プロ野球セントラルリーグの2008シーズンが28日、開幕を迎える。今季のセ・リーグはラミレス、グライシンガー(いずれも東京ヤクルトから巨人)、クルーン(横浜から巨人)、新井貴浩(広島から阪神)など、昨季の下位球団から上位球団への移籍が相次いだ。3強3弱との見方も大勢を占めている。そんな中、当HP編集長の二宮清純は1位を中日としながら、3位に10年連続Bクラスの広島がくいこむと予想した。
★二宮清純予想★
1.中日
2.巨人
3.広島
4.阪神
5.東京ヤクルト
6.横浜

 福留孝介(カブス)が抜けたといえ、中日の優位は揺るがないだろう。川上憲伸、朝倉健太、中田賢一ら先発陣がゲームをつくり、絶対的なクローザー岩瀬仁紀で最後を締める。この“勝利の方程式”は今季も健在だ。
 しいて不安をあげるとすれば、8月の五輪期間中に川上、岩瀬に加え、二遊間コンビの荒木雅博、井端弘和ら主力が大量に抜けそうなことか。ただ、落合博満監督が要望していた「外国人枠」の増枠が可能となった。堂上剛や西川明といった若手も伸びてきた。中日には、代役となりうる駒がしっかり揃っている。五輪期間中も大崩れすることはないだろう。
 
 巨人は他球団で実績のある外国人を“総取り”し、レギュラーメンバーだけをみれば、リーグでダントツの戦力だろう。しかし、グライシンガーが投げ、ラミレスが打ち、クルーンが抑える野球をファンは本当に求めているのか。
 坂本勇人ら楽しみな若手も出ているが、起用できる場所はどうしても限られてしまう。故障者が多いのも気になる。

 広島を3位に推したのは、今のところ日本代表に招集されそうな選手がおらず、五輪期間中もベストメンバーで戦えるからだ。寂しいといえば寂しい話だが、夏場までにAクラスを狙える位置につけておけば、逆転で3位の可能性は充分ある。
 ポイントは交流戦。カープは昨年、5勝18敗1分と13も負け越し、交流戦前の3位から転落した。交流戦がスタートして3年間、カープはここで勝ち越したことがない。少なくともパ・リーグ勢との戦いを5割で乗り切ることがAクラス入りへの絶対条件だ。

 阪神は主力選手が高齢化しているのが気にかかる。40歳を迎える金本知憲、矢野輝弘を筆頭に、今岡誠が34歳、赤星憲広は32歳になる。野手のレギュラークラスで20代は鳥谷敬と平野恵一くらいだ。シーズンは長い。レギュラークラスを脅かす若手が台頭しなければ、息切れする危険性が高い。正念場の夏場に五輪で守護神の藤川球児が抜ける点もマイナス材料だ。

 東京ヤクルトは古田敦也、石井一久(埼玉西武)、高津臣吾といったベテランが引退、退団し、若手主体のチームに生まれ変わった。未知数だが“大化け”の可能性がある。ラミレス、グライシンガーは抜けたが、このチームは不思議と穴を埋める選手が出てくる。セ・リーグのルーキーで唯一、開幕1軍入りを果たした加藤幹典(慶大)が、どこまでプロに通用するか。

 横浜はクルーンに代わるクローザーを誰にするかで頭を痛めそうだ。先発陣もエースの三浦大輔の調整が遅れ、計算できるのは寺原隼人と工藤公康くらい。5月で45歳になる工藤はベテランらしい円熟した投球を見せてくれるだろうが、いつまでも“おじさん”頼みでは上がり目はない。


★スポーツコミュニケーションズ予想★
1.巨人
2.中日
3.阪神
4.東京ヤクルト
5.横浜
6.広島

 巨人の補強は日本で実績のある外国人を同一リーグ内から横取りし、はっきり言って面白みがない。しかし、補強ポイントはズレておらず手堅いのも事実だ。長年のアキレス腱となっていた抑えにクルーンを獲得し、不足していた右の長距離砲としてラミレスを迎え入れた。中継ぎ左腕にロッテを戦力外になった藤田宗一を得たのも大きい。

 毎年繰り返される大型補強で、若手の伸び悩みが指摘されているが、今年は高卒2年目の坂本が開幕スタメンを勝ち取りそうだ。彼の抜擢は2軍選手の刺激となることは間違いない。他にも亀井義行、ケガで開幕1軍は逃したものの矢野謙次ら控え選手がキャンプ、オープン戦で結果を残しており、確実に戦力の底上げもはかられている。リーグ連覇の可能性は高い。

 昨年同様、巨人と最後まで優勝を争いそうなのが中日。FA移籍した和田一浩の人的補償で中継ぎの岡本真也が抜けたものの、先発、中継ぎ、抑えに至るまで投手陣は磐石だ。福留のメジャー挑戦の穴も和田の獲得でほぼ埋まった。ただ、外野の守備力はやや低下することが予想される。

 荒木、井端の二遊間コンビが抜けそうな五輪期間中をどう乗り切るかに注目したい。2人は単に守備の要であるのみならず、ドラゴンズ打線の1、2番を任されている。2選手を欠いて、落合博満監督はどんな采配を振るうのか。腕の見せどころだろう。

 阪神は開幕投手が予想される安藤優也と、福原忍の復調がカギを握る。昨季、両右腕はともに2勝ずつと苦しんだ。2人が先発ローテーションを守れば、ベテランの下柳剛、2年目のボーグルソン、新外国人のアッチソン、サウスポーの岩田稔らで1年を戦うメドが立つ。後ろには言わずと知れたJFKが控えているだけに、6回までゲームをつくってくれる投手が揃えば、3年ぶりの栄冠もみえてくる。

 昨年のBクラスチームは今年も苦戦を強いられそうだ。ただ、台風の目になりそうな球団をあげるとすれば、東京ヤクルトか。
 グライシンガー、石井一、藤井秀悟(北海道日本ハム)ら先発の柱が相次いで抜けたが、代わって3年目の村中恭平、2年目の増渕竜義が成長を遂げた。攻撃面でも両翼が広くなった神宮球場の特性を活かし、オープン戦から機動力を全面に押し出す野球をみせている。チームの方向性は明確だ。
 見過ごされがちだが、クローザーの五十嵐亮太が復帰したことは大きなプラス材料。韓国で168セーブをあげた林昌勇とともに後ろが安定すれば、相手にはイヤな存在となる。 

 一方、横浜、広島の2球団は抑えに難がある。クルーンの抜けた横浜は新外国人のヒューズ、マットホワイトらでやりくりするしかない状況だ。広島は永川勝浩が不調で2軍落ちし、代役を新外国人のコズロースキーが務める。いずれにしてもシーズンを戦いながら試行錯誤する形になるだろう。

 横浜は昨年のホームラン王・村田修一や吉村裕基らが中軸を打ち、打線に変化はない。広島は新井が座っていた4番に栗原健太が入る見通し。新井の後釜としてサードを守る新外国人のシーボルが爆発しなければ、攻撃力の低下は否めない。新井の人的補償で獲得した赤松真人、天谷宗一郎の新1、2番コンビが、どこまで相手を足でかき回せるかもポイントだ。  

★セ・リーグ開幕カード★ ( )内は先発予想、試合開始はいずれも18時

・東京ヤクルト(石川雅規)×巨人(高橋尚成) 神宮
・中日(川上憲伸)×広島(大竹寛) ナゴヤドーム
・阪神(安藤優也)×横浜(寺原隼人) 京セラドーム