は7回を投げて1安打1失点で防御率は0.00。抜群の安定感で、2試合連続で白星を挙げた。3試合目の登板となった17日の中日戦は、7安打4失点とプロの洗礼を浴びた。その次の登板だけに、27日の巨人戦は小川にとって真価が問われるマウンドとなりそうだ。果たして“和製ライアン”は故障者が相次ぐチームの救世主となれるのか。

 俊足スイッチヒッターの魅力

 パ・リーグで注目したいのは、立命館大学からドラフト3位で西武に入団した金子侑司だ。春のキャンプから50メートル5秒7の俊足スイッチヒッターとして注目されてきた。開幕スタメンに抜擢されると、思い切りのいいバッティングでチームの勝利に貢献し続けている。

 特筆すべきは3日の福岡ソフトバンク戦で放ったプロ初アーチだ。1打席目で同じく新人の右腕・山中浩史から左中間を破る先制の2点三塁打を放ち、プロ初打点を挙げた金子は、2−1と1点リードの4回裏、1死二、三塁で2打席目を迎えた。再び左打席に入ろうとしたその時、ソフトバンクのベンチが動いた。山中に代えて左の山本省吾にスイッチしたのだ。すると、金子はいったんベンチに戻り、右打者用のヘルメットをかぶり直すと、平然と右のバッターボックスに入った。そして山本から12球団の新人一番乗りとなるプロ第1号を放った。

 その日、4割6分7厘まで上げた打率は現在、3割1分4厘まで下がってはいるものの、それでもリーグトップ10に入っている。昨季まで攻守にわたって柱だった中島裕之がメジャーへ移籍し、主砲の中村剛也はケガで戦列を離れている中、25日現在、西武は2位・千葉ロッテに3.5ゲーム差をつけて独走している。金子の貢献度は決して小さくないはずだ。

 守備では不慣れなライトで、打球の目測を誤るなどミスも犯している。だが、金子の良さはそのミスをひきずらないところだ。例えば開幕戦、レフトでの金子の打球の追い方は明らかに不安定さを露呈していた。そして2−2の同点の6回表2死二塁の場面、ホームを狙うランナーが目に入ったのだろう、大引啓次のライト前の打球をファンブルし、その分ホームへの返球が遅れ、日本ハムに勝ち越しを許した。

 さらに、続く大谷翔平の打球を、金子はスライディングキャッチを試みるも、ボールはグラブの中はおさまってはくれなかった。そしてすぐさま送球しようとした金子の右手から、ボールがスルリと抜け落ちる。あわててボールを追いかけるも、この間にランナーが生還してしまったのだ。

 2度も続けて痛恨の凡ミスをすれば、新人でなくとも動揺するだろう。ところが、金子はその裏の打席でクリーンヒットを放ってみせ、次打者の炭谷銀仁朗のタイムリーを呼び寄せた。こうしたずば抜けた切り替えの早さもまた、金子の魅力のひとつでもある。現在は、本職の内野に入ることが多くなっているが、ミスの後にも果敢に打球に向かっていく姿も見られている。攻守にわたって思い切りの良さが光る金子。今後は、最大の武器である足技にも注目したい。

<セ・リーグ>
4月27日(土)〜28日(日)
 広島 − 中日 (マツダスタジアム)
 横浜DeNA − 阪神 (横浜)
 東京ヤクルト − 巨人 (神宮)
29日(月)〜5月1日(水)
 横浜DeNA  − 東京ヤクルト (横浜)
 阪神 − 広島 (甲子園)
 中日 − 巨人 (ナゴヤドーム)
3日(金)〜5日(日)
 中日 − 横浜DeNA  (ナゴヤドーム)
 阪神 − 東京ヤクルト (甲子園)
 巨人 − 広島 (東京ドーム)
6日(月)
 巨人 − 阪神 (東京ドーム)
 東京ヤクルト − 中日 (神宮)
 広島 − 横浜DeNA (マツダスタジアム)

<パ・リーグ>
4月27日(土)〜29日(月)
 埼玉西武 − 東北楽天 (西武ドーム)
 千葉ロッテ − 福岡ソフトバンク (QVCマリン)
 北海道日本ハム − オリックス (札幌ドーム)
5月1日(水)〜5月3日(金)
 東北楽天 − 北海道日本ハム (Kスタ宮城)
 オリックス − 千葉ロッテ (京セラドーム)
 福岡ソフトバンク − 埼玉西武 (ヤフオクドーム)
4日(土)〜6日(月)
 福岡ソフトバンク − 千葉ロッテ (ヤフオクドーム)
 東北楽天 − オリックス (Kスタ宮城)
 埼玉西武 − 北海道日本ハム (西武ドーム)


 横浜FM、ベテラン力で首位固めなるか 大宮の不敗記録にも注目 〜Jリーグ ディヴィジョン1〜

 GWのJ1は、第8節が4月26日(金)、27日(土)、28日(日)、第9節は5月3日(金)、第10節は5月6日(月)に試合が組まれている。アジアチャンピオンズリーグに出場するクラブを除いた16クラブは1週間で3試合をこなすハードな日程だ。そのなかで、注目したいのが首位の横浜・Fマリノスと2位・大宮アルディージャである。
(写真:好調マリノスを支えるキャプテン・中村俊輔)

 横浜FMはJ1新記録となる開幕6連勝をマークしてスタートダッシュに成功した。第7節終了時の戦績は6勝1敗。チームは昨季から積み上げてきた攻守にハードワークするスタイルが浸透している。また、思い通りのサッカーができなくともセットプレーからゴールを奪って勝ち切るしたたかさも身に付けた。

 横浜FMの好調を支えているのが、34歳の中村俊輔をはじめとするベテランたちだ。中村のほかにドゥトラ(39歳)、マルキーニョス(37歳)、中澤佑二(34歳)、富澤清太郎(30歳)……。今季の横浜FMはレギュラーの平均年齢が30歳という“オジサン軍団”である。なかでも存在感を放っているのは中村だ。トップ下でプレーするレフティーは、ここまで3ゴールをあげ、卓越した技術を駆使して幾度も好機を演出している。また前線から相手ボールを追いかけることで、守備の貢献も少なくない。開幕前に「コンディションは若い時と比べてもいい」と語っていたのは本当だった。そのほか、マルキーニョスは現在リーグトップの6ゴールをマークし、中澤は守備の要として全試合フル出場を続けている。GW中も、ベテラン勢がピッチで躍動する姿に注目だ。

 そんな横浜FMはこの3連戦でヴァンフォーレ甲府、鹿島アントラーズ、柏レイソルと対戦する。注目は4月27日の甲府戦。甲府はここ4試合が2勝2分けと好調で、首位を下してさらに勢いを得ようと意気込んでいる。前節で初黒星を喫した横浜FMとしては、首位叩きを目論む相手をうまくひねり、再び連勝街道をばく進するきっかけにできるか。

 横浜FMを勝ち点1差で追う大宮は、第7節の浦和レッズとのダービーを制し、昨季から続くリーグ戦連続無敗試合数を18に伸ばしてJ1新記録を樹立した。05年にJ1昇格以降、毎年のように降格争いを演じてきた大宮の躍進を予想した人は少なかったのではないか。

 大宮の特徴は前線から積極的にプレスをかけ、相手の隙を見つけると素早く突くこと。浦和戦でもハイプレスからボールを奪い、チャンスにつなげていた。1点をリードして迎えた後半は劣勢を強いられたものの、粘り強い守備で逃げ切った。ズデンコ・ベルデニック監督の現実的な采配も効を奏した。サイド攻撃から組み立てる浦和に対し、サイドバックが本職の選手2人を左右のMFとして投入。終盤の運動量低下で生じるサイドのスペースを彼らにカバーさせ、浦和の勢いを削いだ。監督の考えを実践できるところが、今の大宮の強みである。

 大宮は3連戦で柏、大分トリニータ、サンフレッチェ広島と順に対戦する。注目は天皇杯覇者・柏戦と昨季リーグ王者・広島戦だろう。実力ある相手と互角に戦い、不敗記録を継続できれば、大宮の勢いはさらに増す。降格争いから優勝争いへ。大宮にとって試練の3連戦だ。

◇第8節
・4月26日(金)
柏×大宮(19:00、柏)

・4月27日(土)
新潟×鹿島(14:00、東北電ス)
名古屋×広島(14:00、瑞穂陸)
C大阪×大分(14:00、金鳥スタ)
横浜FM×甲府(16:00、日産ス)
磐田×湘南(16:00、ヤマハ)
浦和×清水(17:00、埼玉)
F東京×川崎F(19:00、味スタ)

・4月28日
仙台×鳥栖(16:00、ユアスタ)

◇第9節
・5月3日(金)
大分×大宮(13:00、大銀ド)
甲府×磐田(14:00、中銀スタ)
清水×新潟(15:00、アイスタ)
横浜FM×鹿島(15:30、日産ス)
湘南×C大阪(16:00、BMWス)
鳥栖×F東京(18:00、ベアスタ)
川崎F×名古屋(19:00、等々力)
※広島×柏、浦和×仙台はACL出場のため、5月29日(水)に開催

◇第10節
・5月6日(月)
新潟×甲府(14:00、東北電ス)
清水×川崎F(14:00、アイスタ)
大宮×広島(15:00、NACK)
F東京×磐田(15:00、味スタ)
鹿島×湘南(16:00、カシマ)
C大阪×浦和(16:00、長居)
大分×鳥栖(16:00、大銀ド)
柏×横浜FM(19:00、柏)
名古屋×仙台(19:00、豊田ス)

 五輪代表の激突、好記録に期待 〜陸上〜

 世界選手権(8月・モスクワ)に向けての代表争いの前哨戦が幕を開けた。20日の兵庫リレーカーニバルを皮切りに、今シーズンのトラック・フィールド種目が本格スタートした。GW中は、27日から日本選抜陸上和歌山大会(紀三井寺公園陸上競技場)、28日からは織田幹雄記念国際陸上競技大会(広島エディオンスタジアム)、5月3日は静岡国際陸上競技大会(エコパスタジアム)、5月5日はゴールデンシリーズグランプリ東京(国立競技場)が開催される。

 中でも注目は織田記念だ。男子100メートルは、まさしく日本最速のスプリンターを決める戦いといっていいだろう。山縣亮太(慶応大)、江里口匡史(大阪ガス)、高平慎士(富士通)、飯塚翔太(中央大)、九鬼巧(早稲田大)、高瀬慧(富士通)と、ロンドン五輪の代表メンバーがぶつかり合う。昨年の大会は山縣が予選で10秒08の自己ベスト(当時)を叩き出し、その余勢を駆って決勝は、10秒16で優勝した。

 連覇がかかる山縣は、6月の日本選手権(東京・味の素スタジアム)まで、織田記念一本で臨む。昨年の日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)で右太腿を負傷した影響もあって、無理はしない意向。ただ7カ月ぶりの実戦復帰となった7日の六大学対抗陸上競技会では、向かい風4メートルの悪条件ながら10秒47をマークした。山縣にとっては、地元でのレースに期するものがあるという。五輪戦士が集結する今大会はハイレベルな展開が予想され、気候や風、条件次第では10秒0台も有り得るだろう。日本陸上競技連盟の伊東浩司短距離部長は、自身が持つ日本記録について「私の記録も今年で終わりかな」と語っていただけに、15年ぶりの日本記録新に期待が高まる。

 さらに織田記念では、男子やり投げの2強対決が見られる。ディーン元気(早大)、村上(スズキ浜松AC)のともにロンドン五輪代表のビッグスローを期待したい。同五輪10位のディーンは六大学対抗で強風の中、80メートルを超える好記録(80メートル15)をマークしている。2月に南アフリカで行った合宿で、チェコやフィンランドなどの強豪国の選手などから技術やアイデアを学んだという。本人は「8月にピークを持っていく」と、世界選手権に照準を合わせているが、昨年、日本歴代2位となる自己ベスト(84メートル28)を記録した地だけに、十分期待が持てる。一方、長くひとりで競技の第一線を引っ張ってきた村上にとって、ディーンら若手の台頭は刺激になっているはずだ。2009年の世界選手権ベルリン大会の銅メダリストは、第一人者として意地を見せられるか。2人はゴールデンGP東京にも出場を予定しており、日本選手権までに2度合いまみえるかたちだ。

 男子棒高跳びは、日本記録保持者の澤野大地(富士通)、ロンドン五輪代表の山本聖途(中京大)、荻田大樹(ミズノ)の三つ巴の争いか。現在、好調をアピールしているのが、山本と荻田だ。山本は2月の日本ジュニア室内陸上競技大阪大会で、室内日本新の5メートル71センチをマークした。一方の荻田は20日に米国で行なわれた大会で、自己新となる5メートル70を跳躍し、澤野を抑えての優勝。いずれも世界選手権の派遣標準記録を突破しており、澤野をリードしている。プレッシャーの少ない中で、更に記録を伸ばす可能性もあるだろう。

 つづく静岡国際では、男子400メートルハードルで好タイムが期待される。ロンドン五輪代表の岸本鷹幸(富士通)、中村明彦(スズキ浜松AC)、舘野哲也(中央大)に加え、昨秋にA標準を突破している野澤啓祐(早大)、11年のアジア競技大会金メダリストの安部孝駿(中京大)らが続く。

 岸本はロンドン五輪では、大会直前に起こした左ハムストリングスの肉離れの影響で不本意な結果に終わった。約8か月ぶりの国際レースとなるが、静岡国際は2年連続で標準記録を突破している相性のいい大会。目標である恩師の苅部俊二監督(法政大)の記録(48秒34)超えへ、復活を印象付けたいところだ。

 同大会には、海外招待選手として、北京五輪銅メダリストのバーション・ジャクソン(米国)が出場する。世界トップレベルの47秒台の自己ベストを持つだけに、ジャクソンとどれだけ勝負できるかで、世界との距離も測れるだろう。日本勢にも47秒台にどれだけ近づけるかに注目が集まる。

 ゴールデンGP東京では、男子100メートルに日本短距離界のホープ・桐生祥秀(洛南高校)がシニアのスプリンターたちに挑む。大会では、自己ベスト9秒台を持つ海外の招待選手が3名出場を予定しており、日本からは日本選手権3連覇中の江里口もエントリーしている。昨年11月のエコパ・トラックゲームスで10秒19のユース(18歳以下)世界最高記録を叩き出した桐生。“世界一速い高校生”の国際大会デビューは、果たしてどんな記録を生み出すのか。

 各大会は世界選手権の選考レースも兼ねている。ここで派遣標準記録を出しておけば、最終選考となる日本選手権に弾みがつく。さらに今回から日本陸上競技連盟は派遣標準記録を上回る派遣設定記録を設けた。これを突破すれば、日本選手権入賞で代表内定となる。派遣標準記録突破では日本選手権優勝が内定条件なのは変わらない。すべてはモスクワ行きのステップだ。各大会での好記録、いや新記録誕生を期待したい。

◇日本GPシリーズ◇
4月27、28日
日本選抜陸上和歌山大会(紀三井寺公園陸上競技場)

4月28、29日
織田幹雄記念国際陸上競技大会(広島エディオンスタジアム)

5月3日
静岡国際陸上競技大会(エコパスタジアム)

◇IAAFワールドチャレンジミーティングス
5月5日
ゴールデングランプリ陸上東京(国立競技場)

 佐藤、タイでの防衛へ 内山、井岡はまたもKOなるか 〜ボクシング世界戦〜

 4月8日のトリプル世界戦で三浦隆司(帝拳)がWBC世界フェザー級王座を獲得し、日本ボクシング界の現役男子世界王者は初の2ケタに乗った。5月上旬は、その半数となる5名のチャンピオンが防衛戦に臨む。

 先陣を切るのはWBC世界スーパーフライ級王者の佐藤洋太(協栄)だ。3度目の防衛をかけて同級8位のシーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ)と敵地に乗り込んで戦う。これまで日本人のタイでの世界戦の戦績は16敗1分。佐藤が勝てば史上初の快挙となる。

 挑戦するシーサケットは18勝のうち17KOという破壊力の持ち主。“マジカルボックス”の異名をとる佐藤が、いかに相手の強打を封じるかがポイントだ。際どい勝負になると、ホームタウンディシジョンでタイ人に分が出てくる。身長で11センチ上回る体格差を生かし、距離をとって試合の主導権を握りたい。

 5月6日には東京でダブルタイトルマッチが開かれる。ベルトを守るべくリングに上がるのはWBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志と、WBA世界スーパーフライ級王者の河野公平(ともにワタナベ)だ。内山は同級10位のハイデル・パーラ、河野は暫定王者のリボリオ・ソリス(ともにベネズエラ)と対戦する。
(写真:内山、河野とも30歳を過ぎて王者となったが衰えは感じさせない)

 昨年大晦日の6度目の防衛戦でも暫定王者のブライアン・バスケス(コスタリカ)にKO勝ち。内山の強さは円熟味を増している。パーラは21戦無敗のチャレンジャーとはいえ、王者の優位は揺るがない。この試合に勝つと、22勝(18KO)負けなしのユリオルキス・ガンボア(キューバ)との王座統一戦が見えてくる。“KOダイナマイト”の本領を発揮して、ビックマッチへつなげたいところだ。

“3度目の正直”で悲願の戴冠を果たした河野は、難敵を初防衛戦に迎える。ソリスはニックネームの“マキニータ(マシン)”よろしくパンチを次々と繰り出してくるボクサーだ。32歳の王者としては、相手が左のリードから右を出してきたところへ、前回の試合でテーパリット・ゴーキャットジム(タイ)を倒した左フックを合わせたい。
 
 井岡ジムの2人の若きチャンプは5月8日に大阪で初防衛戦を控える。WBA世界ライトフライ級王者の井岡一翔は、同級3位のヴィサヌ・ゴーキャットジム(タイ)と、WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(井岡)は、同級7位のカルロス・ベラルデと拳を交える。

 昨年の大晦日に2階級制覇を達成した井岡は本来の階級で充実したトレーニングを積めている。サウスポーのヴィサヌは身長160センチにもかかわらず、リーチは175センチに達すると言われているが、王者のスピードをもってすれば苦にならないだろう。前回、ホセ・アルフレド・ロドリゲス(メキシコ)を圧倒したように中盤以降のKOは十分あり得る。

 一方の宮崎は1階級下げてのベルト獲得で、今回も試合前の減量が大きなハードルになる。しかも、相手はボディ攻撃が武器。コンディションに不安を残すと、ボディブローがより効いてしまう。ジャブで機先を制し、相手が振り回してきたところへ的確にパンチを当てたい。

▼5月3日
 WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ 王者・佐藤洋太 × 挑戦者・シーサケット・ソー・ルンビサイ(タイ・シーサケット、18:55〜)

▼5月6日
 WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 王者・内山高志 × 挑戦者・ハイデル・パーラ
 WBA世界スーパーフライ級王座統一戦 王者・河野公平 × 暫定王者・リボリオ・ソリス(大田区総合体育館、15:30〜)

▼5月8日
 WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ 王者・井岡一翔 × 挑戦者・ヴィサヌ・ゴーキャットジム
 WBA世界ミニマム級タイトルマッチ 王者・宮崎亮 × 挑戦者・カルロス・ベラルデ(ボディメーカーコロシアム、16:30〜)